魔法少女リリカルなのは ~優しき仮面をつけし破壊者~
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A's編 その想いを力に変えて
33話:灼熱の剛拳(前編)
前書き
長かったので分けました
……はぁ、どうしたもんかなぁ…
「何よ、そんなへこたれた顔して」
「ほっとけ…」
「そうは言っても、心配はするよ、友達なんだし」
そう言ってくれるのは嬉しいんだけどもねぇ…
「そんなことより、士もほら」
「ん…?」
アリサからなんか無理矢理渡されたのは、携帯のパンフ。腕に埋めていた顔を上げてみると、横ではフェイトとなのは、すずかがそれぞれ持つパンフを見せ合いながら話し合っている。
ていうか、俺の周りによるな。お前ら四人組が周りにいると、他の奴らから恐ろしい目線を放たれるんだから、勘弁して欲しいものだ。
「なんだか、いっぱいあるね」
「まぁ最近はどれも同じような性能だし…見た目で選んでもいいんじゃない?」
「でもやっぱ、メール性能のいいやつがいいよねぇ」
「カメラがあると、色々楽しいんだよ」
なのは達からそう言われ、う~んと唸りながらパンフを真剣な目で覗き込むフェイト。
聞いての通り、今俺の周りで協議されているのは、フェイトがリンディさんに買ってもらう携帯をどれにするか、のようだ。
いやいや、そこまで悩む事か?俺なんかスマホを見てきた人間だからか、どれでもいいや気分で決めたから、その悩む事自体がわからない。
「でもやっぱ、色とデザインが大事でしょ~」
「操作性も大事だよ~」
「外部メモリーついてると、色々便利でいいんだけど…」
「そうなの?」
「写真を撮ったとき、そのメモリーに入れることができるんだ。そうすれば、その画像をメールと一緒に送ることもできる」
頬杖をつきながらそういうと、それに反応してなのはやアリサがまた話しだし、そこへすずかも加わっていった。
「は~…なんでそこまで話し合えるかね~」
「あ、あのさ、士…」
ん~?と曖昧そうに返事を返すと、フェイトは俺の側に寄りながらパンフの一部を指差し、それを見せてきた。
「こ、これなんか…どうかな?」
「どうかなって言われてもなぁ…」
使ってもいない携帯の感想を述べよ、なんて言われてもなぁ…。
とか思って見てみると、フェイトが指差す携帯は、俺と同型のやつで、色が基本を黒にして一部黄色が入ったものだ。因に俺のは基本の色を青にしたものだ。
「これ俺と…」
「うん、使ってる人から聞いた方が、一番いいかなって…」
どう?と首を傾げながら、フェイトは聞いてくる。
「別に使い勝手が悪いもんじゃない。ただ俺は自前のカメラがあるから、カメラほとんど使ってねぇし、さっき言った外部メモリーもねぇぞ?」
「ま、まぁそれでも…いいかな?」
「なぜ疑問形…」
で、結局俺の色違いのやつにする、ということで。
「いい番号あった?」
「うん」
「えぇ、見せて見せて!」
フェイトも断る事なく、画面に番号を表示して、皆に見えるようにしてくる。三人はおぉ、と声を上げるが、俺は別に数字に意味を求めない派なのでそこまでの反応はない。
「これから使い方慣れていかねぇとな」
「勿論、そのつもりだよ」
「じゃ、アドレス交換しよう」
「うん」
とまぁ、その場で俺達五人のアドレスをそれぞれ交換した。
でまぁ、そんなこんなで現在フェイトの家、ハラオウン家へ。
ん?そんなこんなはどんなもんかって?そんな細かい事は気にすんな。
「ん…ん……はぁ…水が旨い…」
二人はフェイトの部屋。俺はさすがに入る気にはならなかったので、リビングにて水道水を一気飲み。
「たっだいま~!」
そのとき、玄関の扉が開き元気な声が広がる。
廊下の方へ顔を出してみると、そこにはエイミィが両手に中身がぎっしり詰まったビニール袋を持っていた。
「あ、士君いらっしゃい。君が来てるってことは、なのはちゃんも?」
「なんで毎回俺はなのはのついで扱いなんだ…」
「まぁまぁ、気にしない気にしない」
ここまでされると気にもなるわ!と心の中で突っ込んでおく。
丁度二人も部屋から出てきて、四人一緒にリビングへ。さっそく袋の中の物を次々に冷蔵庫へと入れていく。
「艦長、もう本局に出かけちゃった?」
「うん。アースラの武装追加が済んだから、試験航行だって。アレックス達と」
「武装ってぇと…“アルカンシェル”か……あんな物騒なもの、最後まで使わずに済めばいいんだけど…」
そんな中フェイトとエイミィの会話の中に、聞き慣れない単語があった。
「因に聞くが、アルカンシェルってのは?」
「今説明してもいいけど、結構長いし難しいよ、仕組みとか説明していくと」
「そんなの大雑把でいいだろが」
まぁ、別にいいか。と言いつつ、フェイトが持つカボチャを鷲掴みにする。
「クロノ君も居ないですし…戻るまでは、エイミィさんが指揮代行だそうですよ?」
[責任重大だね~]
「なんかあったら大変だ~」
「こらそこ!変に物騒なこと言わない!」
なのはの言葉に俺とアルフがそれぞれ煽るように言うと、エイミィは俺達を指差しながら強い口調で言い返す。
そしてエイミィは俺に近づき、カボチャを奪いながらまた口を開く。
「ま、とは言え早々非常事態なんて起こる訳が―――」
その瞬間、この家に配備された警報がけたたましく鳴り響き、非常事態を伝えてくる。同時に空中にホログラム状のモニターが展開され、赤い画面とミット文字で敵の出現を伝達する。
その光景を見たエイミィは、俺から奪い取ったカボチャを手からこぼしてしまう。
俺はすかさずカボチャの元へ飛び出し、ダイビングキャッチ。プロ野球選手もビックリな程の見事なファインセーブを見せる。
だがそれに他の三人は反応することなく、なのはとフェイトがエイミィを見て、エイミィは表情を変えていた。
そんな中、俺はエイミィに向け念話を送っておいた。
[―――フラグ回収、乙]
俺達四人はすぐさま別室の管制室へ。そこに映し出されていたのは、先日あったばかりの桃色の髪の女、シグナムと、銀髪の男、ザフィーラ。
「文化レベルゼロ…人間は住んでない、砂漠の世界だね」
そこでその世界の原生生物を相手に蒐集をしている、と……
「結界が張れる局員の集合まで、最速で四十五分……ん~、マズいなぁ…」
操作をしながらエイミィが呟く。さすがに彼等がそんな長く待ってくれはしないだろう。
すると目の前にいるフェイトが胸に抱くアルフと顔を合わせ、一回頷いた。
「エイミィ、私が行く」
「アタシもだ」
「……うん、お願い!」
「うん」
「おう!」
まぁシグナムとの再戦も果たしたいだろうし、アルフはザフィーラを相手取る、と。
「なのはちゃんと士君は―――」
「俺はフェイト達と一緒に行く。残るのはなのはだけだ」
「え…?」
さらに続けて俺達に言おうとしたエイミィを遮るように、俺は言葉を発する。
「闇の書の蒐集は、一人当たり一回なんだろ?」
「え、まぁそうだけど…」
「それなら次に狙われやすいのは、まだ蒐集されていないフェイト、そしてアルフ。もしもの為に、俺がついていく」
エイミィにそう言うと、少しの間思案顔になった後、俺を見て一回頷いた。
「わかった。でも士君も蒐集されてないんだから、十分気をつける事。いい?」
「あぁ、勿論だ」
「じゃあなのはちゃんはバックス。ここで待機して」
「はい」
すぐにその部屋を出たフェイトと俺は、家の中から転送を使用し、シグナム達がいる世界へと向かう。
「ここ、か…」
「砂漠で少し先が見えないね…」
着いてからすぐ、アルフは別の場所へ移動したザフィーラの元へ。俺とフェイトも、シグナムの元へと向かう。
「……っ」
「どうかした?」
そんな中、俺は背後から現れた気配で足を止める。
「…フェイト、悪いけどここで一回分かれよう。お前はシグナムのところへ」
「……何かいるの?」
「あぁ…奴だ」
フェイトの言葉にそう返しながら、俺はトリスをディケイドライバーへと変え、腰に当てる。
「行ってくれ。今は分かれた方が得策だ」
「…わかった、士も気をつけて」
「任せろって…」
俺が振り向き、背中を見せた事を確認すると、フェイトは少しは状況がよくなった砂漠から飛び立った。
「……そら、出てこいよ」
俺はそれをちゃんと見る事もなく、ただ一点を見つめる。砂が舞い上がり見えない場所に、突如として人影が映る。
「…フフフ……」
「相変わらず…変な笑い方しやがって」
そう言いながら、ライドブッカーに手をかけ、カードを取り出す。
「変身!」
〈 KAMEN RIDE・DECADE!〉
そして変身。いつもの流れだ。
砂塵が収まっていき、奴の姿がはっきりと見える。お互いに姿を確認し合い、それぞれが身構える。
士が怪人と相対しているとき、そこから大分離れた場所。
そこにはこの砂漠の世界に住む、百足のような原生生物が体液を流しながら暴れていた。
そんな中に一人、空中で剣を構える人物が。
「―――ヴィータが、手こずる訳だ…少々厄介な相手だ…」
そう、シグナムだ。
シグナムは少し息を上げながら、蒐集相手を見つめる。そしてレヴァンティン内へ入れる為のカートリッジを二、三本取り出す。
「―――つ!?」
その瞬間、背後から砂を巻き上げ何かが飛び出した。どうやら相手取っていた生物の一部のようだ。
さらにそこから出てきた触手が、シグナムめがけて飛んでくる。意表をつかれたシグナムはすぐに回避行動に出るが、すぐに数本の触手に体を絡めとられる。
「ぐっ…しまった…!」
体の自由がきかない。さらに前方からはその生物の頭部が移動してくる。
そして、シグナムに絡み付く触手にはさらに力が入り始め、シグナムの体を締め上げていく。
生物が雄叫びを上げ、末端である尾の先をシグナムへと向け、刺し殺さんとする。
〈 thunder blade 〉
しかし、突如どこからか聞こえたボイス音と、原生生物に突き刺さる黄色い刃。それらが生物の動きを止め、シグナムを拘束から解き放った。
自由に動けるようになったシグナムは、上空を見上げる。そこには黄色い魔法陣を展開したフェイトが、その魔法陣の上に立っていた。
「―――ブレイク!」
フェイトのそのかけ声と共に、生物に突き刺さる刃が一斉に電気を放出し始め、爆発していく。当然、生物の体はそれに耐えきることもなく、無惨にも砂漠の上に転がる。
生物が倒れて、フェイトとシグナムはお互いに真っ正面から見つめ合う。
『フェイトちゃん!助けてどうすんの!捕まえるんだよぉ!』
「あっ…ごめんなさい、つい…」
彼女の優しさ故か、はたまた天然な部分が出てしまったのか、エイミィの言葉でようやく気づくフェイト。
「……礼は言わんぞ、テスタロッサ」
「…お邪魔、でしたか?」
「蒐集対象を潰されてしまった…」
シグナムはそう言いつつ、先程し損ねたカートリッジの補充をする。
「まぁ、悪い人の邪魔が、私の仕事ですし…」
「そうか…悪人だったな、私は」
補充を終え、レヴァンティンの一部がスライドする。
そして、シグナムは閉じていた目を開き、フェイトを睨む。
またその時、地球の管制室では新たな動きが。
「も、もう一カ所!?」
またけたたましく警報が鳴り響き、新たに映った映像には、赤毛の少女、ヴィータが飛んでいるのが映る。その脇には、茶色い本が抱えられている。
「本命はこっち!?なのはちゃん!」
「…はい!」
エイミィの言葉になのはは頷き、管制室から走って出て行った。
後書き
次は士の戦闘描写を主に
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