ゲルググSEED DESTINY
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第四十八話 世界を変えるもの
「トダカ准将―――戦線を後退させた事で一時的にではありますが戦線は右方を中心に持ち直せたようです」
「敵部隊、さらに未確認のMSと交戦。これで四か所目です」
国防本部では次々と入って来る情報を元に戦線を維持し続ける。タケミカヅチが右方の中心戦力として展開させることで被害を最小限に抑えながら戦線を維持することが出来た。
「未確認MSか……例の蒼い機体以外の機体の正体は依然として分からないのだな?」
「はい、試験機であるリゼル以外の情報は入っておらず……」
試験機運用の為にジャンク屋を通して造られているリゼル以外はデータに存在せず、またリゼルもどこの所属なのかをはっきりとさせていない。
「何にせよ、戦線を立て直すのに協力してくれたのは確かだが、向こうが所属をハッキリとさせない限りはこちらとしても無暗に手助けするわけにはいかない。防衛戦線を維持して後方に引き下がらせていた部隊と入れ替える。前線部隊の補給を急がせるんだ」
ユウナがそう指示を出した事で彼らを未確認として扱うことに決定する。トダカとしても声明も出していないような相手を信用するわけにはいかず、その指示に従い、部隊を動かす。
「各艦隊は第三波のミサイルを発射させよ。前線のMS部隊を下がらせ補給を順次に行う。タケミカヅチも一旦下げるぞ。タケミカヅチも補給場所として使うんだ!」
元々タケミカヅチは空母であり、航空戦を継続的に行う為に補給が可能な軍艦だ。故にタケミカヅチを前に出しすぎれば狙われるし、補給も追いつかなくなる。その為、一度下がらせて前線補給基地として使わせようとする。
「敵水中部隊が戦線を突破してきました!このままでは―――!?」
「狼狽えるな!後方のM1を出せ。迎撃させるんだ!突破してきた敵のMSの数は決して多くないぞ!」
彼らは国を守るために今も必死に戦い続けていた。
◇
海上の一角でリゲルグとストライクフリーダムもまた互いに戦闘を続けていた。ビームが交差しあい、連続して放たれる攻撃によってお互いが致命傷を受けることのない千日手の状態だった。
『宇宙でしか使用できないドラグーンなんかじゃ、デッドウェイトになるだけだろう?』
「あの機体のパイロット―――こっちの機体特性を把握してるっていうのか!」
移動しながら攻撃を次々と回避するリゲルグ。その動きは明らかにフリーダムの特性を理解して動いている。もとより単純な実力ではクラウはキラに敵わない。いかに技量があろうとも、所詮彼はオールドタイプであり、施されている武装も通常の武装と何ら変わりない。
だが、それでも彼は簡単に落とされない。彼の優位―――それは、彼が技術者であり、相手の武装が何の目的で、どのような意図をもって取り付けられているのかを理解しているからだ。機動を読み、武装の攻撃タイミングを理解し、どのような動作をするのか予めシミュレートする。それによってどのような動作をするのか完全に読み切るのだ。
『しかし、何で邪魔するのかな?君達が介入しなければ、あっさりとロゴスの二人を捕らえることも出来ただろうに』
「戦いによって勝ち取られた世界は、また新しい戦いを呼んでしまうんだ。デュランダル議長の平和への道のりは、次の争いを呼ぶことになってしまう!」
サーベルを互いのシールドで受け止め、接触回線でクラウがつぶやいた言葉が届き、キラは反論する。
『ならどういう平和を目指すなら望ましくて、それを実際にどうやって執り行うっていうんだい?まさか独裁による恐怖政治をしようってわけでもないんだろう?』
「それは……ッ!」
『ハッキリとした答えを出せない時点で君たちの主張は意味をなさないよ。有史以来、人類が争いを止めた時代なんてものはないんだ。それなら、今を守るために平和を目指そうとすることがいけないことだとでもいう気なのかい?』
ぶつかっては言葉を紡ぎ、互いの主張を押し通す。リゲルグの放ったミサイルをフリーダムは両腕にもったライフルで迎撃する。
「そんなことはない!人は、いつか争いを止めることだって出来るはずだ!」
『そうやって、出来もしないことを叫んでどれほどの時が過ぎたんだい?そんな事、ラウ・ル・クルーゼにも言われただろうに!』
「!?何で、君は彼のことを知って……ッ!?」
ラウ・ル・クルーゼ―――二年前の戦いでキラが討った敵。憎しみを世界に広げ、人類を裁こうとした大罪人。その時にした会話を何故知っているのか?
『知っているさ、傍観者を気取るつもりはないけどね―――君の事も知っているよ、キラ・ヤマト君―――最高のコーディネーター!』
リゲルグは距離を上手く取り続ける。近づきすぎず、かと言って距離を置き過ぎず、常に格闘戦と射撃戦、両方を選べるような位置を取っていた。
「君は一体、何だっていうんだ!?」
『クラウ・ハーケン―――ただの一技術者に過ぎない、程度の知れた人間さッ!!』
フリーダムが射撃戦に移行しようとしたその瞬間を狙い、逆に接近戦を仕掛ける。後ろに下がる機動と前に出る機動―――どちらが速いかは言うまでもない。連結しているビームサーベルを回転させ、前に突き出していたビームライフルを切り裂く。だが、切り裂く直前にビームが放たれ、リゲルグの肩を翳めた。
流石に格が違う―――そう呟くクラウは憎々しげな表情を浮かべながらも戦闘を続ける。クラウ・ハーケンの実力はキラ・ヤマトに届くことはありえない。スーパーコーディネーターという極限まで才能を弄られた彼に勝てる人間など、最早別の方向で進化を遂げる人間でしかありえないのだ。
ラウ・ル・クルーゼの現身であるレイ・ザ・バレルでは不可能。未だSEEDの因子しか持ち得ていないアスラン・ザラでも無理だろう。無論、今も戦い続けるSEEDでもNTでもないクラウ・ハーケンでは勝つことなど、とてもではないが無理な話なのだ。
『けれど、このオーブ戦において君の存在は邪魔なんでね。足止めさせてもらう!』
◇
三機のドムに損傷を与えつつも、自身の機体もシールドを失い、多少なりとも機体に損傷がある状況で、アレックは左手にビームライフル、もう一方の右手にビーム・ソードを構える。
『ヘルベルト、マーズ!あの白いのにもう一度ジェットストリームアタックを仕掛けるよ!』
『今度はしっかりと落とさせてもらうぜ』
『生憎、落とさないってわけにはいかないんでね』
三機がアレックを警戒しながらも体勢を立て直して構える。アレックは武人としてのミスター・ジェントルとしての誇りからか、そこを付け狙う様な真似はしない。そして、縦列に並び、再び三機は構えて突撃する。
「来いッ!」
『『『ジェットストリームアタック!!』』』
縦に並び、突撃する戦い方。初見殺しではあるだろう。艦隊戦ならば圧倒できるかもしれない。そして、正面からの防御手段であるビームシールドとスクリーミングニンバスは非常に優秀だ。だが―――
「それゆえに、貴様ら三機の連携は崩れ去った時ほど脆いものはないぞ!」
攻撃が届く直前にブーストを全開にして横に移動するアレックのガルバルディα。すぐさま向きを変えようとするが、向きを変えたことによって横一列に並ぶように姿が見える。
『なッ、しまった!?』
「容赦はせん!」
ヘルベルトのドムに向かってビームを放つ。ビームシールドをぎりぎりで展開させたが、そうやって止まった隙を狙い、そのままアレックは突撃してビーム・ソードで貫いた。
『ウオァァァ―――!?』
『ヘルベルトォッ!?』
ヘルベルトのドムが爆発する。ガルバルディαはそのまま下がりつつビームライフルで牽制した。二機のドムはやってくれたなとばかりに反撃するが、三機の連携が無くなった為、あっさりと攻撃を躱していく。
しかし、ヒルダ、マーズ共にどちらが勝者なのかははっきりと理解していたのだろう。そのまま射撃を続けるだけで、後退しつつあった。
◇
「それで、目的地は月のアルザッヘル基地ですか?」
シャトルに乗り込んだブルーノ・アズラエルとその護衛は発進準備を進めていた。ヘブンズベースと同じで囮の脱出用の移動手段を幾つか用意している。とはいえ囮といっても人が乗らないわけではない。そちらの方には準備させていたNダガーNなどといったロゴスの一部の部隊を乗せているのだ。
「いいや、目的地はダイダロス基地だ。そこに用意されたレクイエムを使う」
レクイエム―――ジブリールが用意していた最後の切り札。戦術級の切り札ならば例の緑の高機動MAや蒼い機体などがあるが、戦略級の戦況を一瞬で変えるための兵器はこれが最後だ。だが、アズラエルの忠言によって、中継ステーションと偽って着々と用意されていたもう一つの兵器があった。
「コロニーレーザーか……どの程度役に立つかは知らんが、レクイエムと同様の事が出来るならば、十分に戦略価値はある。悪いが私は死ぬわけにはいかんのでな……シャトルを発射させろ!」
アズラエルがそう指示を出してシャトルの発進準備を整え始める。それと同時に残りのロゴスに従う連合メンバーに通信が行き渡り、用意された移動手段を一斉に出撃させるよう指示する。
セイラン保有のシャトル、モルゲンレーテの飛行機、連合の用意した船や潜水艦、そういった様々な脱出手段を用意することで相手にどれが本命なのかを悟らせないようにする。ヘブンズベースでも使った単純で有効的な策。さらに言えば、今回は連合のメンバーを脱出させるための移動手段でもあり、故にロゴスに与し、オーブにまで連れてきた連合の部隊も裏切ろうとするメンバーは少ない。
「見ておれ、デュランダルめ……私が宇宙へ上がった時が貴様の最後だ」
そう言って、アズラエルの乗るシャトルが動き出す。シャトルは宇宙へと向かって動き出した。戦場は宇宙へと移り変わる事となる。
◇
「これは……!グラディス艦長!」
『ええ、分かっているわ。こちらでも確認しました』
艦の護衛についていたアスランがシャトルの発進に目を向ける。
「ルナマリア、フォースシルエットの準備を。俺は先に行って叩く。ショーン、艦の護衛は任せるぞ」
『分かりました。逃がさないで下さいよ』
そうしてセイバーをMAへと変形させ、そのままシャトルに向かう。おそらくはあのシャトルがロゴスの二人が乗っている脱出艇。
「どうあっても逃げ切るつもりか!」
そうしてシャトルに近づき始めるとウィンダムや105ダガーが現れ、シャトルの脱出させようとセイバーを止めにかかる。
「邪魔をするなッ!お前たちも、こんなことをして何になるのか分からないわけじゃないだろう!」
『青き清浄なる世界の為に!』
MA状態のままでビームブレードを展開して突破を図る。収束ビーム砲でルート上に居た敵を追い払い、ビームライフルで背面のジェットストライカーを撃ち抜く。そして、回転させながら移動することによってセイバーの前に出てきた敵を切り裂いた。速度を緩めないままに突破し続けるアスラン。ついにシャトルを捉える。
「こちらはザフト軍特務隊フェイス所属のアスラン・ザラだ。現在貴方がたのシャトルを既に射程に収めている。着艦し、投降しろ!しないのならば、ここで討つ事になるぞ」
『ザフトが何を偉そうに!投降したところでロゴス勢に処刑以外の道など残されていないだろう!?』
シャトルの操縦をしていたパイロットがそう答えを返してきた。確かに、処刑は免れないだろう。アスランとてそれが分かっていないわけではない。だが、僅かでも可能性があればと思い呼びかけたのだ。
「そうか、止む得ない。悪いが撃墜させてもらう」
そう言って狙いを定め、ビームを放つ。シャトルはそのまま狙いを違わず貫かれる結果となった。
「これで――――――」
終わったのかと、そう呟こうとした瞬間、通信が開く。
『アスランさん、大変です!そのシャトルは囮です!?』
「何ッ!?」
映像に次々と発進していくシャトルや飛行機、船などが映される。どれにロゴスの二人が乗っているかなど、これでは分かるはずもない。
「各員、脱出する敵を撃墜しろ!一機も逃すな!」
アスランは指示を回し、自身もMA形態となって、また一つ飛行機を撃ち落とす。しかし、本命がどれなのか、全く分からない。脱出を援護しているウィンダムや105ダガーも万遍なく広がっているせいで護衛の数で特定というのも無理だ。
「不味いッ!?」
数が多すぎるあまり、一機、また一機と逃し始める。ザフトも少しでも多く迎撃しようと必死になるが、オーブ軍に背を向けるわけにもいかず、対応しきれない。
「クソッ!」
やられたと、完全にこちらの落ち度だとばかりにアスランはパネルを殴りつけた。
後書き
クラウの奴、ついに自分で脇役だって宣言しやがった(笑)これはもうある意味クラウのポジションなんだと思っておこう(笑)
そしてヘルベルト死亡。今更ながらに思ったんだが、ヘルベルトの方を諏訪部ボイスにした方が個人的には良いなって思う。理由は彼の姓なんですけどね(笑)
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