プリテンダー千雨
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修学旅行編
第七話
修学旅行。それは学校生活における最大のイベントの一つだ。麻帆良学園の修学旅行はクラスごとに好きな行き先を決める事が出来る。因みに、うちのクラスの行き先は京都になった。他の選択肢にハワイとかもあったんだが、先生やマクダウェルみたいな外国人が多いクラスだし、ある意味当然か。
そして放課後。私は修学旅行に必要な物を買い揃えていた。
「ええと、まだ買って無いのは・・・」
私は必要な物をリストアップしたメモを見ながらチェックをする。その時・・・
「あれ?千雨じゃないか?」
後ろから声を掛けられた。そこに居たのは二人の少年だった。一人は日本人だが、もう一人は褐色肌の外国人である。見た所東南アジアあたりの出身のようだ。声をかけてきたのは日本人の方の少年である。
「何だ秀太か。」
こいつは“剛秀太”。麻帆良学園の男子中学に通っていて、簡単に言えば私の幼馴染だ。父さんの働いている天文台の所長の息子で、それだけの繋がりだ。
「何だって。その反応は無いだろ?」
「・・・お前と一緒に過ごした小学生時代にいい思い出は無いからな。」
認識阻害のせいで孤立してしまった小学校時代。最初のうちは秀太も私の味方をしてくれてたけど、次第に数に負けて私から離れて行った。
「・・・あの時は悪かったよ。」
「今更謝って何になるんだ。」
私はこいつを赦す積もりは無い。あの時裏切られた悲しみは、忘れる事なんて出来ないからな。
「なあ、二人とも何かギスギスしてるけど。昔何かあったのか?」
そんな中、秀太と一緒に居る外国人が勝手に話に入って来た。
「秀太、こいつは?」
「あ!ごめん忘れてた。こいつは留学生のキャブ。こう見えて南の島の王子様なんだ。」
「こう見えてってどう言う意味だよシュウタ!!」
王子様?こいつがか?これならまだうちのクラスの連中が噂してたネギ先生王子様説の方がまだ信じられるぞ。
「なんだよ。信じて無いのか?」
すると、キャブが文句を言ってきた。どうやら顔に出てたらしい。
「でもさ、キャブって王子様の癖に今ネットアイドルにはまってるんだぜ。」
「別にいいだろ!それくらい!!」
突然の秀太の暴露にキャブが反論する。にしてもネットアイドルか・・・ちょっと聞いてみるか。
「で、誰のファン何だ?」
「もちろん、人気No.1の“チウ”さ。」
やけにあっさりと答えたな・・・って、えええええええええ!!?こいつ私のファンかよ!?いや、落ち着け私!普段の私はチウモードの時とは大分雰囲気が違うし、メイクもして無いから多分バレ無いハズだ!!!
「あれ?急に目を逸らして、どうしたんだ?」
「な、何でも無い!」
秀太が聞いてくるが、私は必死に誤魔化す。
「でさ、お前らは何でこんな所に来たんだ?」
「何でって、修学旅行の準備だけど。」
「そ、そうか!奇遇だな!!で、行き先は?」
何とか話を変える事に成功した。だが、秀太の口からは思わぬ言葉が飛び出した。
「京都だよ。今年はキャブみたいな留学生が多いからそうなったんだ。」
「・・・そうか。」
「で、千雨の方は何処に行くんだ?」
「お前らと同じ京都だよ。」
「えっ!本当か!!偶然だな!!!」
キャブの奴が騒いでいるが、私と秀太は沈黙していた。
「そっか・・・向こうでも会えるといいな。」
「私はそうは思わないよ。」
秀太にそう告げると、私はこの場から去って行った。
《ホークSide》
天文台での仕事を終えて、自宅に帰ってきた私の元になんと学園長と千雨の前の担任“タカミチ・T・高畑”先生がやって来た。とりあえず、居間に通してお茶を出す。
確か、学園長は麻帆良の魔法使いのトップのハズだ。何故ここに?とりあえず、当たり障りの無い質問から始めよう。
「あの、千雨が何か問題を起こしてしまったのでしょうか?」
「フォッフォッフォ。そう言う訳では無いよ。娘さんは別に何の問題も起こしておらん。」
「では何故ここに足を運んだのですか?」
「ふむ。それは“魔法”関係じゃよ。」
やはりそれか。
「私と千雨の正体はご存知で?」
「ああ。エヴァから聞いておる?」
エヴァ?ああ、エヴァンジェリンの事か。
「で、どのようなご用件ですか?」
「君達親子にワシらと手を結んでもらいたいのじゃよ。」
やはりそう来たか。
「何もワシの下に着けとは言わん。ただ、麻帆良にそのデストロンやクインテッサの脅威が近付いたら力を貸して欲しいんじゃ。もちろん、報酬はちゃんと出す。」
意外とこちらにとって有利な条件を出してきたな。何か裏があるのか?だが、実質麻帆良を支配している彼とは仲良くしておいた方がいいか・・・
「分かりました。ですが報酬は要りません。同盟と言う形でいかがでしょうか?」
「別に構わんが、二人だけで同盟とは・・・」
「いえ、私たち親子以外にも三人のサイバトロンプリテンダーがこの地球に居ます。皆、海外に住んでいますが。」
「何と!?君ら以外にもおったのか!?」
どうやらこの事は知らないらしいな。まあ、エヴァンジェリンに話した記憶は無いからな。
「分かった。麻帆良は君らサイバトロンプリテンダー五人と同盟を結ぶ事にしよう。」
こうして、我々サイバトロンと麻帆良の間に同盟が結ばれた。では、“あれ”の件を早く済ませないといけないな。
《千雨Side》
修学旅行前日。私は父さんに呼び出されてロボットモードで麻帆良にある山の中に来ていた。
「確か、指定されていた座標はここだったハズだけど・・・」
「やあ、千雨。」
すると、いきなり後ろから声を掛けられた。振り返ってみると、そこにはロボットモードの父さんが立っていた。
「何だ父さんか。おどかすなよ。」
「いやあ、すまない。ちょっとした出来事でね。」
「それより、こんな所に呼んだ理由は?」
「着いて来れば分かるさ。」
そう言われて、私は父さんの後ろを着いて山の中を歩いて行く。すると、大きな岩の前まで来た。今の私たちの身長くらいあるから相当デカい。
「この岩がどうかしたのか?」
「見ていれば分かるさ。」
そう言って父さんは岩に向かって直進した。するとなんと、父さんは岩をすり抜けたのである。
「な、何だこりゃ!?」
「カモフラージュ用のホログラムだよ。」
私が驚いていると、今の向こうから父さんの声がした。一体向こう側はどうなってんだ?私は覚悟を決めて岩のホログラムを通り抜けた。すると、そこにあったのは・・・何ともSFチックな光景だった。金属で出来た壁にあちこちに置かれた機械。そして壁に着いた大型のモニター。
「まさかここって・・・」
「ああ。私たちの“基地”だ。」
どうやら、デストロンやクインテッサとの戦いはこれから本格化して行くらしい。
「ここがモニタールーム。向こうにあるのがリペアルームだ。」
私は父さんに基地の案内をしてもらっていた。
「でも、どうやってこんな基地を用意したんだ?」
あのバカデカいモニターといい、あちこちに置いてある色々な機器といい、そう簡単に用意できる物じゃないハズだ。すると、父さんはこう答える。
「実はこの基地は元も私たちの乗って来た宇宙船でね。それを少し修理しただけなんだ。」
なるほど。つまりここの設備は皆元々備え付けだったって訳か。
「お、千雨ちゃん来たのかい。」
と、その時三体のロボットがこっちへ来た。それぞれ白、赤、黒の装甲の細身のボディを持っている。
「もしかして、ランダーさん達?」
「ああそうさ。」
「これが俺たちの本当の姿だ。」
「改めてよろしく。」
話によれば、白いのがランダーさん、赤いのがフェニックスさん、そして黒いのがダイバーさんだそうだ。それぞれ地雷処理車、ジェット機、潜水艇に変形すると言う。そう言えば、三人の仕事はそれぞれ自動車設計技師、空軍の通信技師、海洋学者だったな。宇宙戦闘機に変形する父さんも天文台で働いているし、皆自分の変形するメカに合わせた仕事に就いているみたいだ。
「にしても、とうとう千雨ちゃんも戦わなきゃいけなくなっちゃったか・・・」
「出来れば、そうであって欲しく無かったな。」
ランダーさんとフェニックスさんが難しい顔をする。すると、ダイバーさんが言った。
「だが仕方ないさ。大きな力を持った者はそれ相応の運命を背負う事になる。」
運命か・・・やっぱり、受け入れるしか無いか。
私がそう考えていると、父さんが言った。
「それより、千雨。明日以降の修学旅行について言っておきたい事がある。」
「え?」
「デストロンの潜伏先を調べるためにスパイ衛星を打ち上げたんだが、ある場所に複数のデストロン反応があった。」
「それって、まさか・・・」
「ああ。3-Aの修学旅行の行き先である京都だ。」
続く
後書き
今回はマスターフォースから秀太とキャブだけが出ましたが、一応ミネルバも聖ウルスラの生徒として出します。
まあ、登場は修学旅行編の後になりますが。
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