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ドラクエⅤ主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?

作者:あさつき
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二部:絶世傾世イケメン美女青年期
  六十一話:オラクルベリーの町で

「服屋だ。服屋を探そう」

 無事にオラクルベリーの町に到着し、何はなくともそれを目指します。
 オラクル屋もモンスターじいさんもその他諸々も、全てはその後ですよ!

 戦闘をこなす中でヘンリーもだいぶ慣れてきた感はあるんですが、ふとした拍子に連れにいちいち「ぽっ……」とされるとか、割とめんどくさい!
 そしてやっぱり、動きにくい!!

 私の気迫に圧されるように、ヘンリーも文句も言わずに着いてきます。


 と、意気込んで町に踏み込んだところで、集中する視線。

 ……見られている!
 完全に、見られている!
 女性もちらほら混じってるが、主に、男性に!

 ニコポどころじゃない、かなり厳しい表情で踏み込んだというのに、なんだこの有り様は!
 もういいよ!「ぽっ……」とか、いいよ、今は!!

 一応、ヘンリーが庇うような感じで前に出てくれますが、そんなんでは全く追いつきません。
 立ちはだかるヘンリーの姿にも怯まず、男共が互いに牽制し合いながら、徐々に包囲網を狭めてきます。

 場数を踏むとか、そういうレベルじゃない!!

「……ヘンリー。ごめん」
「は?なんだ、ごめんて」

 折角、ニコポ耐性を育んでいるところだけど!
 (とど)めを、刺してしまうかもしれない……!!

 と、一応謝罪はして筋は通したということで、ヘンリーの腕にしがみつきます。

 硬直し、みるみる赤くなるヘンリー。

 ……すまん。本当に、すまん。
 城に置き去りにする気満々なのに、こんな時だけ都合良く使ってしまって……!!

 彼氏の存在を見せ付けるかのような私の行動に、男共の顔に失望の色がありありと浮かび、一人また一人と、未練たっぷりに離れて行きます。

 うん、まだ若いから在りし日のパパン程では無いとは言え、ヘンリーもかなり逞しく育ったしね!
 イケメンだしね!
 パッと見、美男美女の、似合いのカップルだよね!!

「……おい」
「ごめん。本当に、ごめん。どうしても嫌なら、やめるけど」

 そしてひとりでダッシュして逃げるけど。
 服屋に偶然たどり着けるまで、ノンストップで走り回るけど。

「嫌とかそういうんじゃ無くてだな……」
「嫌じゃないんだ!いいんだね!じゃ、行こうか!!」

 というわけで、彼氏を引っ張り回す彼女宜しく、ヘンリーの腕をぐいぐいと引っ張って歩き出します。

 本気で拒否されたら強制する権利は無いが、渋々であってもいいと言うのなら、付き合ってもらいますよ!
 必死ですよ、こっちも!!


 ゲームのマップに服屋なんて存在してないので、見当も付かずに散々歩き回って、ようやく服屋にたどり着き。

 店員さんに「ぽっ……」とされるのを生温かい笑みで受け流しながら、やっと!
 念願の、動きやすい、性別不祥な感じの!
 服を、手に入れました!!

「はー、落ち着いた。これで男女どっち付かずな感じで、ナンパもされにくくなるよね!立ち居振舞い次第でどっちにも見えそうだし、使い分ければ!」

 着替えてギャップ萌え要素の消えた私の姿に、ヘンリーがほっとしたような残念なような、微妙な顔をしてますが。
 少なくとも「ぽっ……」とはなってません!
 素晴らしい!!

 女性店員さんの「ぽっ……」は強まった感がありますが、この状態なら余裕を持って受け止められるというものですよ。
 ギラギラした男の集団に囲まれるのと違って、圧迫感が無いし!
 やっぱり、可愛い女性はいいね!

「折角だから、ヘンリーも一着くらい買ってけば?魔法で清潔にできるとは言え、いつも同じ格好ってのもなんだし。戦闘で破れることも、あるかもしれないし」
「そうだな。一着くらいは、買っとくか」
「私も一応、完全に男装する用と、動きやすい女性用も買っとこうかな?買ってもいい?」
「いいんじゃねえか」

 ということで、それぞれ必要なものを選んで、服屋での買い物終了。


 店を出て改めて町に出ると、やっぱり視線は感じるんですが。
 目で追われるくらいで、寄ってきたり、声をかけたりしてくる感じではありませんね!
 良かった、これで日常生活が支障なく送れる!
 一時はどうなることかと思った!

 と、気を抜いた瞬間に、声をかけてくる者が。

「ねえ、君!女の子だよね?すごい、キレイだね!一人?」

 一人ってかヘンリーはいるはずだがって、あれ。
 露店の商人に捕まってる。

 まあ、集団で迫られるので無ければ、試しに話すくらいしてみてもいいか。
 ヘンリーがいたら、話すことすら出来なそうだし。

「連れを、待ってるんだけど」
「君みたいな可愛い娘を、待たせてるの?男?」
「うん」
「そんなヤツ放っといてさ、オレと遊ばない?この町、初めてだよね?色々、案内してあげるよ」

 案内かー。
 さっきの服屋もそうだけど、ゲームのマップだけではわかんないとこあるし。
 地元の人に案内してもらえるのは、助かると言えば助かるんだけど。
 明らかに下心はあるというか、婚活のためにはある程度の下心も持ってもらわないと困るから、そこはひとまずいいとしても。

 一人旅なら試しに着いてって、変な人なら逃げるとかでいいんだけど。
 別に彼氏とかでは無いとは言え、一応は連れであるヘンリーを置いて、ホイホイ着いてくのもなあ。
 二人一緒に案内してくれるということは、無いだろうし。

 と考えていると、脈ありと取ったのか、ナンパ男が馴れ馴れしく肩に手を回してきます。

「ね?行こうよ。オレとのほうが、絶対楽しいって」

 会ったばかりで許可も無く体に触れてくるとか、無いわー。コイツは無い。
 とは言え振り払って事を荒立てるのもなんだし、さてどうするか。

 と、一瞬また考えていると。

「いてっ!いてててて、痛いって!!なんだよ、誰だよ、お前!」

 肩から手が外れ、ナンパ男が悲鳴を上げます。

「コイツの連れだが。お前こそ、誰だ。なんか、用か」

 ヘンリーが、ナンパ男の腕を捻り上げてます。
 こういう時は男に任せたほうがいいとは言え、ちょっとやり過ぎ感もありますが。
 イラッとしてたから、まあいいか。

「お前に用なんか、ねえよ!オレはその娘に、って、痛い痛い痛い!は、離せ!」
「ちょっと、ヘンリー。怪我はさせないでよ」

 回復のために、ソイツに近付くとかイヤだし。

 と、さりげなくヘンリーの腕に手を添えて、親密感をアピールしてみます。

 ヘンリーが手を離し、ナンパ男が慌てて距離を取ります。

「ちっ!気ィ持たせやがって!そうならそうと、言えってんだ!」

 わかりやすい捨て台詞を吐いて、逃げ去るナンパ男。

 うーん、やっぱりナンパで運命の出会いとか、そんな都合のいいことは無いか。
 最初から思っては無かったけど、まあ場数だよね、場数。

「ありがと、ヘンリー」
「いや。離れて悪かった。……気、持たせたのか?」
「案内してくれるって言うからさ。助かることは助かると思って、ちょっと考えてただけ」
「あんなのに、案内させなくても。道くらい歩いてりゃわかるだろ」
「あんなのってわかってたら、頼まないよ」
「それでも肩抱かれるとか、油断し過ぎだろ」
「うーん。そこは、そうだね。でもヘンリー以外の若い男性と、まともに話すのも十年ぶりだし。そのうち、慣れるって」
「慣れる前になんかあったらどうすんだよ」

 なんかって、割と取り返しのつかない何か?

「そこまでは無いって。さすがに」

 力ずくで来るなら、負けないし。
 力で抵抗するほどでもない微妙な線で来られるのが、慣れないと困るだけであって。

「……よく、わかった。行くぞ。色々見る前に、先に宿取ろう」
「うん」

 と、宿を探して歩き出そうとすると、ヘンリーに肩を抱かれました。

「……あの」
「アイツは良くて、俺はダメなのか?」

 いや、アイツも良くは無かったんですが。

「こうしとけば、はぐれないだろ」

 ここまでしなくても、気を付けてればはぐれないと思うんですが。

「嫌なのか?」
「そういうわけじゃ」

 十年馴染んだ安心感のようなものは、あるんですけど。

「なら、いいな。行くぞ」

 さっき同じようなことした手前、やめろとも言い辛い。

 まあ、実際面倒は避けられるだろうし、いいか。
 道行く女性たちのキラキラした視線に、奴隷仲間のお姉様たちのような腐った気配を感じますけれども。
 それはそれで、もういいか。

 と、色々と諦めながら、ひとまず宿を目指して、ヘンリーに引っ張られていく私なのでした。 
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