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ドラクエⅤ主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?

作者:あさつき
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二部:絶世傾世イケメン美女青年期
  七十三話:イケメン美女への道

 よく考えたら完全に一人で寝るのって、今回生まれて初めてだった。

 と、起きてから気付いた、サンタローズの朝。

 十年前までは通常はパパンと一緒で、例外的にビアンカちゃんと一緒とか。
 奴隷の十年間の雑魚寝は言うに及ばず、脱出後もヘンリーとかマリアさんとか、やっぱりヘンリーとか。
 村のみんなとのお話の結果でヘンリーと同室ということはもう無いかもしれないけど、スラリンがいるし、他にも仲間は増えていくだろうし。
 実は結構、レアな夜だったのかもしれない。

 なんて気付いたところでもう過ぎたことであり、惜しがるには雑多な環境に慣れすぎたこともあり。
 普通に、身支度を始めます。


 余計な男を引っかけないように気を付けようと昨日決めたところなので、ここはやはり男装だろうか。
 いやいや意外と余計じゃない、旅への連れ回しが可能な、候補足り得る人材がいるかもしれないし。
 あるかもしれない貴重な機会を、完全に潰しにいくことも無いか。

 と、いうわけで今日は中性的な、どっちつかずの格好にすることにします。
 基本的にはこの格好で、思いのままにどちらにも見せかけられる演技力及び対応力を身に付けていくべきよね!
 イケメン美女としては!


 服装を決めて身支度を整え終えたあたりで、丁度扉が叩かれます。

「ドーラ。起きてるか?」

 同室では無いので当たり前かもしれないが、ノックを学習したらしいヘンリーです。
 鍵はかけてるから、開けようとしても開けられないが。

「うん。今、出る」


 部屋を出て、スラリンを抱いたヘンリーと一緒に宿の食堂に下ります。

 ……そろそろ、返して欲しいんだけど。
 しかしスラリンもさも当然のように、しっくりとヘンリーの腕に収まってるし。
 何?私、出遅れた?

 ……くっ!
 これから、これから!


 などというじっとりとした視線を一人と一匹に向けつつ食堂に着いて、朝食を摂りながら。

「次の目的地だけど」
「アルカパだろ?」
「いや、そこはスキップしようかと」

 ビアンカちゃん、いないだろうし。
 ゲームの、ヘンリーがアルカパの宿で決意固めるフラグとか、我々には必要無いし。

「なんでだよ。ビアンカさんも、絶対にいないとも限らないだろ。行こうぜ」

 うん、まあ。
 ゲーム通りに進む保証なんて、どこにも無いし。
 確認しておきたいのは、山々なんですけど。
 でも、さっさとヘンリーをラインハットに返却したいという希望もありつつ。

 ……って、そうだ!
 ラインハットの件が片付いたら、逃げるようにビスタの港に行って、船出しないといけないかもしれないんだから!
 いま行っておかないと、もうルーラ覚えるまで確認できないじゃん!!

「ついでだから、レヌール城も見たいな」

 まあ、オラクルベリーでは散々私に付き合ってもらったし。
 銀のティーセットも集め終わって無いし、この際だから行っといてもいいか。

「わかった。じゃあ、アルカパに行って、レヌール城にも行って。今日はアルカパで一泊の予定で」
「おう」


 朝食を終え、荷物を持って馬車を連れ、宿屋のご夫婦と神父さん、シスターと見張り番のおじさんに見送られて村を出ます。
 他のみなさんは酔い潰れて、酒場で死屍累々だそうで。
 爽やかな旅立ちの朝に無理矢理見送りに来られたりしなくて、本当に良かった。
 見張り番のおじさんは、ちょっと辛そうだけど。


 村を出て、スラリンは大事に馬車にしまって待っててもらい、戦闘をこなしながらアルカパに向かいます。
 特に狙うべき仲間モンスターもいないので普通に倒して、昼前にはアルカパ到着。
 無暗に仲間増やしても、お金かかるだけだからね!
 長く付き合えるのと可愛いの以外は、必要無い!


「アルカパの町へ、ようこそ!」

 町の入り口に近付くと、門番さんがにこやかに声をかけてきます。
 ギリギリお兄さんと、呼べなくも無さそうなお年頃。
 ていうか十年前と同じ人ですね、たぶん。
 かなり若かったもんね、当時。

 よし、折角だから練習してみよう!
 男に見せかける、練習を!

「すみ」
「馬車を停めたいんだが。どこなら大丈夫だ?」
「ああ、それなら。あの木の辺りに頼むよ」
「ありがとう」

 ヘンリーに阻まれました。

 そうだった、保護者が付いている限り、いいお年頃の男性とはまともにお話もできないんだった。
 アランさんと普通に話せたから、忘れてた。
 あれは村人のサポートあっての、例外中の例外だった。

 ……でも!
 一昨日はこの格好で油断して、ナンパとかされたわけだし!
 話さなくとも、雰囲気作りの練習くらいできるはず!
 悔しくなんか、無いんだから!
 負けないから!!


 なんてことを思いつつ、また手を繋いでこようとするヘンリーを牽制するようにスラリンを抱き上げ。

「……レベルも少しは上がっただろうし。歩かせても、いいんじゃねえか?」
「村とは、違うし!迷子になるかもしれないじゃない!」
「……なら、俺が」
「……」

 昨夜から今朝にかけて、ヘンリーがスラリンを独占してたわけなので、ここで私が譲る理由は、本来ならば無いのだが。

 ヘンリーにスラリンを抱かせれば、ヘンリーの手が塞がるということなので。
 諸々の邪魔が入りにくく、なるのでは無かろうか。

「……うん。わかった。よろしく」
「……おう」

 やけに素直な私を訝しみながらも、スラリンを受け取るヘンリー。

 そんな反応にも気付かぬ素振りで、さっさと歩き出します。

「さあ、行こうか!ビアンカちゃんがいた、宿屋に!」
「お、おう」

 既に演技入って凛々しい声を出す私にヘンリーが戸惑ってますが、気にしません。

 今日の私は、男!
 中性的な、イケメンです!


 先に立って颯爽と歩く私に、町の視線が集中します。
 うん、視線の、女性率が高いね!
 質、量ともにね!
 男性の視線もあるが、それは男装の時も同じだったから、想定内!問題無い!

 とは言え小さな町ゆえに、オラクルベリーほど積極的な女性が溢れているようなことも無く、散々見られながらも特に声はかけられずに、そのまま宿屋に到着します。


「すみません。少々、お伺いしますが」

 カウンターに立つ男性に、声をかけます。
 おじさんだし、既婚のはずなのでヘンリーの妨害も入りません。

「いらっしゃい!お早いお着きですが、お泊まりで?」

 おじさんが、愛想良く返答をしてくれます。
 うん、「ぽっ……」とか無いね、順調、順調。

「まだ行く場所があるので、それは後で。その前に、この宿屋のご主人のことですが」
「主人なら、私ですが。何か、ご用で?」

 やっぱり、ダンカンさんはもういないのか。

「以前にこちらにいらしたはずの、ダンカンさんをご存知無いですか?古い、知り合いなのですが」
「ダンカンさん?……ああ、ここの前の持ち主が、そう言えばそんな名前だったような。すみませんねえ、そんな程度なので、行き先やなんかは、特に」
「そうですか。まだまだ、お若かったと思いますが。宿を手放したのは、なにか事情があったんでしょうか。体調でも崩されたとか」
「ああ、そうそう。ご主人のほうの、持病が思わしくないとかで。仕事を辞めて、どこか環境のいい所で療養するようなことを言ってましたね。もう、何年も前の話ですが」
「そうですか。わかりました」

 ずっと普通に話してましたが、ここで爽やかな笑顔です!
 超絶美女に成長してしまった私のイケメンスマイルは、果たして男性に、そうと認識してもらえるのか。

「お忙しいところ、ありがとうございます。用が済んだら、お世話になりにきます」

 私の笑顔に目を見開き、動きを止めるご主人。

「は……?……は、はい!…………いやー、お兄さん、男前だね!男の俺でも、ドキッとしちまったよ!それじゃ、あとで。いい部屋整えて、待ってるよ!」

 顔はやはり「ぽっ……」となり、動揺のためか急に口調が砕けてきましたが。

 成功ですね!
 ちゃんと、男と思われました!
 やったね、私!!

 ヘンリーがひたすら微妙な顔をしてますが、気にせずご主人に挨拶して宿を出ます。


「……おい。……なんだ、あれ」
「服装だけ誤魔化しても、仕方ないじゃない。やっぱり中身が伴わないとね!いけるよ、私!もう手を繋いだりなんだりしなくても、大丈夫!」

 一人でお出かけだって、きっとできるよ!

 と、浮かれすぎたのがいけなかったのか。

「ねえねえ、君!この町の娘じゃないよね?案内、しようか?」

 ちょっと気を抜くと、すぐこれですよ。
 精進しなければ。

 しかしスライムを抱いてるのが少々間抜けとは言え、一応はイケメンで強そうなヘンリーが付いているというのに、ナンパしてくるとかどんな()()だ。
 しっかり、顔を拝んでおこう。 
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