SAOのペットな彼女?
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デスゲーム
第五話*
今となっては遠い記憶。さくら荘メンバーは、アインクラッド第3層でのとあるクエストを受け、攻略ギルド«さくら荘»の結成に成功した。
メンバー・龍之介は、千人きりのベータテスターの内の1人だった。
キャラクターネームは«ドラゴン»。龍之介は嫌がっていたのだが、«ドラゴン»にしないと女装写真バラまいちゃうぞ! と美咲に脅され、仕方なくそれにしたのだ。ソラタがそのことを思い出して、ふ、と小さく笑い声をもらすと、案の定マシロが無表情で
「空太、怖いわ」
と言ってきたので、
「怖くて悪かったな、わざわざ言われなくても解ってるよ!」
とソラタは返した。
元ベータテスターは基本的に意味嫌われている。情報を独占し、己の強化ばかりを重視する、ズルい人達。そのイメージが強かったのだ。
最初こそ«さくら荘»のメンバーとして、ソラタ達と共に行動していたドラゴンだったのだが──。
龍之介のゲームの上手さはVR空間でも同様だったようで、それにベータ時代での知識が加わり、剣士ドラゴンはアインクラッドにおいてほぼ最強と言っていい強さを持つようになった。
そしてある日、«反ベータテスター派»のプレイヤーに言われたのだ。
お前の強さは本当の強さなんかじゃない。お前はただのビーターだ、と。
ビーターとは、«ベータテスター»に、ズルをする«チーター»を掛け合わせた、ソードアート・オンライン独自の蔑称である。
気にすることないよ、とナナミが励ました。が、その夜ドラゴンは、ギルド«さくら荘»を抜ける、と言い出した。
お前たちは足手まといなんだ、そう言って。
しかしソラタ達には解っていた。ビーターである自分が一緒にいると、さくら荘メンバーのイメージダウンに繋がる、そう思ったのだろう、と。
不器用な龍之介ならやりかねないことだ。
「これでも喰らえッ! ばーん! ぱりーん!」
ミサキがお気に入りのスキル«トリニティ・アーツ»を繰り出し、モンスターの身を四散させる。
「……ミサキ先輩がいれば、私たち要らないね」
ナナミがどこか残念そうに呟く。ソラタは苦笑いして返す。
「まぁ、宇宙人だからな……」
「美咲は可愛いわ」
とマシロの透明な声。
「あと……」
マシロはナナミの後方を指差す。
「七海、危ないわ」
ナナミは振り返った。その顔が瞬時に青ざめる。
すぐ後ろで、モンスターがナナミに斧を振り下ろそうとしていたのだ。
今いるフロア──最前線の迷宮では、ほんの少しの油断が命取りとなる。それはわかっていたはずなのに。
ナナミのヒットポイントは既に尽きかけている。そこで、最前線のモンスターの攻撃など喰らおうものなら──。
「いや……っ!」
ナナミの、耳をつんざくような悲鳴と、無慈悲な破砕音が鳴り響くのは、ほぼ同時だった。
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