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久遠の神話

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第五十一話 上からの返事その十一

「そんなことをすれば」
「そうなりますね」
「日本ではそうした教師もいるのですね」
「残念ですが今もいます」
 話は現在進行形だった。
「組合系の教師には多いです」
「組合系のですか」
「我が国にはそうした組織もありまして」
 所謂日教組、日本教職員組合だ。この組織は口では立派なことを言うがその実情は社会主義を推し進めることしか考えていない。
 とりわけ北朝鮮を理想としている、それならばである。
「教師が何をしても野放しになるケースがあります」
「暴力を振るってもですか」
「そうです。隠蔽されるのです」
「それは腕力による暴力でしょうか」
「それと言葉の暴力です」
 それもあるというのだ。
「両方を躊躇なく振るう教師もいます」
「そうですか。日本にはいるのですか」
「無論体罰ではありません」
 その限界を超えているというのだ。
「何しろ生徒を床で背中から叩きつけるのですから」
「柔道の投げ技ですか」
「背負い投げです」
 言うまでもなく柔道の技は畳の上でするものだ。間違っても床でやっては危険極まりなく人間として論外の行為である。
「それをします」
「下手をすれば死にますね」
「実際に生徒が死ななくとも一般社会の人間ならしません」
「では日本の教師はマフィアですか」
「それと化している組織と構成員もいるのです」
「恐ろしい話ですね。ですが貴方は違いますね」
「私はそれなりに正しい教師でありたいと思っています」
 高代は少なくともそうした人間では断じてなかった、このことは確かだ。
「それ故にです」
「そうしたこともおわかりですね」
「人は地位や暴力についてはいきません」
「心についていくものですね」
「圧倒的な暴力は人を萎縮させ服従させます」
 つまり無抵抗にさせる。こうしたものを使ったコントロールも確かに人類の歴史や社会では過去も現在も存在してきたししている。
 そして未来も存在しているだろう、だがだというのだ。
「しかしそれはあくまで表面上だけのことです」
「心から敬愛しついていくものではないですね」
「絶対にです」
 高代は言い切った。
「そうした行為は本当にやがては己を破滅させます」
「その通りです。暴力は滅びるものです」
 スペンサーは軍人だがこのこともわかっていた。
「それを無造作に振るうならば」
「そうですね。だから教師は。真の教師という前提ですが」
「暴力は使いませんね」
「そして地位で服従させもしません」
 教師も権威なのだ。もっとも教師が聖職者というのはそれこそ南極に桜の木が咲く様な途方もない妄想に過ぎないが。教師はこの世で最も穢れた者が多い世界の一つなのだから。
「心で信頼を得るものです」
「よくおわかりですね」
「だからこそ学園を築きたいのです」
 高代は己の夢も語る、戦う目的も。
「そうした確かな教師がいて生徒も成長していく」
「いい学園を、ですか」
「夢は願い適えるものです」
 願うだけで止まるものではないというのだ。そしてだった。
 高代はここまで話してあらためてスペンサーに対して言った。
「私の願いは貴方のものに比べて小さなものですが」
「それでもですか」
「はい、戦います」
 そうしてだというのだ。 
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