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魔法少女リリカルなのはSCARLET ~紅い狼の伝説~

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第3話 対面~高町一族~

 
前書き
早朝投稿・・・・・・完全に失敗だったorz 

 



「(まさか、よりにもよって高町士郎が親戚だったなんて・・・)」


 迎え入れた高町士郎は、紛れもなく俺の知っているあのリリカルなのはの『高町士郎』さんだ。





「昼食はもう済ませたのかい?」


「あ・・・はい、さっき図書館で調べ物をするついでに」


「調べ物?」





 しまった、転生してここがどこだか調べていたなんて言えないし・・・よし!


「れ、歴史についてちょっと・・・」


「そうか・・・」


 セーフ。どうやらなんとかごまかせたみたいだ。
 まあ小学生が調べ物をするために図書館に行くことなんてよくあるし・・・問題ないはずだ。




「おや?」


 一人で考えていると、遠くから士郎さんの声が聞こえてきた。
 声の方向を察するに、台所に行ったな・・・ん?













 まてよ?台所になにか目立つようなものがあったか?
 ああ、そうだ。確か、帰ってきてすぐにカバンの中を整理するためにナイフやら盗聴器やらを全部外に・・・ってあああああああああああああああ!?


 士郎さんの声の理由がわかった俺は、ダッシュで台所に向かった!
 するとどうだろうか。

 






 台所で俺のナイフと盗聴器、スタンガンを見比べている士郎さんがいるではありませんか~


「(終わった・・・orz)」






 こればかりはどうしようもない。正直に本当のことを・・・いや、まだなんとかなる!
 ここでくじけたらせっかくの平和な人生計画がパーになってしまう!それだけは避けなくては!



「司君、これをどこで?」






















「お、押し入れをあさっていたら出てきました・・・」


 バッキャロォオオオオオオオオオ!んなもんで誤魔化せるかい!
 

「・・・・・・」


 ほら~士郎さんも疑ってるよ。本来ここにあってはならないもの見つけたから眉間にしわ寄せて凝視してるよ~。





「・・・・・・・・・・・・はぁ、全く達也にも困ったものだよ。あれだけ仕事道具は見つかりにくいところにしまっておけと注意しておいたのに」


「!?」




 は?仕事道具?父親の?
 俺の父親、現代版必殺仕事人でもやってたのか?


「あ、あの・・・」


 恐る恐る聞いてみる。
 まさか・・・地雷じゃないよな?



「ん?ああ、そうか。忘れていたよ。君にはまだ言ってなかったね」


 そう言って士郎さんは、今いる台所から和室にある仏壇を見た。



 そこには息子ながら一度も話したこともない両親の写真が二枚。





「君のお父さん『達也』とは古い付き合いでね。私の仕事によく付き合ってくれていたんだ」





 紅神達也、それが俺の父親の名前らしい。






 でも待てよ、父親と士郎さんが古い付き合いで、同じ仕事・・・まさか。


「あの、仕事って一体・・・」



「ん?ああ、要人のボディーガードだよ。達也には・・・その・・・いわゆる情報収集を頼んでいたんだ」








 マジか!?うちの親父結構ブラックな世界の人間だったよ!?
 ここに来て衝撃の事実!





「まあ、思い出せないのも無理はない。達也自身、君の前では仕事のことは話さなかったし、そもそも、君が『記憶喪失』になってからは、私もあまり達也のことは話してなかったしね」


「記憶喪失!?」


 衝撃の新事実その2!ていうか、神様のじいさんはどんだけ俺の転生の違和感を消すためだけに設定作ってんだよ!いくらなんでも頑張りすぎだろ!?


「おや、忘れたのかい?君は半年前の事故で記憶を全て失っているんだよ?」


 衝撃の新事実その3!ってもういいわ!








 
 俺はその場で頭を抱えた。

 いや、もうなんか申し訳ないわ!
 だって、ただ転生しただけなのに俺が『転生者』だってバレないための工作をこんなにしてくれてるんだぜ?


 もうじいさんの方に足向けて寝れんわー


「どうしたんだい?もしかして、また記憶が・・・」



「い、いえ!大丈夫です!もちろん覚えていますとも!」



 オーバーなリアクションをしたせいか、士郎さんが心配してくれた。


 士郎さん、違いますよ!別に記憶喪失じゃありませんよ!
 いや、記憶に“フィルター”かかってるから違うとも言いづらいけど!



「そ、そうか。ならいいんだ」


 俺が無事なのを確認したのか、士郎さんは安心したかのようにため息をついた


 ・・・この世界の俺、どんだけ心配かけさせてるんだ・・・?




 でもまあ・・・









「(まあ、心配されてるだけ、幸せってことだよな)」




 そんな場違いなことを考えながら、俺は士郎さんと一緒に家の掃除を始めた。























✽―三十分後―


 え?やけに掃除が早くないかって?
 そりゃあそうですとも。さっき初めて帰ってきたばかりなんだから。



 目に見えるゴミはもちろんのこと、部屋の隙間にもチリひとつなかったぜ!


「さて、掃除も済んだことだし・・・司君、行くか?」


「・・・・・・はい?行くってどこに?」


 うん?どこかに行く予定なんてあったか?
 掃除中の会話にも、そんな話題は出てこなかった気がするけど・・・





「翠屋に決まってるだろう。恭也から聞いたぞ。『少しでも記憶を取り戻したいから、暇なときに稽古をつけて下さい』って頼んだそうじゃないか」



「(ハァアアアアアアアアアアアアッ!?)」






 衝撃の・・・ってもういいわ!なんか疲れるわ!
 ていうかここで生きてた俺!一体何てことを頼んでんだ!

 あれか?「なんなんだ、この感覚・・・お前とこうやって戦っていると、俺の中から何かが・・・湧き出てくるような・・・」的なパターンのやつか!?


 九歳にして早くも厨二病患ってんのか!?








「士郎さん、ちなみにその稽古っていつから・・・」


「ん?今日からと聞いているが・・・もしかしてやっぱり記憶が・・・」


「大丈夫です!覚えてますよ!?そういえばそうでしたね!いや~最近色々とありすぎてすっかり忘れてましたよ!そうでしたね!今日からでしたね!」



 もういいよ。あきらめましたよ。どうせ神様には逆らえませんよ・・・・・・





「よし、司君は動きやすい服装に着替えてくるといい。私は玄関で待っているから」



「あ、はい、分かりました」




 そう言われ、俺はすぐにタンスのある和室に向かった。


 え?服?・・・サイズがぴったり、かつ色々なジャンルのがタンスの中にぎっしり詰まってましたが、何か?


 は?最初に着ていた服?・・・体が縮むと同時に服も縮んでいましたが、何か?





















✽―十分後―



「(徒歩1分以下、だとぉおおおおおおおおお!?)」


 士郎さんに連れてかれてやってきた翠屋。
 自宅に帰るときは別の道を通っていたから気がつかなかったが、本当に歩いてすぐのところに建っていらっしゃいましたよ。





「(もう、無理だろ・・・)」


 転生しておいてこんなこと言うのもなんだが、あれだけ裏事情のある家庭(俺のみ)とその親戚(高町一族)がこれだけ親しくやってるんだ。そんな中にいる俺が静かに生きていくことなんてできるわけがないじゃないか!







 まあ、仕方がないか。せめて危険な目に合わないように充分気をつけて生きていこう。
 





 もはや何度目かわからないが、改めて強く生きていく決心を固めた俺は『OPEN』と書かれた看板のついたドアを開け、店の中に入った。





「いらっしゃいま・・・・ってあら、司くんじゃない」


「こ、こんにちは、桃子さん」





 店に入ってすぐに出迎えてくれたのは、士郎さんの奥さんこと『高町桃子』さん。
 士郎さんと一緒にこの翠屋を経営する高町家の母・・・なのだが・・・






「(若い・・・というか、綺麗・・・)」


 士郎さん同様、若々しい。
 とてもじゃないが、三人の子を産んだお母さんには見えないな・・・




「はい、こんにちは。その格好・・・今日はトレーニングでもしてきたの?」


「いえ、というか、むしろ今日からトレーニングを始めるところです」




「・・・・・・・・・ああ、そういえば恭也が司くんの稽古を付けるって言ってたわね。だからそんな格好してたんだ」




 ちなみに今俺が着ているのはよくあるスポーツウェア。というかジャージ。
 中は動きやすい服装ということで、黒のタンクトップ一枚である。





「まぁ、頑張ってね」


 短く簡潔だが、桃子さんからエールをもらった。
 それだけで、なんとなくやる気が出てきた気がした。





 俺はそのまま士郎さんが向かった道場へと足を進めた。





















「このままどんどん強くなって、将来はなのはも守れるくらいにならなくちゃね♪」


 桃子さんが何か言ったようだが・・・上手く聞き取れなかった。まあ、いいか。あまり重要なことでもなさそうだし。














✽―高町家道場―




「来たか、司」


「はい、よろしくお願いします。恭也さん」


 道場の中央、俺を待ち構えるかのように立っていたのは、高町家の長男『高町恭也』。
 高町家一子相伝の剣術、『御神流』の継承者・・・だったか?よくわからん。
 とにかく、そんな人が今、俺の目の前にいる。




「司、いくら達也さんがお前に剣の稽古をつけていたとはいえ、お前はまだ未熟だ。無理をしても、体を痛めるだけだぞ?」


「わかってますよ。まあ、自分なりに練習はしてみてるんですけど・・・」




 そう、練習はしていた。『自分なり』には。


 少なくとも、この世界の俺が父親に習っていたとかいう剣術とは雲泥の差があると自負している。


 だがそんなことよりも重要なのは・・・



「(結局、また戦わないといけないんだよな・・・)」



 転生する前に、というか死ぬ直前に決めていたこと。


 『絶対に戦ったりはしない』という枷を、早速こんな形で破ってしまった。
 




「(まあ、命のやりとりにはならないから、いい・・・かな?)」




 心の中で自分に問いを投げかける。


 今からするのは、俺が今までやってきた『死合』ではなく『試合』。


 命のやりとりはなく、ただ正々堂々と、相手と剣を交えるだけ。






「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



 俺の手に握られているのは、小太刀サイズの木刀二本。


 同じ獲物を持つ恭也さんも、決して命のやり取りを快感だと思う『狂人』ではない。






「(なら・・・いいのかな?)」



「手加減は・・・?」






















「・・・・・・・・・・・もちろん、なしでっ!」


 俺の返答に、恭也さんは静かに笑って返す。
 大丈夫、この人とならやれる。




















「まあ、そうは言っても手加減はするけどな」


「ええ~~」



 わざとらしくおどけてみせる。


 そんな俺を見ても、恭也さんは顔を歪めることなく、ただ悠然と構えているだけだ。



「それでは・・・始め!」


 士郎さんの開始の合図と共に、俺は姿勢を低くし、恭弥さんの方へ走る。



 そして、挨拶がわりの右手の小太刀による横薙ぎ。




「フッ!」


 カァン!と小気味の良い音が道場に響く。



「!!」




 突然の強襲に驚いたのか、恭也さんは少し目を見開いている。


 当然だろう。今恭也さんが相手にしているのは、恭也さんの知らない『紅神司』。

 この世界の俺がどれくらい動けたかは知らないけど、かじった程度の剣術しかできない人間とは違うんだよ!




「なかなか・・・・・・・・・いい一撃じゃないか!」



「ありがとうございます。でも・・・・・・・・・まだまだぁっ!」





 追撃を仕掛けようとしたが、恭也さんの反撃に阻まれた。

 初撃の勢いが完全に消えた俺に目掛けて縦一閃。




「ッ!!」




 俺はそれを、両手の小太刀をバツの字に重ねることで受け止めた。





















 が。



「うぉっ!?」




 ガンと鈍い音。
 思ったより強い衝撃で、恭弥さんの攻撃を受け切るより先に、俺の体が後ろに押し戻されてしまった。



 バランスを崩したが、なんとか体勢を立て直した。






「おいおい、大丈夫か?」



「な・・・・・・なんとか」




 戦闘中でありながら、恭弥さんに心配されてしまった。




 だけど・・・・・・なぜ?防御の仕方を間違えた?


 いや、違う。この程度の攻撃は死ぬ前に何度も受けてるし、ここまで押されることはないはず。
 だったらこれは・・・





「(体重が・・・・・・・・・・・・軽くなりすぎだ!)」




 それは転生してすぐの俺が気にしていたことだった。


 転生前に比べ、半分以下に落ちた体重。
 それに加えこの低身長で、強い一撃を出せるはずも、今の恭弥さんの一撃を受け切れるはずもなかった。

 さっきの俺の一撃も、せいぜい不意打ちで驚かせた程度なんだろう。










「(落ち着け落ち着け・・・踏ん張れないならどうする・・・・・・・・・?)」





 今までの戦いの中で考え出した戦術を、頭の中で再構築。




 自分より大きな敵の力、その勢いを利用して反撃、自身の攻撃の弱さを補うため、カウンターを狙う。



 リスクが高いが、今の自分にはこれが最も適している。






「それじゃ改めて・・・・・・・・・・・・ハアッ!!」



「グッ!」


「ほらどうした司!足が止まってるぞ!」




 そうと決まれば実践あるのみ。
 だが、あの恭也さんがそう簡単に隙を見せてくれるとは思わない。



 どうする・・・?
 




















 答えは簡単だ、こちらから隙を作ってしまえばいい。


 某錬鉄の英霊が得意とする戦い方。

 あえて自ら隙を作ることで、そこに相手の攻撃を限定するという戦法。
 これを実践してみるか・・・









✽-side恭弥-




「(どういうことだ・・・・・・・・・?)」



 すでに試合を初めて10分。
 今までの司なら、道場の床に倒れ込んでいてもおかしくない運動量だ。


 そうだというのに。



「はぁぁぁっ!」


「っ!」

     ・・・
 またもや司からの一撃。

 右の小太刀の振りあげを、体を仰け反らせることで避ける。

 すると司は、小太刀を振り上げたことで、同じく仰け反った体をさらに反らせて・・・・・・いや。

 反らせると見せかけて、左足を軸にして俺に回し蹴りをかましてきた。



「っ!?」



 突然のことで対応できず、まともに蹴りを受ける。


 右太ももに直撃。そこを中心に痛みが走る。






・・・・
 だが、幸いにもまだ子供の蹴りだ。
 痛みが走った程度で、膝を折るには至らなかった。




 回し蹴りが完全に決まったのを確認した司は、蹴った足をすぐに戻し、バックステップで俺から距離をとる。


 俺もバックステップで、司と距離をとる。









「はぁっ・・・・・・・・・・・はぁっ・・・・・・・・・」


 距離をとったのは、おそらく息を整えるためなのだろう。
 司は、ここからでもよくわかるくらい、肩で息をしていた。



 まあ無理もないか。
 10分間休憩もなしに動き回ったんだ。床に這いつくばってないだけマシか。



「そろそろ、休憩入れるか?」


「まだ・・・・・・・・・・・っ、もう少しだけ・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・はぁ」
 



 強情なところは達也さん譲り、か。

 いや、一度言ったら止まらないのは、なのはと一緒か?



 だが、これ以上続けさせて体を壊してもいけない。

 しかたない。少し・・・・・・本気を出すか。



「・・・・・・行くぞ」



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 本気を出そうとしているのを感じ取ったのか、司の目の色が変わった。
 いや、吹っ切れたというべきか?



「・・・・・・・・・はぁ!」


 だが、関係ない。

 左の小太刀をまっすぐ、司に向けて素早く突き刺す。



 単純だが、それでいて避けづらい一撃。
 司もそれが分かっているから、わざわざ防御に回ろうとはしない。

 俺から見て右側に、滑るようにして避ける。
 が、それがいけなかった。


「!?」


 右に避けたことで、今度は右の小太刀の射程距離に入った。


 これを左に避けるか、その場で避けるかすれば、次の一撃にも対処できたはず。
 まあ、突きをよけられただけ上出来か。



「(悪く思うなよ・・・・・・・・・・・・ッ)」


 突きを避けたことで、司には大きな隙ができた。

 俺は一旦稽古を終わらせるため、というか司の意識を飛ばすために、アイツの首めがけて小太刀を振るい・・・・・・・・・・・

































         ・・・・
 首に当たる直前に止まった。


「なっ!?」


 予想していなかった事態に困惑する。
 確かに今の一撃は決まったはず。ならなぜ・・・・・・・・・


 見間違いかと思い、もう一度振るった小太刀を見てみると・・・・・・・・・・・・



「っつう・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あっぶな」


 止まっていた。いや、止められていた。

 それなりに力を込めて、少なくとも、さっきまでとは比較にならない強さと速さで出したはずだ。
 そうだというのに、俺が繰り出した一撃は、司の持つ左の小太刀で確かに止められていたのだ。




「・・・・・・・・・・・・・・・」






―side 司―



「(修正、1ヶ月はかかりそうだなぁ・・・・・・・・・・・・)」


 構えを解いて最初に思ったのは、そんなことだった。

わざと隙を作ってカウンターを入れる戦いなら何度もしてきたけど、身長と体重の変化のせいで、上手く立ち回れなかった。
 実際、恭也さんの攻撃を受け止めただけで、カウンターは出来なかったし。


「・・・・・・」



 恭也さんの視線の先に転がっているのは、俺が今さっきまで持っていた小太刀。


 そうだ。恭弥さんの攻撃を、俺は確かに防いだ。

 けど、構えが不完全だったのと、やはり体重が減ったこともあり、受け止めるのではなく、なんとかそらす形で防ぐことができただけだ。

 その証拠に、威力を殺しきれなかったせいで、小太刀も吹き飛ばされたし。


 やはり、戦闘面でのこの変化は大きい。


「あ~~~~~~~~っ、疲れた・・・・・・・・・」


 気を抜いた途端、一気に体が重くなり、思わずその場に仰向けになる。


「司」


 小太刀を見ていたはずの恭也さんが、いつの間にか俺の方に向き直っていた。


「その・・・・・・・・・大丈夫か?手、痛めたんじゃないのか?」


「ん?・・・・・・あ、ああ・・・・・・大丈夫です。多分・・・・・・・・・」


 弾かれた左手をひらひらと振ってみせる。


「ん、そうか。ならいいんだ・・・・・・・・・・・・・・・」


 異常がないのを確認して、恭也さんもホッと胸をなでおろした。



「二人共、少し休憩にしよう。司君も、動きっぱなしで疲れたんじゃないのか?」

「はい・・・・・・もう・・・・ほんとに・・・・・・きっついです」


 冗談ではなく本当に。口を開けて話すのも辛いくらいだ。

 たったこれだけの組手だというのに、もうこれ以上動ける気がしない。




「あれだけ動き回ってたんだから無理もない。むしろ、今までに比べたらかなりの進歩だよ。まさか、恭也相手にここまで粘れるとはね」

「はは・・・・・・・・・」


 士郎さんに褒められはしたけど、転生前の俺からしてみたら、無様もいいところだ。
 まずは、これをどうやって修正するかだよな、ほんとに。




「休憩が終わったら、次は基礎錬だ。今日は初日だし・・・・・・これ以上激しい運動はしないから安心しろ」

「は~い」


 重たい体をどうにかして起こし、道場の隅に移動した。







『はぁ~・・・・・・司、転生前に比べて弱くなったねぇw』


「ほっとけ・・・・・・・・・・・・ん?」


 あれ?俺、今誰かと話してた?






















「・・・・・・・・・・・・・・・空耳か」


 疲れも溜まってるし、空耳が聞こえてもおかしくないか。




 さて、あと3分休憩したら、また稽古を始めるとしますか。






















「あら、お疲れ様。大変だったでしょう?」


「あう~・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 恭也さんとの稽古を終えて喫茶店に戻ってきた俺は、外が見えるカウンター席に座って垂れていた。


「あらあら大丈夫?」


「な、なんとか・・・・・・・・・」


 桃子さんが持ってきたペットボトルを受け取り、蓋を開け、中身を飲む。

 中に入っていたスポーツドリンクは、さっきの稽古で消費した塩分なり電解質なりを多く含んでいて、疲れた体を癒してくれた。





 四分の一程まで飲んで一息。


 桃子さんは、何か面白いものを見ているかのような目で俺を見ていた。


「フフッ、なんだか司君、前より大人っぽくなったわよ」


「お、大人っぽく、ですか・・・・・・?」


 俺が大人っぽい?

 前いたところではガキ扱いばかりされてたけど、大人っぽいっていうのは初めて言われたな。


「ええ。なんとなく、雰囲気が変わった・・・・・・みたいな?」


「はあ・・・(というか、実際別人なんですけどね)」





 そんな他愛ない話をしているうちに、俺はあることに気がついた。


「(そういえば、まだなのはにあってないな)」


 そうなのだ。この物語『魔法少女リリカルなのは』の主人公にして未来の管理局の白い悪魔こと『高町なのは』に、まだ一度もあってないのだ。
ちなみに、長女の高町美由希さんには、翠屋に入った時に確認している。


「(む、時計はもう3時を過ぎてるのか・・・)」


 そういえば、今日は金曜日で、学校はまだ授業があるんだった。

 って、そういえば俺、学校はどうしてるんだろう?
 うかつに桃子さんに聞くわけにもいかないし・・・


「あら、もうそろそろなのはも帰ってくるわね」


「そうなんですか?」


「ええ、多分授業が終わって三十分くらいだから、そろそろ帰ってきてもおかしくないんだけど・・・・・・」


 そう言った桃子さんは、俺の座っている席の隣に座って、俺の顔を見てニコニコしている。


「な、なんですか?」


「いや、ねえ?司君がここにいるのを、なのはが見つけたら、一体どんな顔するのかな~って」


「・・・・・・」


 桃子さん、人を弄ぶ様なことはやめてください・・・






 そんな桃子さんの悪巧みに内心呆れていると・・・


「ただいま~」


 特徴的な田村ゆかりボイス。間違いないな・・・


「ってあれ!?司君!?なんでうちにいるの!?」


「あら、おかえりなのは」


「・・・よう」


 ・・・高町なのはが帰ってきたようだ。
 そして、これが俺となのはの初対面(?)である。


 ・・・特に嬉しくもなんともないんだが・・・


「・・・・・・」


「・・・・・・」


「え、ええと・・・」


 俺は無言。桃子さんも無言(+笑顔)。なのははオロオロ。


 ・・・何?このカオス・・・
 
 

 
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