占術師速水丈太郎 白衣の悪魔
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
30部分:第三十章
第三十章
「今夜は」
「是非共」
沙耶香が述べる。
「お任せ下さい」
「それでは警部」
速水が締めるようにして述べてきた。
「また明日の朝に」
「御会いしましょう」
「はい。それでは」
警部も二人の言葉を受けて挨拶をする。
「今から」
「少し行って来ます」
こうして二人はそのまま本部を後にして何処かへと向かった。二人が向かったのは雪祭りの会場であった。雪に飾られた場所において二人は静かに足を進めていたのだ。
「さて」
速水は足を進めながら声をあげてきた。彼等の左右には城やアニメの様々なキャラクターの雪像がある。それ等が夜の闇の中に朧に浮かび上がっていたのであった。それはまるで何処か幻想のようなものであった。そして夜の闇の中でも雪は静かに降っていた。
「そろそろですね」
「そうね」
沙耶香が彼に応える。
「来るわね、この妖気」
「ええ。それでは」
「あっ、やっぱりここだったんだ」
ここで前から声がしてきた。
「僕の出入り口、やっぱりここしかなかったんだ」
「来られましたね」
「駄目だよ、こんなことしたら」
声は速水に応えてきた。
「おかげで行き来した居場所にすぐに行けなくなるじゃない。酷いなあ」
「そう心配することはないわ」
沙耶香が声に対して言ってきた。
「貴方だったらすぐに行けるわよね」
「まあね」76
二人の目の前に黒い穴が開いた。声はそこから聞こえていた。
「けれどさ、不便だし」
魔人が姿を現わしてきた。そのうえで二人に言うのだった。
「また作り直さないといけないのがちょっとね」
「そうするのには条件があるけれど」
沙耶香が言ってきた。
「条件!?」
「そうよ。それは」
「私達を倒すこと」
速水も言う。
「わかるわね。つまり」
「ここで私達が相手をします」
「ああ、そうなんだ」
魔人は完全に穴から出て来た。そうして闇の中に白い姿を現わして述べるのであった。
「遊んでくれるんだ」
「まあ遊びと言えばそうね」
沙耶香が彼の言葉に応える。目が冷徹に黒く澄んでいた。
「ただし。それは命を賭けたものよ」
「それでも。宜しいでしょうか」
速水が彼に問うてきた。
「それでよければ私達が」
「ふうん、また遊んでくれるんだ」
「ええ、そうよ」
沙耶香は妖しく笑って答えてきた。
「では。いいわね」
「うん、僕はいいよ」
後ろの洞窟が消えた。魔人は悠然と立って述べてきた。
「じゃあ。はじめるんだね」
「はい」
速水が答える。
「それでは。いいですね」
「容赦はしないわよ」
二人は身構えてきた。すぐに戦闘態勢に入る。
「いいじゃない」
しかし魔人はそんな彼女を前にしても相変わらずの様子であった。
「そうこなくっちゃ。けれど二人でもさ」
「おっと」
だが速水は右手を前に出してその言葉を制止してきた。
「それから先は仰らなくてもいいです」
「ああ、そうなんだ」
魔人はその言葉を聞いて笑って返す。
「じゃあそれでいいや。けれどね」
ゆっくりと前に出る。一歩ごとに殺気と妖気が発されその場を圧する。
「遊ぶのも本気にやるよ」
「そうね。遊ぶのも真面目にするべきなのよ」
沙耶香は彼に応えてきた。
「そうじゃないと面白くはないから」
「そうだよね。じゃあ行くよ」
「ええ」
「どうぞ」
二人はまたそれぞれの身体を分けてきた。影から、カードから。幾人もの沙耶香と速水が姿を現わしてきたのであった。あの時と同じように。
ページ上へ戻る