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八条学園怪異譚

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第四十一話 百物語と茶室その四

「ではな、しかし」
「しかし?」
「しかしっていうと?」
「前にあそこでも嫌な事件があったのう」
 ぬらりひょんは曇った顔で話した。
「ほれ、高等部のいじめっ子がな」
「あっ、二年のね」
「何か無茶苦茶な殺され方してたらよね」
「うむ、あれはのう」
「何かバラバラにされて」
「目も鼻もくり抜かれて」
「近頃この学園、高等部で妙な連続殺人事件めいたことが起こっておる」
 この話は学園の中を騒がしている、いじめっ子や不良その中でもとりわけ悪質な連中が惨殺されてきているのだ。 
 その事件についてだ、ぬらりひょんも言うのだ。
「あれは人間の仕業じゃが」
「どんな人なのよ、あんな殺し方続けてするって」
「何か塾の理事長さんも無茶苦茶なことになってたわよね」
 この話もする二人だった。
「お腹の中鼠に食べられて死んで両手両足砕かれて」
「サイコ殺人っていうの?」
「西洋の拷問じゃな」
 博士がここで言った。
「全部な、異端審問の殺し方がやけに多い」
「異端審問ってあの?」
「魔女狩りの」
「うむ、尋常なものではない」
 そのいじめっ子の惨殺死体についてもだというのだ。
「日本人の文化ではないな」
「そこまで酷いですか」
「有り得ないですか」
「確かに殺された連中は人間の屑ばかりだった様じゃが」 
 だがそれでもだというのだ。
「これは日本のものではない、人間の苛烈さと冷酷さを極限まで出した様な」
「そうしたですか」
「酷い処刑ですか」
「水を飲ませてその腹を踏んで吐き出させてまた飲ませて繰り返す」
 この拷問もだというのだ。
「これも日本の拷問ではない」
「じゃあ外国の人のやり方ですか?」
「そうですか」
「そうじゃ、キリスト教の異端審問の殺し方じゃな」
 博士は己の知識かわ考えていく、博士の該博な知識からだ。
「誰かおるのか、暴力団の藤会も壊滅したが」
「ああ、あれも無茶苦茶だったそうですね」
「もうスプラッターだとか」
「らしいのう、首や胴を切ったりな」
 そうしてバラバラにしての殺人だというのだ、これも博士の見るところ。
「異端審問めいていて一歩間違えればじゃ」
「サイコパスですか?」
 聖花はここでこの言葉を出した。
「よく言う」
「それに近いのう、しかし」
「しかしですか」
「これは違うな。どうも悪質な者に対してな」
 いじめっ子なりヤクザ者なりをだというのだ。
「徹底的に処刑する、そうした類じゃな」
「じゃあこの場合は」
「処刑人じゃ」
 それだというのだ。
「死刑執行人じゃ」
「そうした人ですか」
「どうもこの話は不気味でしかも怪談なぞよりも遥かに剣呑なものがある」
 だからだと、博士は二人に言った。
「この話はわしも絡まん様にしておるしな」
「だからですか」
「私達もですか」
「おそらくこの犯人は絶対に捕まらん、しかもな」
「絶対にですか」
「見つからないんですね」
「どうもかなり巧妙な犯人じゃ」
 それこそ影の様な、そうした者だというのだ。 
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