神器持ちの魔法使い
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
始まり
第04話 直々にお願いという依頼だとさ
ライザーによって眷属達へと秋人の過去が明らかにされているのと同時刻。
秋人とレイヴェルはロイドの待つ客間へと向かっていた。
「お父様からの頼み事とはいったいなんなのでしょう?」
「さあ? 客間ってことはロイドさん以外もいるってことだろう。多分その誰かがロイドさんを通して俺達へ頼み事をするんだろ」
「ですわね」
「……着いたな」
客間の扉の前で一度身嗜みを整え扉をノックした。
「来ヶ谷秋人とレイヴェル・フェニックスです」
「ああ、待っていたよ入って来てくれ」
「失礼します」「失礼いたしますわ」
ロイドさんから返事が返ってくるとドアノブに手をかけた。
客間に入るとそこにはロイドさんの他に紅髪の男性とそれに控える銀髪のメイド服の女性がいた。
「ルシファーさま!? グレイフィアさま!?」
現・魔王『ルシファー』ことサーゼクス・ルシファーとその『女王』のグレイフィア・ルキフグスだった。
予想外の人物に驚きあわてて頭を下げたレイヴェル。
同じように驚きながらも頭を下げた。
「ははは、そんなに畏まらないでくれ。今はプライベートだよ」
そう言われ、促されるままに対面の椅子に座る。
「……では、サーゼクスさまにグレイフィアさま、お久しぶりです」
「ああ、久しぶりだね、秋人君、レイヴェル君」
「元気そうでなによりです、秋人さま、レイヴェルさま」
「あ、ありがとうございます!」
いまだ緊張気味のレイヴェルに変わって話を進める。
「……それで、ご用件はなんです? ロイドさんを通しての頼み事ということなのでしょ?」
「気付いていたのかい?」
「まあ。とはいえ、お二人が来ているとは予想外でしたが」
「そうかね。いやはや、やはり秋人君は優秀ですねフェニックス卿」
「そうでしょう。なんせあの二人の子ですから」
「コホン、ルシファーさま、フェニックス卿、そろそろ本題に方に」
笑いあう二人の会話が毎度のごとく家族自慢に発展しそうになったのを察してか、グレイフィアさまが促した。
「おっと、そうだね。―――では本題にいこう」
先ほどまでとは違い、真面目さを取り戻した。
「二人にはとある子の話し相手になってほしいんだよ」
「話し相手、ですの?」
「それなら妹さんやその眷属の面々もいるでしょうし……なぜ俺達に?」
もっともな問いに少し困った表情を見せるサーゼクスさま。
「……お二人は数か月前に起こった主殺しの事件をご存知でしょうか」
「もちろん知ってますわ。仙術を扱うことのできる元猫魈の眷属が暴走して主を殺してはぐれ悪魔になったという……確かはぐれになったのは黒歌という名前でしたはずですよね?」
「ええ、その通りです。実はその黒歌には妹がいました」
「……もしかして、先ほど言っていた子というのは」
「ああ、そうだ。黒歌君の妹である白音君だ」
レイヴェルは息をのみ、俺は驚きもせずに言葉を待った。
「上層部の者達が主を殺した黒歌君の責任を白音君に押し付け殺そうとしてね、見過ごせなくなって保護をしたんだ。今はリアスの眷属となってもらってるんだが……周囲の者から暴言や暴力を受けたせいか心を閉ざしてしまってね」
ここまで話を聞いて秋人は理解した。
胸の内にイライラが募り、それは自然と口から出た。
「……ふざけんなよ。姉がはぐれになったから妹を殺す? っざけんな! そんな理不尽あっていいわけないだろ!!」
「あ、秋人さま……?」
他者の勝手な理由で殺されてしまった自分と似たところを感じてしまったのか怒りを顕わにした。
(もしや秋人さまは彼女と自分を重ねているのでは……? でしたら私は……)
「……すみません、黒歌さんが主を殺した原因はなんです?」
「先程もあったように仙術の暴走によって自我を失ったことが原因であると」
「それ、ホントですか?」
「と、いいますと?」
「他の理由……例えば、黒歌さんが主を殺さなければならないほどの理由があったとか」
「……ふむ」
「彼女は猫魈と呼ばれるだけあって仙術を使うことに長けていた。仙術による暴走は絶対ないとは言いませんが……」
確証はないとはいえ、言いたいことは言った。
それからいったん離れ、元の話に戻る。
特段、これといって断る理由がない。
それに何か予感めいたものがあるし……
「黒歌さんの件は置いて、白音ちゃんのことなんですけどOKですよ。来ヶ谷秋人は今回の件、引き受けさせてもらいます」
「そうか、ありがとう。レイヴェル君もいいのかい?」
「もちろんですわ」
良い返事を聞けて満足げなサーゼクスさま。
「それで、君たちは何を望むんだい?」
そう言うサーゼクスさまに対価を求めた。
「まあ、対価っていうより俺の方からもお願いなんですけど」
「構わないよ。私に出来ることなら言ってみなさい」
「お仕事で忙しいうえに、魔王が一事件へ必要以上に干渉するのはアレなんですが、黒歌さんの事件について独自に再調査してはもらえませんか?」
「ふむ……。いいだろう。それについては私も疑問に思っていたところだ。グレイフィア」
「わかりました」
「ありがとうございます」
サーゼクスさまは次にレイヴェルを見る。
しかし、すぐには思いつかないようで、後日改めて伝えるということでこの話は終了した。
◇―――――――――◆
秋人とレイヴェルが退席した後、三人は室内に残っていた。
「フェニックス卿、今回はありがとうございました」
「いえ、こちらこそルシファーさまのお力になれて光栄です」
ロイドから言葉をもらったが、顔を少し曇らせた。
「……今回の件、秋人君には申し訳なかったでしょうか」
「わかりません。あの子は聡い子ですから半ば自身のことを利用されたことに気付いていたでしょう。ですが、それでもあの子は自分で決断を下した。もし気に病むのであれば、あの子の望んだことに手を抜かないでいただきたい」
「そう、ですね」
反省し、胸の内に留めると話題を変えた。
「やはり秋人君はあの二人の息子だ。リアスの支えになってほしいと改めて思いましたよ」
「ははは、秋人君がいなくなるとレイヴェルに一生恨まれますからあげませんよ」
「ほうほう。ということは……」
「ええ。ですがなかなかいい返事がもらえない。どうやら今の関係が一番心地よいみたいでね」
「もうひと押し足りないと」
「レイヴェルももう少し積極的にならねば寝取られてしまうというのに。これからライバルは増えていくでしょうからな」
気付けば親族自慢に発展していく二人を呆れた様子でため息を吐くグレイフィア。
シスコンに親馬鹿。
自慢話が続く最中、サーザクスがグレモリーとしてとあることを持ち出した。
妹やその眷属の将来を思う愛としてそれを提案し、同意を得た。
それは数年間水面下で調整され、誰にも知られずにいることになる。
そんな旦那の姿にグレイフィアはただただ呆れることしかできなかった。
ページ上へ戻る