とある星の力を使いし者
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第86話
麻生は今、土御門と同じグループに所属するメンバーがいるホテルの入り口前にいた。
中に入ると従業員が麻生に近づいてくる。
ホテル利用者だと思われたのだろう。
麻生は友達がホテルにいるので会いに来た、と適当に嘘をつく。
従業員は納得したような表情をして、仕事に戻る。
そのままロビーを抜けて、エレベーターに乗りそのメンバーがいる部屋のフロアに向かう。
エレベーターがついてその部屋、一一〇一号室の扉の前に立つ。
土御門が言うには部屋の鍵を開けて貰うように連絡すると言っていた。
だが、ドアノブを回しても鍵がかかっている。
ちっ、と麻生は小さく舌打ちをする。
能力を使い、ドアに干渉して鍵とドアロックを解除する。
ドアを開けて中に入るが、部屋の中は真っ暗で何も見えない。
カーテンも閉められているのでほとんど光が入ってこない。
とりあえず電気をつけようとスイッチを押そうとして、左に一歩だけ動いた時だった。
ヒュン、という音が聞こえた。
さっきまで麻生が立っていた位置のちょうど心臓の辺りにワインのコルク抜きが突然現れた。
麻生はそのまま動きを止める。
再びヒュン、という音が聞こえると麻生は前に向かって大きく飛ぶ。
今度は部屋にあったであろう椅子やテーブルが飛んできた。
すぐさま麻生は目を閉じて部屋一帯に微弱な超音波を広げる。
確認できた人数は二人。
一人は部屋の端で立っていて、もう一人は部屋の中心で仁王立ちしている。
もう一度、ヒュンという音が聞こえた。
横にステップを踏むと、何もない所から花瓶が出現する。
この花瓶はベットの近くにあった花瓶だ。
部屋の見取り図などは既に超音波などで調べてある。
そして、ゆっくりと目を開ける。
目は既に暗闇に適応しているので敵がどこにいるのか目視できる。
部屋の中心に立っている人物は右手に持っている棒をこちらに向けてくる。
ヒュン、という音と同時にコルク抜きが麻生の胸の辺りに飛んでくるはずだった。
しかし、コルク抜きは麻生の一歩手前に出現した。
誰かの息の飲む音が聞こえた。
「自分の思った所に空間移動できなかったから、驚いているんだろう?」
麻生は部屋の中心に立っている人物に話しかける。
そう、麻生は既に相手の能力が何なのか看破したのだ。
麻生は気配を殺し、完全に暗闇に溶け込む。
その人物はさっきまで姿を捉えていた麻生の姿は消えたのに驚き、辺りを見渡す。
次の瞬間には首筋に刃物の冷たい感触を感じた。
それに合わせるかのように部屋の電気が突然照らし出された。
電気のスイッチの所には見慣れた人物が立っていた。
「お久しぶりですね、麻生さん。
自分の事はまだ覚えていますか?」
「ああ、覚えているね。」
にっこりと笑顔を作りながら話しかけてくる男。
運動してもパソコンのキーを叩いてもサマになるという反則的容姿のミスターサワヤカな男。
海原光貴、常盤台中学の理事長の孫で、大能力者の念動力能力者。
だが、此処にいる海原光貴は別人だ。
顔や姿や身長などは全く一緒なのだが、この男は魔術で海原光貴に変装しているのだ。
夏休みの最終日。
麻生はこの魔術師に襲われた事がある。
理由などを説明すると長くなるので省略するが、この二人は襲い、襲われた関係である。
麻生はこの男の本名は知らないがアステカの魔術師という事だけ知っている。
「何故、自分が此処にいるのか、さっきの襲撃は何なのか色々と聞きたい事はあると思います。
その前に彼女の首筋に当てているナイフを退けてください。
話はそれからです。」
海原に言われ、麻生はようやくナイフを当てている人物を確認する。
性別は女性、髪型はお下げ髪のように耳より低い位置で左右に結った髪を、自分の背中の方へと流し、服装は冬服のミニスカートに金属製のベルトを付け、桃色の布で胸を隠しただけの上半身にブレザーを引っかけている。
麻生はナイフを能力で破壊して、その女性から数歩離れる。
その女性は麻生を軽く睨んでいる。
「では、まずは自己紹介からしましょうか。
自分の名前は海原光貴と呼んでください。」
「・・・・・・結標淡希よ。」
「麻生恭介。
それでだ、どうしてこの女は俺を襲うような真似をしたんだ?
土御門から連絡入っていないのか?」
「土御門さんからは連絡はありました。
ですが、結標さんが一般人であるあなたを連れてくるのはおかしいと言いました。
それで土御門さんが、なら試してみれば、と言い今に至る訳です。」
「お前は止めようとは思わなかったのか?」
「自分は確かにあなたの能力を実際に肌で体験しましたがあれを言葉で説明するのは難しかったので、実際に見て貰う方が早いと判断しました。」
爽やかな笑顔を浮かべながら淡々と答える。
それを聞いた麻生はあからさまに舌打ちをする。
やはり、独自で調査をすればよかったと後悔し始めているのだ。
「それでどうでした、結標さん。
彼は足手纏いになりますか?」
海原に言われ、結標はもう一度麻生を睨んで言った。
「確かに能力としては合格よ。
でも、彼が暗部の仕事が初めてなのは変わりはない。
足手纏いと判断したら容赦なく切り捨てるわ。」
そう言って、一人掛けのソファーに座る。
それを見た海原も近くにある椅子に座り、麻生は壁に背中を預ける。
「そうでした、麻生さんは大覇星祭に参加する競技などありますか?」
椅子に座り何かを思い出した海原は麻生に話しかける。
「一応あるが、それがどうした。」
「それなら裏で手を回しておきます。
あなたが一向に姿を見せないのを他の生徒さん達に不振がられるとこちらも面倒なので。」
「そんなの気にしなくても大丈夫だろ。」
「いいえ、可能性は出来る限り潰した方がいいんですよ。
もし、何かの拍子で警備員にでも通報されればこちらの動きが制限される可能性があります。
敵はテロ行為をするのなら迅速に動く筈です。
こちらが動きを制限されれば取り返しのつかないことになります。」
海原はそう言うと携帯を取り出し、誰かと通話するのだった。
制理は怒りに怒っていた。
何故なら、朝のホームルームに出席していたはずの麻生がどこにもいないからだ。
もうすぐ、麻生が出場する競技が始まる。
「たく、麻生恭介はどこに行った!!!」
「叫んでも。彼は来ない。」
隣には車椅子に乗った姫神がいる。
その後ろには上条当麻もいた。
ホームルームが終わった後、制理は車椅子で見学なら姫神を外に出る事が出来るので、病院まで迎えに行ったのだ。
そこで割と元気な上条に出会い、それだけ元気なのなら貴様も来い、と制理が無理矢理連れてきたのだ。
「でも、珍しいな。
恭介は何だかんだ言って競技にはちゃんと参加していたのに、急にさぼるなんてな。」
制理もそう思っていた。
麻生は何だかんだ言いつつも競技には参加していた。
なので、目を離してもちゃんと来ると制理も思っていた。
(次に会った時は四六時中傍にいてやる!!)
そう決心した時だった。
チアガールの衣装を着た小萌先生が走ってこちらに向かって来た。
「吹寄ちゃ~~ん!お話ししたい事があるのですよ~!!」
「先生、大声で言わなくても聞こえますよ。」
「おお!姫神ちゃんに上条ちゃんじゃないですか!
お外に出られるくらいには回復したのですね。
良かったです。」
「心配かけた。でも大丈夫。」
「土御門に比べれば俺もまだ軽い方だったし。」
制理に伝えなければならない事を完全に忘れている小萌先生。
「それで先生。
私に話ってなんですか?」
徐々に脱線しつつあるのを制理が修正する。
「そうでした!
話の内容はですね、麻生ちゃんの事なんですよ。」
「あいつがどこにいるのか分かったんですか!?」
「それがですね、さっき連絡があって麻生ちゃんは今日の競技には参加できないんですよ。」
「何でですか!?」
「これは学園都市の上層部から連絡があったのですが、常盤台中学に編入した期間に取れたデータ、そして大覇星祭一日目で取れた競技データを合わせると、麻生ちゃんの能力がこの学園都市ではまだ発見されていない能力の可能性があるという結果が出たらしいのですよ。」
小萌先生の話を聞いて制理は驚きを隠せなかった。
あの麻生に未発見の能力が秘められている事が信じられなかったのだ。
逆に上条はそれほど驚かなかった。
彼は何度も麻生の規格外の能力を目の当たりにしてきたからだ。
「それで最低でも一日は研究所で色々調べるので、今日の競技は出られないとの事です。」
「そ、そうですか・・・・」
まだ納得していない制理だったが、競技開始時間がすぐそこまで迫っていた。
「ほら、急がないと競技に参加できないですよ!
姫神ちゃんは先生が運ぶので吹寄ちゃんと上条ちゃんは早く向かってください!」
「へ?俺もですか?」
「当たり前です!
麻生ちゃんもいなくて人数不足なのですから、上条ちゃんが頑張らなくて誰が頑張るのですか!
朝見かけなかった生徒さんもまだ来ていないみたいですし、上条ちゃんが踏ん張らないといけないのですよ!!」
「でも、俺も退院したばか「問答無用!」・・・ふ、不幸だああああぁぁぁぁぁぁ!!!!」
制理に肩を掴まれながら、上条はズルズルと引きずられるのだった。
後書き
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