占術師速水丈太郎 白衣の悪魔
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17部分:第十七章
第十七章
「それでは」
「このカードを」
沙耶香の影が沙耶香自身になりそうしてそれは何人もの沙耶香になる。速水は恋人のカードを出す。そこから何人もの速水が現われてきた。
「あれ、何人もいたんだ」
「これもまた術です」
そう速水のうちの一人が答えてきた。
「魔術だよね」
「はい。さあ、これはどうでしょうか」
「うん、やっぱり楽しいよ」
速水の声にまた笑う。
「そういうやり方があったんだ」
「そうよ。さあ、貴方はどうするのかしら」
「僕?」
沙耶香の言葉に声を出す。既にススス、と前に出てきていた。
「僕はこのままだよ」
「そう、別に分かれたりはしないのね」
「うん」
前に出る。まるで疾風のような速さだ。
「だって。必要ないから」
「必要がない!?」
「だって。そうじゃない」
速水に対しても述べる。
「そんなことしなくても僕は楽しめるし」
「そう。ではこの私達を倒せるかしら」
沙耶香はそれぞれの口で言う。
「果たして」
「うん、簡単だね」
若者はそのまま進む。そうしてその爪で引き裂いてきた。まるで獣のようである。
しかし彼は空を切ってしまった。彼は沙耶香の影を攻撃しただけであった。
「あれっ、外れか」
「残念だったわね」
沙耶香の中の一人が言ってきた。彼が外したのを見て笑っていた。
「それは本当の私ではないわ」
「面白いね。それじゃあ」
右にいてカードを切ろうとする速水に攻撃を仕掛ける。その左手で彼の右腕を掴んで思いきり引き千切る。しかし引き千切ったと思えばそれは雲散霧消してしまっていた。
「また」
「私もまた一人ではありません」
速水達は笑ってこう述べる。
「その証拠に。さあ」
カードを一斉に投げる。それは今度は寸分違わず青年を撃った。炎が起こりそれでダメージを与えていた。
「実体でなくとも攻撃は効くのですよ」
「痛いよ、何か」
「痛いのもまた道理」
速水は笑って述べる。
「この術はそうしたものですから」
「ふうん。じゃあ貴方達は二人でも何人でもいるんだ」
「そういうことよ」
沙耶香はその右手に黒い炎を漂わせてきた。それは無論一人の沙耶香だけでなくほかの沙耶香達も同じであった。それぞれの手から黒い炎の球を放ってきた。
「さあ、これはどうかしら」
「うん、楽しくて仕方がなくなってきたよ」
何発かはその手でまた引き裂いてきた。爪を遮二無二振って黒い炎を引き裂く。そうして引き裂いたが何発かは外してしまった。それが身体を撃つが彼はそれでも平気な顔で立っていた。
「そう、この感じなんだよ」
身体の所々を燃やされながら笑っていた。痛みですら快感であるように。
「こうじゃないと。楽しくないんだよ」
「本当に戦いが好きなのね」
「戦い!?これは戦いじゃないよ」
笑って沙耶香に答える。
「これは遊びじゃない。楽しい遊びなんだよ」
「楽しんでいるというわけですか」
「うん。だから貴方達ももっと」
速水にも答えている。かなりのダメージを受けていて白衣も乱れてきているがその中で狂気じみた笑みを浮かべてきていたのである。それはまさに魔人の顔であった。
「楽しんで。もっともっと僕を気持ちよくさせてよ」
「これはまた」
「面白い趣味の持ち主ね」
速水と沙耶香はそんな若者の声を聞いて呟く。それはまさに魔人そのものであった。そう、彼は魔人であった。今それがはっきりとわかったのである。
「さあ、来て」
また二人に声をかける。
「まだ遊び足りないから。さあ」
「それでは」
速水達はそれを受けて切り札を出そうとする。左半分の目の部分から黄金色の光が溢れだす。
「見せて差し上げましょう、私の奥の手を」
「んっ!?左目!?」
魔人はそれを見て言う。
「まさか左目に何かが」
「そのまさかです」
速水は答えながら左の光を強くさせていく。沙耶香もその横でそれぞれの目を光らせていく。すると速水も沙耶香もそれぞれの身体を消していく。一つになってきていた。
「一人になったんだ」
「はい、それではいいですか」
「何かあまり面白くなくなったかな」
ここで急に様子を変えてきた。
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