とある碧空の暴風族(ストームライダー)
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時宮遭遇
Trick46_は~い☆ ニシオリ君☆
事件から1ヵ月。
常盤台中学は緊急閉鎖された。
生徒たちは自宅待機。あの事件後であればまともに通学できる生徒も少ない。
一部トラウマを受けた者もいた。
生徒がいない1ヵ月、神理楽を中心に襲撃犯についての
調査、そして事件の隠蔽作業が行われた。
常盤台中学を襲撃してきたのは絵鏡キュモール。
財力の世界を支配する、一家の一人だ。
表の世界どころか、全ての分野に知られ知られないように
全力で隠蔽された。
そして閉鎖が解かれたのは8月に入った本日。
急遽に終業式が執り行われた。
閉鎖で臨時休校となっていたが、夏休みに入るのであれば、連絡事項などのために
強制ではない登校指示がこの1日だけ出された。
「あ~、いい天気だ」
そんな常盤台中学の屋上。
未だ警戒体勢にあるこの学校に生徒と教師以外の人間が寛いでいた。
言わずと知れた事件解決の功績者、西折信乃。
登校指示は生徒ではない信乃には適応されていない。
だが、ある人物達に事件の詳細と後始末経過を知らせるために来ていた。
その人物を待ちながら信乃は考える。
なぜ常盤台が襲われたのか、信乃は考える。
第一の事件
表の世界の殺し屋をたかが3人だけで襲ってきた。
平和ボケしている日本の、ヌクヌクと育ったお嬢様を相手にするにしても
弱すぎる。
ここはレベル3以上の超能力者が集まる学校。特に御坂美琴は戦闘向きの
能力。それをたった3人、戦力としては中途半端だ。
第二の事件
絵鏡・・・なんだっけ名前? とりあえずゴミ屑(笑)と仮名しよう。
こちらは戦力を入れ過ぎていた。そして隠密らしい行動は一切ない。
ゴミ屑(汚物)の脛かじりな性格を考えて、自分が騒動を起こしても
絵鏡が隠蔽してくれると考えたからだろうか?
まぁ、ゴミ屑(害虫)のことは一端忘れよう、一生忘れよう。
考えるべき問題はゴミ屑(雑菌)が言っていた言葉。
『常盤台の生徒はその人に出来るだけ無傷で渡す約束なんだ』
≪その人≫は言うまでもない、あいつのことだろう。
ハラザキ
信乃が追い求め、殺すと決めた存在。
血塗れの自分は美雪に絶対に会いに行かないと堅く誓っていた。
その誓いを破り信乃はここにいる。
全てはハラザキを見つけるために。
だが、解せない。
絵鏡が言っているあいつが、本当にハラザキのことだとしたら
何故こんな中途半端なことをした?
あいつは頭は二重の意味でキレている。
異常な考え方を持ち、異常な頭脳を持っている。
だからゴミ屑(人畜)の暴挙を唆した意味が解らない。
学校一つぐらいなら速やかに消す事も出来るはずだ。
不明な点が多すぎる。
本当に何を考えているか分からない、ハラザキ
「ま、あいつについて考えてもしかたないか。
理由なき狂学者 ハラザキだからな」
ここで信乃は考えるのを放棄した。
考えるのやめたタイミングで突然、屋上の扉が勢い良く開かれた。
「たのもー!」
元気な声とともに妹が乱入してきたのだった。
「ん~・・おいしいのはおいしいけど、いつもと比べるとね・・・
手抜きなの、今日の料理?」
多少ではあるが、不満げな顔をしながらサンドイッチを食べる御坂。
サンドイッチは信乃が作って持ってきた昼食。
御坂との約束で作った料理だ。
「逆に聞き返します。午後から授業がある状態でお腹いっぱい食べて
単純な頭を持っている御坂さんが睡魔に襲われないと思いますか?」
「まぁ、確かに自信はないけど。って何気に単純頭って馬鹿にしてるよね?」
「わたくしとしては助かってますの。
お泊り会と同じように暴食しては堪りませんもの」
「あの、白井さん! 西折様の手料理を食べた事があるんですか!?」
「はい、一度ですが。
ですが湾内さん、信乃さんの本気料理を食べるには覚悟が必要ですの。
女のプライドを捨てる覚悟が」
「あら、わたくしの舌を満足させられますのかしら?
こんなサンドイッチ、せいぜいうちの専属シェフと同じ程度ですのよ」
「あの、婚后さん。それは誉め言葉ではないのでしょうか・・・・」
「わ、私は素直においしいと思います」
「湾内さん、ありがとうございます。
泡浮さんも婚后さんのフォローをしなくてもいいですよ。
また料理に文句を言うようでしたら、食材の大切さを説教しますから」
「ひぃ!?」
「いや、冗談ですからそこまで恐がらなくても・・・」
事件解決に関わり、信乃から報告を聞くために来た2人、御坂と白井。
白井が信乃に会いに行くと聞きつけてついてきた湾内。
湾内の友人として一緒に来た泡浮。
そしてなぜいるの全く理由のわからない婚后。
信乃を合わせて6人。
信乃お手製サンドイッチ(本気じゃないバージョン)を仲良く食べていた。
御坂と白井以外の3人が来たのは信乃としては意味不明だが、
3人の性格を考えると無理に追い返すのは諦めた。
幸い、サンドイッチは御坂の暴食を考慮して合計7人前を作ってある。
信乃は黙って料理を5人に勧め、事件報告は後回しにした。
「信乃にーちゃ「にーちゃん言うな」 ・・・信乃“様”の!」
「言い直し方がムカつきます。昼ごはん取り上げていいですか?」
「ごめん! ちゃんと言います! だから許して!」
「相変わらず信乃さんのご飯となるのお姉様は取り乱しますのね。
気持ちは痛いほどわかりますが。
ん~、おいしいですわ」
「で、信乃さんの家に泊ることになった時にご飯を御馳走して貰ったの。
分かった? 湾内さん、泡浮さん、婚后さん」
「み、御坂様!? 男性のお部屋にお泊りをされたのですか!?」
「「は、破廉恥ですわ!!」」
「3人とも落ち着いてください。
信じるかどうかはお任せしますが、私は御坂さんも白井さんも
そういった対象として見ていません。何もありませんでしたよ。
ほら、1ヵ月ほど前の大雨を覚えていますか?
2人は雨に影響で学生寮に帰ることができなかったのです。
それで仕方なく私の家に泊ることになりました。
もちろん寮監の方にも許可をもらってます。」
「そ、そうだったのですか」
「勘違いして申し訳ありません」
素直に謝るのは湾内と泡浮。
「例え仕方がない状況だったとしても、結婚もしていない男女が
同じ部屋に寝泊まりするなんてことはあまり良くありませんのよ」
扇で顔を隠しているが、耳が赤くなっているのが見える婚后。
どうやら後輩2人よりも、更に大人な状況を想像していたらしい。
「心配いらないわよ、婚后さん。
信乃にーちゃんはそういった事は安心できるし」
「そうですの、風紀委員にも所属していますし問題なんて起こしませんわ」
「ま、まぁお二人がそうおっしゃるのでしたら・・・」
「信じてもらえたようで何よりです」
「あ、信乃にーちゃん。
そういえば、“アレ”の後始末はどうなったの?」
「普通に報告しようと考えていたんですけど、無関係な人が3人もいる
この場では言う事ができませんよ」
「あ、そっか」
納得する御坂。
そして信乃と御坂の視線は白井へと向く。
無関係な3人を連れてきた原因、白井は眼を泳がせた。
「もしかしてアレとは、1ヵ月前の事件のことかしら?」
濁した言葉に勘づいたのは婚后光子。
普段の彼女は勘のいい方ではないが、今回はその勘がうまく働いたようだ。
「事件のことでしたら、わたくしも知る義務がありますわ。
何と言っても! 常盤台のエースとなる存在ですから!!」
「(ボソ)つまり現時点ではエースではない自覚があるんですね」
「何か言いまして、西折さん?」
「別にただの戯言です。気にしないでください。
それよりも、不思議に思ったんですが婚后さんは事件の時に何をしていたんですか?
御坂さんと同じ2年ですから、同じ階にいたはずですけど
救助に向かった宗像さんからは報告を受けてませんよ?」
「う!?
そ、それは・・・]
「実は婚后さん、その時は1週間以上も前からご病気で床に伏せられていたんです」
「インフルエンザでしたので無理して学校に行くことも禁止されていたんですよ。
かなり病状がひどかったと、寮監の方から窺ってましたけど
元気そうでなによりです」
「ま、まぁわたくしほどの天才で魅力的な人間ですと
病気も寄ってきてしまうのも仕方がないかもしれませんわ!」
「へー、今は元気そうでよかったわね」
「まったく、病気を機に性格も治ったら丁度良いのに・・・
ですが婚后さんでも風邪をひくなんて驚きですの」
「あら、白井さんそれはどういう意味ですの!?」
「そうですよ、白井さん。婚后さんの馬〇(こせい)を否定するなんてだめですよ。
それにインフルエンザは病気ですが風邪ではありません。
ですから婚后さんは≪〇鹿は風邪引かない≫の伝説の対象外です」
「さすが信乃さん。全くもってその通りですの」
「ちょっと! それはどういう意味ですの!!」
「こ、婚后さん!」「落ち着いてください」
婚后をなだめる1年生2人。
その横では風紀委員コンビが悪どい顔で笑い合っていた。
「うわ~性格悪いわねー」
ヒッソリと御坂は呟いたが、それを聞きとれたのは隣にいる信乃だけであった。
「でも、こんなことを言わないと切り抜けられない状況だったんですよ(ヒソ)
どっかの誰かが不用意なことを言ったせいで3人まで巻き込むのは勘弁して欲しいです」
「・・・ごめん」
未だ興奮している婚后と抑えている湾内、泡浮の3人に聞こえない声で
信乃達は話した。
「さて、お昼休みもそろそろ終わります。そろそろ教室に戻った方がいいですよ」
「あら、もうそんなお時間ですの?」
「御坂さん、お願いしたいことがあるので少し残ってもらえますか?
ついでに白井さんも」
「うん、いいよ。
それじゃ、湾内さん、婚后さん、泡浮さん、また機会があったら
ご飯を一緒に食べようね」
「は、はい! それでは私達はこれで」
1名は不満そうな顔をしていたが3人は扉をくぐり校舎内へと入って行った。
「無関係な人を連れてきた白井と
無関係な人の前で話を始めようとした御坂がいましたが
今から事件の簡単な報告をしたいと思います」
信乃の切りだしに二人は目を泳がせたが信乃は気にせず話を続けた。
敵が軍隊レベルの力で攻め込んできたこと。
その理由は一人のゴミ屑(廃棄物)が一人の女性を襲うためにした過大攻撃。
他の生徒はどこかの誰かに引き渡す予定であり、生徒全員を襲ったのは
それが理由だったこと。
表の人間にだして構わない情報を掻い摘んで信乃は説明していった。
「襲撃させた張本人、ゴミクーズさんにはうちのボスの氏神クロムさんから
罰を与えてもらっています。
罰の内容に不満に思うかもしれませんが、不足に思う事はないでしょう」
「ちょ、え、待って! なによ不満に思って不足じゃない罰って!!?」
「おそらくは私達にとってはヤリ過ぎで不満と思うかもしれないという意味でしょう。
お姉様も落ちつてください」
「それは不満じゃなくて不安って言うのよ!!!」
「おお、琴ちゃんがナイスなツッコミを。兄として嬉しいよ」
「うるさーーい!」
「それと信号無視した運転手には社会的に消えてもらいました。
あ、私は今はまだ手出ししてませんよ。滅ったのはつーちゃんです」
「私達の全く知らないところで知らない理由で人が1人葬られている!?
何それ恐い!!
しかも信乃にーちゃんは≪今はまだ≫って結局は殺るつもりなの!?」
後半は報告と言うよりも談笑といった雰囲気になってしまった。
「報告は以上です。詳細については現在、神理楽が調査中。
2人に言えるの内容は今のところこれぐらいですね」
「わかったわ」「ありがとうございますの」
「ところで御坂さん、佐天さんの容体、入院時はどうでした?
今は退院したと聞いてますけど、お見舞いに私は行けなかったので」
事件の日、佐天は体を酷使してカエル医者の病院で入院していた。
信乃も怪我で家から出られなかった(美雪の軟禁とも言う)ため、
佐天の病状は氏神、美雪からの情報でしか知らない。
「重症ではなかったけど、なんか体中の関節が痛いって言ってた」
「まぁ、全身にエアークッションを作って走れば当然ですね。
むしろ入院程度で済んで良かったです」
「全身にエアークッション? A・T(エア・トレック)の技ですの?
信乃さん、佐天さんに危ない技を教えていますの?」
「YESであり、NOですね。
エアークッションについてはA・Tの技ですが、私は教えていません。
あの境地に辿り着くとは佐天さんの才能は半端ないですね」
「じゃあ、佐天さんは自分で考えて・・・・」
「より正確にいえば自分で感じて、でしょうね。
今度、佐天さんのご先祖でも調べてみようかな?
苗字が『南』か『野山野』だったりしたら面白いのに」
「なんで信乃さんが佐天さんのお母様の元の苗字を知ってらっしゃいますの?」
「「は?」」
「いえ、ですから佐天さんのお母様は『南』だったと聞いてますが・・・」
「・・・・現実は小説よりも奇なり」
以前、佐天と白井、初春で遊んできた時に、彼女の電話に親戚から連絡があった。
そのときに白井と初春が一緒にいた為、話の流れで母方の姓が『南』だという事を偶然知った。
「えー、それじゃ佐天さんって先祖還り?
最低でも100年は過ぎてますよ? 孫? 曾孫? 嫌だね~天才って」
「信乃にーちゃん、さっきから何言ってるのよ」
「才能のない人間の愚痴です」
「才能がないって・・・信乃にーちゃんが言っても説得力無いよ」
「ですわね」
「本当だぞ。君ほどニシオリの遺伝力の強いのも珍しんだゾ☆」
「「え!?」」
3人以外は誰もいないはずの屋上。
御坂でもない、白井でもない、ましてや先程立ち去った3人の声でもない少女の声が
会話に割り込んできた。
「あなたは人心支配だけが得意かと思っていましたけど、
2人が全く気付かない程に気配を隠す事も出来るんですね。
食蜂さん」
「そういうニシオリ君には気付かれていたみたいねぇ」
御坂達はすぐに後ろを振り向いた。
そして対象の人物を確認した瞬間、顔を歪めた。
≪ゲッ!≫といった効果音つくような顔で。
そこにいたのは常盤台中学3年生。
長身痩躯に腰まで伸びる綺麗な金髪。
レース入りの純白の手袋とハイソックス。
優雅なたち振る舞いは≪女王≫を連想させる。
学園都市に7人しかいないレベル5の一人。
精神系の最高能力者
心理掌握が立っていた。
「な、なんであんたがここにいるのよ!!」
顔見知り(知り合いと言えるほど仲は良くない)の御坂はすぐに反応して
噛みつくように彼女に叫んだ。
「まぁ別に常盤台は私の庭だしぃ、どこにいても私の自由力に問題はないというカ~☆
そんなことはどうでもいいわねぇ。
は~い☆ ニシオリ君☆
一応初めましてということにして自己紹介しておくわ。
私が食蜂 操祈(みさき)よ」
「こちらも初めましてと返します。私の方はご存じかと思いますが同じく自己紹介を。
神理楽高校1年13組、西折 信乃です。
常盤台中学の校舎修理を行っています。
出来れば、その発音の≪ニシオリ≫はやめて下さい」
「いいじゃない、私とあなたとの仲じゃないの☆」
「ちょ! 信乃にーちゃん、この女と知り合い!?」
驚きと不快感を混ぜた様な顔で御坂は信乃と食蜂の顔を交互に見た。
「今、お互いに初対面だと言ったはずですが?」
「それじゃなんで仲よさそうなのよ!? それになんか初めましての言い方が形だけっぽい!」
「やっぱり~、2人の運命力かナ☆」
「本当に・・・つーちゃんといい、友さんといい、食蜂さんといい、
何で機関の人間は話を聞かないんですかね」
信乃は呆れたように溜息をついた。
「あ! あんた! 今の話、聞いていたの!?」
御坂は気付いたように叫んだ。常盤台中学の襲撃事件は一応は内緒ということにしている。
信乃が話していたのはは一般人には聞かれてはいけない内容だ。
「バッチリ☆」
「「・・・・(汗)」」
「大丈夫ですよ。
元々、食蜂さんには報告する予定でしたから」
「「え!?」」
聞かれたことに気まずそうに沈黙していた2人を信乃が意外な言葉を出した。
「信乃にーちゃん、それってどういうこと?」
「残念ながら、これ以上は御坂さん達には教えられません」
「そうよ、私達2人だけの ヒ・ミ・ツ☆」
「・・・・食蜂さん。誤解を招くような言い方はやめてもらえませんか?」
「恥ずかしがること無いんだゾ☆」
「・・・・・。
はい、これが事件時のレポートです。
もし疑わしいと思う内容がありましたら、つーちゃんに裏付けをしてください」
「わかったわ。というよりも確認するまでもな感じねェ」
パラパラと資料をめくりながら食蜂は資料の正確さに驚いたというよりは呆れたように呟いた。
「食蜂、なんであんた、事件の日に学校にいなかったのよ。
あんたがいたら、もう少し被害が少なかったはずよ!!」
「ざんね~ん☆ わたし、あなたと違って暇じゃないのよねぇ。
その日も機関から呼び出されて学校休んでいたのよぉ」
「機関?」
御坂の疑問を無視して資料を読み進め、そしてめくる手を止めた。
「見事ね。あなたの凡人な見た目力に反して解析力はすごいわぁ」
「お褒め頂き恐縮です。
しかしその見た目力と同じで私は凡人ですよ。
人の技をバクり、劣化コピーするしかできない、そんな人間です」
信乃には珍しく、本当に、本当に寂しそうに呟いた。
「はぁ~、これが友様と水様が迎え入れようとしているニシオリ?
能力はあっても精神に問題ありねぇ。
いっそ私の改竄力でどうにかしようかしら?」
不意に、食蜂は持ち歩いてるカバンからリモコンを取り出した。
このリモコンこそ彼女の能力において引金となる道具。
武器を取り出したのと同等の意味があった。
「あんた! 信乃にーちゃんになにするつもりよ!!?」
「そんなことしましたらただじゃおきませんことよ」
食蜂の一言に御坂、白井がすぐに臨戦態勢に入った。
心理掌握・ 食蜂 操祈
彼女の能力は人の心を支配にある。
以前、御坂が常盤台の新人と多人数が仲良くなっているのを聞いて警告しに御坂に自らの能力を見せた。
図書館にいる30人以上の人間を、一度に、同時に、操作、さらには御坂と言い争いをしていた数秒の出来事を忘れさせる記憶改竄を心身操作の解除と同時にやってのけた。
御坂は認めたくないが、彼女の能力を十得ナイフのようだと思っていた。
その能力を使われれば信乃と言えど、ただでは済まない。
一発触発の状況だったが、先に矛先を引いたのは食蜂だった。
「な~んてね☆ そんな簡単に奪えるものならとっくに奪っているわヨ。
呪い名 (まじないな)を相手にしているくらいだから私の精神攻撃、
対策されているでショ?」
両手を軽く上にあげ、≪降参≫を可愛くしたようなポーズでおどけながら言った。
「でも、本人が精神を強くして欲しいっていうならやってあげてもいいゾ☆」
「遠慮します。
能力にかこつけて、精神を蜂に食い千限られたくないですから」
「・・・アハ☆」
なにか意味ありげな信乃の言葉、そして意味ありげな食蜂の笑顔。
お互い視線をぶつけある。
「資料は覚えたから処分しておいてねぇ」
「了解しました、女王様」
「それと最後に一言。
あなたの能力は本当に認められるものよぉ。
≪財力≫、≪政治力≫はもちちろん≪表の世界≫だって認められている。
≪マルチエージェント≫なんて良い響きじゃない☆」
「・・・・・昔に呼ばれていただけですよ。それに私は先輩たちのおまけでしかないです」
「もう、素直じゃないんだから。
いいこと? ボーヤ。
人の優れたところを修得するのは"パクる"とは言わないのよ。
それは≪学ぶ≫と言うの」
最後は優雅さ、というよりは凜とした佇まいで言った。
資料を投げ渡して食蜂は立ち去って行った。
しばらく女王蜂が過ぎ去った後、重たい沈黙が流れた。
「前も思ったけど、あいつって本当に中学生?」
「・・・琴ちゃんはスレンダーなだけだから気にしすぎないでね」
御坂の視線が、食蜂の胸元に、メロンなサイズのアレに向けられていた事を信乃は気付いていた。
「そういうことじゃないわよ!
人が気にしていることを躊躇なく言うな!!」
シリアスな空気が一瞬にして消え去ったのだった。
つづく
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