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SAO─戦士達の物語

作者:鳩麦
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キャリバー編
  百三十話 器の剣

 
前書き
はい!どうもです!!

てわけで今回でキャリバー編は終了です!

では、どうぞ!

 

 
「さて、と……これからどうすっかねぇ……」
「うーん……キリト達、大丈夫かな?」
少し考え込んでから、心配そうな顔でサチが言った。リョウは肩をすくめながら答える。

「平気じゃね?元々エクスキャリバーを抜くのが目的で、抜いた瞬間ああなったんだ。っつーことは……」
「落ちるのは、クエスト上で予定されてた……って事?」
言うと、リョウはコクリと頷く。

「多分な。カーディナルってのは質悪ぃけど、RPGの大前提くれぇはちゃんと押さえてくるシステムだ。流石にクリア出来ねぇクエストは作りゃしねぇだろうよ」
苦笑しながら言ったリョウに軽く微笑んで、サチは頷いた。

「……うん。そうだね……でも……」
言いながらサチの表情が困ったような物に変わって行く。

「それならそうと……本当に、どうしよっか?これから」
とりあえずアスナやキリトには無事な旨をメッセージで伝えてある。彼等も無事ならその内連絡が有るだろうが、今はまだ無い。

「歩いてヨツンヘイム越え……は流石に怠いしなぁ……いくら平和っぽくなったっつっても」
言いながらリョウは大の字で若葉の芽吹く草むらの上に寝転ぶと、溜め息をつきながらのんびりした口調で目を閉じて言った。

「いっそのこと、此処で一眠りでもすっかぁ?」
「ふふふ……そしたら寝落ちしちゃうよ?」
冗談めかしたリョウの言葉にサチは微笑むと、彼の隣に座り込んで風の流れる穏やかな平原を眺める。
本当に、穏やかな景色だ。
リアルは冬の寒さも厳しくなって来たが、今の此処は先程まで極寒地獄だったのが嘘だったかのように暖かい。

リョウが昼寝をしようかと聞くのも、この暖かさでは仕方ないと言うものだ。

『このまま、本当に寝ちゃっても良いかなぁ……』
そんな事を考えて、自然と頭がウトウトと船を漕ぎ始める。
と、そんな中で、不意にリョウの声がサチの耳に響いた。

「サチ、ちょいと気をつけろ」
「ふぁ?」
「寝ぼけんなよ……何か来る。ほれ、stand up」
「ん、うん……」
隣で両の立ち上がる気配がして、サチもそれに習うように立ち上がる。
リョウは空を睨むようにして少しの間硬直していたが、やがて一点を睨んで声を上げた。

「おろ?ありゃぁ……」
「え?あ……」
不意に、リョウが声を上げて、その方向をサチが見る。と、理由はすぐに知れた。明るくなった天井の方から、自分達の方へとゆっくり迫って来る二つのシルエット。初めはただの黒い点だったそれは、近づくにつれて巨大な二匹の生き物だと分かる。

象のような顔をした水母と、三つの頭を持った虎……

「ふるぅぅぅぅぅぅ~~~~~ん!!」
「グォォォォォオオオオオオオオオ!!」
「っはは、どうやら無事だったらしいな」
「うんっ!よかった……!」
自分達の方がよっぽど無事をあやぶまれていたくせをして、二人はそんな事を言って笑い合う。

「お~い!兄貴~!無事か~!?」
「おーう」
「サチ~、大丈夫~!?」
「うん!大丈夫~!」
ゆっくりと降下してくる巨大な水母と虎の上で此方に手を振るメンバーに向けて、リョウとサチは大きく手を振り返した。

────

「へぇ、クラインの努力も偶には身を結ぶ訳だな?」
「偶にはたぁなんだリョウテメェ!」
「いや、実際たまにすら実を結ばないだろ」
「う、ぅぅうるせぇ!!」
キリトのツッコミに反論出来ないクラインにその場に居る全員が朗らかに笑う。
あれから数時間。リョウとキリト、それぞれのパーティは、御徒町にある、エギルの「ダイシー・カフェ」に来ていた。
どうやらリョウ達と別れた後、ウルズ達から大量の報酬を受け取ったらしいキリト達と、「この後忘年会でもどうか」と言う話になったので、ALOかあるいはリアルでかと一瞬議論になった。ALOでやると、AIであるユイは100パー参加出来るのだが、しかし年末年始アスナは結城の本家に出掛けるらしいので、今回を逃すとキリトとアスナは暫くは会えない。
彼等の出来た娘は其処をちゃんと分かって居るらしく、気を利かせて「リアルでやりましょう!」と言ってくれたので、結果的には此処、ダイシー・カフェでの忘年会となったのである。

「でもさ、アンタ本当にソロソロ相手見つけないと、真面目に人生ソロプレイする羽目になるんじゃない?」
「まぁ、実際年齢的にねぇ」
「ぐはぁっ……!」
リズとアウィンによる言葉の矢が胸に突き刺さったらしいクラインが、血を吐いて倒れた(無論冗談だが)其処に更に追い討ちをかけるようにリョウが言う。

「ちなみにユイ坊、クラインが結婚出来る確立どんぐらいだ?」
「えっと、現時点では……」
「やめろぉ!真面目に計算すんじゃねぇぇ!」
リョウの問いに素直に答えようとしたユイの声をクラインが騒ぎ立てて遮る。
因みに今のユイの声は、キリトの隣にあるスピーカーから発されたものだ。メカトロニクス・コースを専攻しているキリトが現在学校で開発している、「視聴覚双方向通信プローブ」の端末、市販のウェブカメラを改造したものを部屋の数カ所に設置していて、現在VR空間に居るユイの周りには3D化したこの部屋の状態が展開されている。
リョウ達には見えないが、ユイにしてみると、いま彼女はカフェの中を自由に跳び回っていると言う感覚の筈だ。
ちなみに、リョウがプログラミングを手伝ったため、問題があった画質や動作精度はかなり高い。
まぁとはいっても、こんなものを使うのは今の所想定としてユイくらいの物なのだが。

さて、そんな事を話していると、エギルが見事な照りの付いた店の名物でもあるスペアリブを山盛りにして持ってくる。
予約していた訳でもないにも関わらず、短時間できっちり料理と飲み物を用意してくれた辺り、流石にプロである。

そんな店主に全員で拍手を送ると、中央に置かれたそれを囲むようにエギル自身も座って、各々ノンアルコールの物と本物、其々用意されたシャンパンの注がれたグラスを持ち上げ、促されてキリトが音頭をとった。

「えー、コホン。それじゃあ、皆さん、祝!《聖剣エクスキャリバー》と、ついでに《雷鎚ミョルニル》ゲット!でもって、お疲れ、二〇二五年!──乾杯!!」
「「「「「「「「「「「「「「乾ぱ~い!!!!」」」」」」」」」」」」」」
全員の威勢の良い声と共に、宴の合図となるグラスが鳴らされた。

────

「いやぁ、うますぎるわ。プロすぎるわ」
「それにしたってお兄ちゃん、食べ過ぎだとおもうんだけど……」
腹を膨らました涼人がポンっ、ポンっ。とお腹を叩きながら言うのを、呆れたような視線で見ながら詩乃が言った。

「料理人の腕が無いとこうは照り付かないんだぜ?」
「エギル、レシピって教えてくれたり……」
「ん?おう、サチにはこないだレシピ提供してもらった借りが有るからな。後で教えてやるよ。他言は無用で頼むぜ?」
「わぁ……!ありがとう!」
「良いって事よ」
料理人二人がそんな事を話しているのを見ていると、明日奈がほわんと笑いながら涼人に言って来る。

「良かったねリョウ、これで何時でもこのスペアリブ食べられるよ?」
「ん?あぁ、そだな。万々歳だ!」
心底嬉しそうに言う涼人に微笑みかけつつ、明日奈は今度は小声で言った。

「サチってホント、リョウのお嫁さんみたいだよね~」
「っはは。バカ言え」
「……もう!」
「おわっ!!」
笑いながら流した涼人に、明日奈がぽかぽかと手を振るいだす。

「いででっ!いてぇって!何だよ!殴んな、いてっ!」
何故殴られているのか分からない涼人は必死にそれらを防ごうとするが、どうやらご立腹らしい明日奈はそのままぽかぽかと涼人を殴り続けている。
結局、和人が苦笑しながら明日奈と画面の向こうで同じ動作をしていたユイをなだめるまで、涼人は殴られまくったのだった。

さて、そんな事をしている内に、一時間半程も経つと、流石に沢山あった御馳走も無くなる。ある程度の食い物を片づけ、各々お茶を飲みつつ一息ついて居ると、ふと、詩乃が何となしに言った。

「……そう言えば、さ……どうして、《エクスキャリバー》なの?」
「……?どうしてって、どう言う事?」
詩乃の問いに、美雨が聞いた。どうでも良いが此奴は相変わらずリアルに戻って来ると話し方が大人しいな。と涼人はフムン。と溜息をつく。

「普通は……ッて言うか、他の小説とかマンガで出るのって大抵《カリバー》じゃない?《エクスカリバー》」
「あ~、そう言えばそうかもね。何処かの女の子アーサー王の絶対勝てる剣も、カリバーって読んでたし」
「へぇ、美雨読んだ事有るの?結構古いマンガなのに」
「えへへ~、好きだったからね~。ゲームもやったよ」
「おーい、話が流れてないか?てか何の話だよ」
「運命と騎士の話だろ」
和人の言葉に涼人が突っ込むが、どうやら分かって居ないらしく首を傾げる。仕方ないので後で教えてやるとしよう。それはともかく……

「シノンさんもその手の小説とか、読むんですか?」
直葉もそう言った小説が好きなので、目を輝かせている。そんな視線にてれたように詩乃は笑った。

「中学のころは殆ど図書館の主みたいな物だったから。アーサー王伝説系の本も幾つか読んだけど、多分訳は全部《カリバー》だったと思う」
「けど、そう言うのって大体、幾つか読み方有るんじゃない?」
「はいです!」
里香の言葉に答えたのは、恐らくはネットの情報をあさったのだろうユイだ。

「主な所では、《カレドヴルフ》《カリブルヌス》《カリボール》《コルブランド》《カリバーン》、《エスカリボール》等が有るようです」
「そ、其処まで多いとは思わなかったわね……」
言った本人である里香も流石に引き気味だ。

「でも、しーちゃんどうして突然そんな事?」
美幸の問いに、詩乃は紅茶を飲んでいた手を止める。

「うん?えっと、大した事じゃないんだけどね……《キャリバー》っていうと、私には別の意味に聞こえるから、ちょっと気になって」
「?」
言いたい事が分からず、首を傾げる美幸の左前で、苦笑しながら杏奈が言った。

「あぁ、成程。そう言えばシノンは《50キャリバー》使いだったわね」
「そう言う事。まぁそれを言うと……」
言いながら、詩乃は涼人の方を見る。

「この人も《フィフキャル》使いなんだけどね」
「ん?」
ノンアルコールのシャンパン(別に本物でも良いが幼馴染が絶対に煩いので)をちびちびやっていた青年がとぼけるように首を傾げてニヤリと笑う。

「?どう言う事?」
しかしそう言った用語等使われても相変わらず美幸には意味が分からない。一部、明日奈や和人たちも同様で、首を傾げているので、再び苦笑して詩乃は口を開く。

「銃の口径の事を、英語で《キャリバー》って言うの。例えば、私のへカートⅡは50口径だから《フィフティ・キャリバー》。エクスキャリバーとつづりは違うと思うけどね」
ちなみに、エクスカリバーの綴りは《Excalibur》。口径を意味するキャリバーの綴りは《caliber》である。
尚どちらかと言うと、カリバーとキャリバーは言語圏による発音の違いによるものであると言えよう。

と、詩乃は続けて、ちらりと和人を見ながら言った。

「……あとは、其処から転じて、《人の器》って意味もある。《a man of high caliber》とか」
「《器のデカイ人間》、《能力の高い人間》ってか、そう考えたらなんだ、試されてるみてぇだな。なぁキリト?」
「う……」
からかうように言って笑う涼人に和人が怯む。
其処に差し込むように、里香がニヤニヤと笑いながら言った。

「そうね~、エクスキャリバーの持ち主はでっかい器が無いと駄目って事だもんね~……そう言えば、何か噂で、最近何処かの誰かさんが短期のアルバイトえどーんとカ性だって聞いたんだけどぉ……」
「ぐ……」
更に唸る和人。
確かに総務省の菊岡から、《死銃事件》の調査協力費がつい昨日振り込まれたばかりだが、しかし既にそれをあてにユイの据え置き機のパワーアップ用パーツを色々と、直葉のナノカーボン竹刀等を発注したばかりで、既に残高は寂しい事に……

……しかし、ここで引いてしまってはそれこそ器が問われると言う物だ。

と、言う訳で、去勢混じりにどーんと胸を叩いて、和人は宣言した。

「お、おう!勿論此処の支払いは任せろって初めから言うつもりだったぞ」
言うが早いが、全員から盛大な拍手と、クラインの口笛が響いた。

「(っはは、デカくでたなぁ、大丈夫かよ?)」
声援に答え終えた和人に、小さな声で涼人が聞くと、和人は苦笑しながら答えた。

「(正直キツイです。けど、今回のはやっぱみんなのお陰で手に入れられたんだし、さ。それに……)」
「(?)」
「(もし俺が今までの世界で何か人の器なんてものに何か学んだとしたら……それって、《一人じゃ何も背負えない》って事だと思うんだ)」
「(……ほう?)」
「(今までも、今回も、多分これからも、俺は兄貴やアスナ、皆に助けられて、何とか絶対に落としちゃいけない物だけは背負って歩けてる……だから、ちょっとしたお礼も兼ねて。ってわけ)」
照れくさそうに言った和人に、涼人は驚いたような顔をする。

「(?何だよ)」
「(……成程、いつまでもガキでもねぇか)」
「(あのなぁ……そりゃガキだったかもだけど……)」
「(っはは、冗談だ。そうか……全員で手ぇつないで、円になって……)」
「(あぁ。その内径が、きっと俺の……皆の《キャリバー》だ…………だからさ、兄貴)」
嬉しそうな声で言って、不意に和人は少し真剣身のある声で言った。

「(もし兄貴が背負ってる物が有るなら……俺にも、ちゃんと分けてくれよ?)」
「(……!)」
テーブルの向こうのメンバーを微笑みながら眺めていた涼人は、驚いたように目を見開いた。

「(……あぁ、そうだな)」
一瞬その表情で固まってから、不意に、涼人は眼を閉じて微笑む。

「(……ありがとよ)」
「(……おう)」
そうして涼人と和人はシャンパングラスを手に持つ。
どちらからともなく、再び乾杯。

「そいじゃ、気分が良いから今日の払いは半分俺が持ってやるよ」
「え!?マジで!!?」
「おう。弟がデカイ事言うようになった祝いだ」
「うおぉぉぉぉぉ……!!」
本気で嬉しそうに空いてる手ででガッツポーズをした和人に笑って、涼人は再びシャンパンを煽った。

Act 4 《友の集う世界》 完
 
 

 
後書き
はい!いかがでしたか!?

と言うわけでキャリバー編はさらっと始まってさらっと終わりましたw

ただそんな中にも今後への重要な伏線をいくつか仕込んだので、覚えておいていただければ幸いですw
さて、それではこのまま一気にMR編!と行きたいところなのですが、此処で少し長めに休暇をいただきたいなと思っております。

実は文化祭に向けて一作品オリジナルを書かなければいけなかったり、ちょいとSAOの方にも色々と企んでおりましてw
なのでMR編に入るのは遅くて11月ごろになるかな。と思っています。
もし楽しみにして下さって居る方がいらっしゃったのなら、申し訳ありません。

尚、これを持ってダンジョン募集の方を締め切らせていただきます。
募集して下さった皆様、ほんとうにありがとうございました!!

当選者の方にはMR編始まってからかその前に僕からの相談メッセが飛ぶかもしれません……その時はうっとおしいでしょうがお付き合いいただければ幸いです。

ではっ!


所で9月30日はアスナさんの誕生日だったそうでwウチのキリトはちゃんとプレゼント渡したかな?

リ「渡したみてぇだぞ?さっきやけに緊張した感じで家出てったし」

あ、そうw

 
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