占術師速水丈太郎 五つの港で
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第三十七章
第三十七章
「それでは」
「事件の解決はこれで御願いします」
「わかっています。では私はこれで」
「これから佐世保の街に行かれるのですか?」
小川は話が一段落したと見て彼にこう問うてきた。
「今からでしょうか」
「いえ、今日はですね」
「今日は」
「戻ります」
微笑んでこう述べた。あえて江田島とは言わないのであった。
「これで」
「戻られるのですか」
「はい、ではどうも有り難うございました」
微笑みはそのままにまた礼を述べたのであった。
「それではまた」
「左様ですか。それでは」
「はい、これで」
敬礼して見送る小川に微笑みで応えて佐世保の基地を後にする。そうしてまた運命の輪を使って江田島に戻った。そこに戻るとまずは携帯でだ。防衛省に連絡をするのだった。
「私ですが」
『速水さんですか』
すぐにあの若い文官の声が電話の向こうから聞こえてきた。
『どうされたのですか?』
「全てわかりました」
電話の向こうの彼に微笑んで告げたのだった。
「これで事件は解決します」
『えっ、もうですか』
彼はそれを聞いて即座に驚きの声をあげてきた。
『二日ですが』
「それでも全てわかりました」
『そうなのですか。それはまた』
「早いというのですね」
『早過ぎる位です』
そこまでだというのである。
『何しろ奇怪な事件ですので』
「ですが謎は些細なことから解決されるものです」
速水は明らかに微笑んで述べていた。
「ですから」
『では明日こちらに来てですか』
「はい、詳細を述べさせてもらいますので」
そうするというのであった。
「今日は」
『そちらで休まれるのですね』
「そうさせてもらいます」
静かに微笑んでの言葉だった。
「それで宜しいですね」
『そうですね。今はもう五時ですし』
あれこれと動き回り話を聞いているとだった。何時の間にかその時間になっていたのだ。幾ら運命の輪のカードを使って瞬間移動を使ってもである。三つの場所で話を聞いて動いていればそうした時間になってしまうのだ。速水もそれは当然だと思っていた。
『明日にしましょう』
「それでは明日に」
『はい、それでは』
「今日はこれで」
こう言ってであった。この日もまた飲んでそのうえでスーパー銭湯で汗を流してである。そのうえでその日も江田島で休んだのであった。
その日起きるとである。食堂に行き身支度を整えてだ。細木に連絡をした。
「これで仕事を終わらせてもらいます」
『えっ、もうですか』
彼もまた驚いていた。昨日のスタッフと同じ態度であった。
『もう終わったのですか』
「はい、後はです」
『東京に戻られるのですか』
「そうさせてもらいます」
静かに微笑んでの言葉だった。
「それでなのですが」
『はい』
「ベッドはなおしておきます」
そうすると自分から言ったのである。
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