IS《インフィニット・ストラトス》~星を見ぬ者~
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第三十三話『暴走~互いの思い~』
「ラウラ! ぐっ!!」
「くっ! うわぁあ!!」
突如として叫び声を上げたラウラから放たれた強い衝撃に、スウェンと一夏は吹き飛ばされ地上へと叩きつけられ、ISが強制解除された。箒は一夏達の下に駆け寄る。
「一夏! 大丈夫か!?」
「あ、ああ……」
「ラウラに一体何が……」
スウェンはラウラの方を見ると、その光景に目を疑った。
レーゲンの装甲は液体のような形状になり、まるで意思を持ったように動き始めラウラを完全に覆ってしまいまた違う形状へと変わった。スウェンはこれが何なのか、遅れてから理解できた。しかも、最悪な状況であると。
「……“VTシステム”」
「VTシステム?」
そう一夏が問うと、スウェンは静かに頷く。
「VTシステム。正式名称はヴァルキリー・トレース・システム。過去のモンド・グロッソの部門受賞者の動きをトレースするシステムであり、現在アラスカ条約でどの国家・組織・企業においても研究、開発、使用全てが禁止されている物だ」
「そんなものがあいつのISに……ッ!?」
それは先程の人型とは言い難い形状から、完全なる人型へと、全身装甲のISへと変化しておいた。一夏はその姿を見て驚愕する。
「あれは……雪片!?」
「何?」
目の前の存在に握られている刀状のブレード。スウェンも一度見た事がある、間違いなくその形状は過去に千冬が振るっていた雪片と同じ形状をしていた。
「くっ……このぉおおお!!!!」
「待て! 織斑!」
突然一夏が走り出す。スウェンは一夏の腕を掴み静止の言葉を掛ける。
「スウェン離せ! あいつ、ふざけやがって!!」
「待てと言っている。もう一度見てみろ」
「え?」
ふと我に返り、一夏はそちらを向く。そのISは急にもがき、再び形状を変えていく。特徴的な頭部に、四本のアンテナ、そして先程の装甲とは違い、無機質な装甲へと変わっていく。
「あれって……」
「……ああ」
次にその姿になったときは、スウェンは直ぐにそれが何なのか理解できた。
「ストライクか」
そう、漆黒のISの姿はストライクの形状に変化していたのだ。スウェンは残ったエネルギー残量を確認する。
「まだ戦える」
スウェンはストライクEを展開し、レーゲンストライカーを装備しようとするが
「……レーゲンストライカーは今は使えないか。酷使してすまなかったな」
先程の衝撃で使用不可になってしまったレーゲンストライカーに向けてそう言い、ノワールストライカーを装備する。そして一夏に持たせていたフラガラッハが地面に突き刺さっており、スウェンはそれを抜く。
すると
『スウェン!』
「デュノアか」
シャルルからの通信に、スウェンは答える。
『今先生達が行ったから、スウェン達は直ぐにそこから退避して!』
「いや、あいつは俺が止める」
『え? け、けど……!』
「これ以上の会話は不要だ、切るぞ」
『ちょ、スウェ――』
強引に通信を切ると、スウェンはラウラであろうそれに向き直る。
「無茶だ! ストライクのエネルギーだって少ない、このままでは……シャルルの言う通り教師を待った方がいい!!」
「あいつは俺の部下だ……だから、俺が止めなければならないんだ。俺でなければいけないんだ」
「スウェン……」
流石の一夏でも気づいた、そのスウェンの声には焦りと怒りに近い感情が入り混じっている事に。
「わかった、俺は先生達がこっちに来ないように止めて来る」
「!?」
「なっ! 一夏!?」
突然の一夏の言葉にスウェン、箒は驚いた表情をする。
「本当は俺がぶん殴ってやりたいところだけどスウェンに任せる。頼むぜ」
「解っている……ありがとう、一夏」
「おう、あれ? 今……」
「いいから行け」
「あ、ああ!」
一夏はアリーナの出口に向かって走っていく。一方の箒は黙ってスウェンの事を見る。
「……」
「何か言いたそうだな」
「いや……私も一夏の方に行く。しっかりやれよ」
そう言い残すと箒は一夏の後を追う。残されたスウェンはフラガラッハの切っ先を漆黒のISに向ける。
「行くぞ……ラウラ」
スウェンが漆黒のISへと駆けると、腰のアーマーからアーマーシュナイダーと酷似した武装を取り出し、スウェンと応戦。アーマーシュナイダーから繰り出される攻撃はスウェンを圧倒する。
「くっ! 一撃が重い……」
明らかに先程のラウラの力によるものではない。VTシステムは此処までのものなのか、とスウェンは判断する。一旦距離を取り、フラガラッハを構え直す。
「ラウラ……あの叫びはお前の苦しみから来たものなのか?」
漆黒のISは尚も攻撃の手を緩めない。
「その苦しみを生んだのは俺だ。だからこそ、俺はお前を止めなければならない」
スウェンは攻撃の合間を伺い、一瞬で懐へと飛び込んだ。
「戻って来い、ラウラ! お前は俺が―――」
フラガラッハを上方へと振り、漆黒のISを斬り裂いた。ピタリと動きを止めたそれはガクリと腕が下がり、アーマーシュナイダーを落とす。一閃された場所からはラウラが静かに開放される。
「たい……ちょう……?」
「ラウラ!!」
弱々しいその声は今にも消えてしまいそうだ。スウェンはラウラを優しく受け止め、抱きかかえる。
/※/
『何故お前は強さを望んだ』
その背中を目指すため。その瞳に私を映してほしかったから……。
『そのように言われるほどの人間ではない』
それでも、貴方は私の恩師であり、私の理想です。
……何故貴方はそこまでの強さを持っておられるのですか?
『俺は強くは無い。ただ―――』
?
『進むべき道を間違えなかったから……かもな』
進むべき道?
『俺は一度間違えた道を歩いた。だが、そんな俺でも正しく、進むべき道を歩いた事によってここまでこれた。だからお前も自分の信じた正しい道を行け。もしお前が道を誤ったとき、俺が正す。俺がお前を―――」
守る
後書き
IS二期始まりましたね。まさかの楯無が斉藤千和さんとは……これは見るしかない!!
次回、保健室にしてラウラとスウェンが……お楽しみに!!
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