とある星の力を使いし者
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第85話
「それで、貴方の代わりにその麻生恭介って男が来る訳ね。」
第七学区のとあるホテルの一五階。
その一室の部屋の中には二人の人間がいた。
一人は女性。
一人掛けのソファーに座り、片手に携帯電話を持っている。
髪型はお下げ髪のように耳より低い位置で左右に結った髪を、自分の背中の方へと流している。
服装は、冬服のミニスカートに金属製のベルトを付け、桃色の布で胸を隠しただけの上半身にブレザーを引っかけている。
その女性の名前は結標淡希。
能力は空間移動能力の一種「座標移動」。
大能力者の認定を受けている能力者である。
もう一人は男だ。
名前は海原光貴と名乗っている。
名乗っていると言うのは、これが彼の本名ではないからだ。
本名はエツァリという名前でアステカの魔術師だ。
彼の使う変身魔術を使い、姿も海原光貴になっている
結標の電話の相手は土御門元春。
彼らは三人は学園都市の暗部の組織に入っている。
「そうだぜい。
もうすぐ、キョウやんがそっちに来るはずだ。
来た時には今の現状を教えてあげてにゃ~。」
「どこの馬の骨とも分からない男に情報を教えるなんて、貴方怪我でもして頭のネジが二、三本無くなったのじゃない?」
「ひどい言い様だぜい。
キョウやんに関しては警戒しなくても問題ないぜい。
情報は外には洩らさないだろうし、お前達の顔を見てもどう、こうするつもりもない筈だぜい。」
「貴方がそこまで信用するなんて珍しいわね。
その麻生って男の能力は?
そこまで言うのだから相当な使い手なのでしょうね。」
「いんや、キョウやんは学園都市の「書庫」には無能力者って書かれている筈だにゃ~。」
土御門の言葉に結標は自分の耳を疑った。
暗部の仕事はどれも危険極まりない仕事ばかりだ。
結票のような超能力者や、海原のような魔術師や、土御門のような多才に優れている人物クラスの人間でしかこなせないレベルの仕事だ。
土御門の話を聞く限り、麻生は一般生徒。
しかも無能力者だ。
そんな人間が暗部の仕事をこなせる訳がない。
死体を一つ作ってしまうだけだ。
「本当に頭のネジが数本飛んでしまったのね。
何の能力もなく、かといって暗部の仕事をこなしている訳でもない。
ただの一般生徒を巻き込むなんて、どういうつもり?」
結標は少し声を落して、土御門を問いただす。
だが、土御門はふふふ、っと言う笑い声を上げて言った。
「確かに学園都市の「書庫」には無能力者という結果が書かれているにゃ~。
だが、キョウやんはその「書庫」に書かれているデータ以上の能力と力を持っているだぜい。
頭の回転ならオレよりも早いし、能力では結標でも手も足も出ないくらいの能力を持っている。」
結標は本当に土御門の頭がおかしくなったのではないか、と思った。
土御門の頭の良さは同じ暗部の仕事をしている時に分かっている。
性格などは少しというかかなりずれているが、頭の良さなどは認めざるを得ない所がある。
だが、これからやってくる麻生恭介という男は土御門よりも頭が良く、かつ自分の能力程度では手も足も出ないと言っているのだ。
これを疑うなという方が無理である。
「ちなみに海原もそのキョウやんに負けているぜい。」
結標は海原に視線を向ける。
電話の声が所々聞えている為か、結標の視線の意味が分かった海原は苦笑いを浮かべる。
どうやら嘘ではないようだ。
それでもどこか信じられない部分がある。
「そこまで疑うなら自分の目で確かめればいいにゃ~。
キョウやんの実力を見て、もし足手纏いと思ったのなら外してもらっても構わないぜい。」
「最初からそのつもりよ。」
そう言って結標は携帯の通話を切る。
「それで貴方はどうするつもり?」
パタン、と携帯を閉じ椅子に座っている海原に話しかける。
海原は小さく笑みを浮かべながら言う。
「自分は何もしません。
彼の実力は身をもって知っているので。」
笑みを浮かべながら海原は言った。
「まぁいいわ。
足手纏いかどうか確かめさせてもらうわ。」
土御門からの電話が終わってから、麻生は学生寮まで戻ってきていた。
その理由はというと服を着替えるためだ。
これから、暗部の人間と会うのに体操服は何か違う。
そう思った麻生は一度、寮に戻って服を着替えたのだ。
いつもの黒一色の服装に着替える。
十月とはいえまだ暑いので、半袖のシャツの上に袖のない薄いコートを羽織る。
黒のジーンズに黒の靴。
これが麻生の服装だ。
学生寮を出る前に、麻生はある人に電話をかけた。
「おお、恭介。
お前の方から電話をかけるなんて珍しいじゃないか。」
その人物とは麻生竜也である。
おそらく、これから裏の仕事をするので大覇星祭に参加する事はできないだろう。
裏の仕事をするから大覇星祭に参加できない、と率直に言う事はできないので言葉を濁して伝える。
「ちょっと用事が出来てな。
今日の大覇星祭の競技に出られなくなった。」
幼い頃に両親に迷惑をかけたのでこの二人にだけはこの事を教えておきたかった。
「なぜ、出れないか理由を教えてくれるか?」
「・・・・・・・ごめん。
教える事はできない。」
「・・・・・・・そうか。
恭介、一つだけ答えてくれ。
それは今やっている大覇星祭に参加する事よりも大事な事なのか?」
「大事だ。」
ただ一言、そう答えた。
それを聞いた竜也はほんの少しだけ黙ったが、やがて声が聞こえる。
「即答するくらい、大事な事なのか。
分かった、何をするかは分からないが行ってこい。
私は秋葉と二人でこの学園都市を観光する事にするよ。」
「ありがとう、父さん。」
電話を切り、麻生は寮を出て行く。
目指すのは第七学区のとあるホテルだ。
麻生との電話が終わり、竜也は携帯をポケットに入れる。
「何かあったのですか、竜也さん。」
「えっ?どうしてそう思ったんだ?」
「だって、竜也さんのお顔、とっても嬉しそうでしたもの。
それは何か良い事があったのだ、顔を見れば分かります。」
竜也は自分の顔が映っている近くの店のガラスを見る。
心なしかにやけているように見える。
「それで電話の相手は誰ですか?」
「恭介だよ。」
「まぁまぁ、それはお顔もにやけてしまいますわね。」
「あいつ、私達が見ていない内に大きくなったよ。
姿だけじゃなくて、心もな。」
「強くなって当然ですよ。
だって、私とあなたの自慢の子供なんですから。」
以前の麻生ならこうやって電話なぞかけてこなかっただろう。
何があって麻生をあそこまで変えたのかは分からないが、良い方に変わったので何も心配ない。
「内容がだ、今日は大覇星祭は出場できないらしい。」
「まぁ、どうしてですか?
まさか、怪我でも!?」
「落ち着きなさい。
怪我ではない何か用事があるから行けないと言っていた。」
その言葉を聞いた秋葉は心から安堵したような表情をする。
竜也はその場に止まり、空に浮かんでいる雲を見つめる。
「何の用事かは分からないが。
けど、恭介があれだけ即答するんだ。
何も心配の失礼はないさ。」
「そうですか・・・・・・・・えいっ!」
可愛らしく声をあげると、秋葉は隣にいる竜也の腕を抱きしめる。
「なら、久しぶりにデートでもしますか?
二人だけで。」
「私も同じことを考えていた。
よし、なら行くか。」
竜也は自分の腕を掴んでいる秋葉の手を自分の手で重ね、握りしめる。
秋葉はその行為を見て少しだけ顔を赤くする。
二人は並んで、楽しそうに学園都市の中を回っていくのだった。
後書き
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