八条学園怪異譚
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第四十話 開かずの間その六
「それこそ何人も掃除をして何時間もかかる」
「気持ちはわかるが止めた方がいい」
「ここでお掃除をすれば朝になるわね」
愛実は鬼達の話を聞いてから再び倉庫の中を見た、そのうえで言った。
「私一人だと」
「手伝うけれど?」
聖花は愛実の言葉にすぐに応えた。
「二人でする?」
「ううん、二人でもね」
二人で掃除をしてもだった、何十年分もの汚れは。
「かなり時間がかかるわ」
「それこそ何人でやっても何時間もなのね」
「ええ、かかるわね」
とにかく汚れに汚れていた、それではだった。
「これはね」
「とにかく中に入ったら?」
幽霊は掃除の話をする二人に言った。
「この中が泉かも知れないんでしょ」
「そうですね、それじゃあ」
「今から」
「お掃除は正直いいでしょ」
幽霊はこのことはどうでもいいとした。
「どうせすぐに閉めるし」
「あっ、閉めるんですか」
「それもすぐに」
「そうよ、若し開けたままだとね」
「ああ、開かずの間じゃないから」
「だからですね」
「そう、開かずの間のお話を終わらせたいのならともかく」
終わらせたくないのならだというのだ。
「終わらせたくないのならね」
「怪談を終わらせるのはね」
「私達にしても」
そう言われるとだ、二人もだった。
実際のところ怪談を終わらせたくはない、それでこう言ったのだった。
「だったら閉めるべきですね」
「怪談ってないと寂しくなりますから」
あるからこそ話して楽しめる、しかしそれがなければだった。
どうにも面白くない、二人は八条学園の怪談を追い求めている立場から答えた。
「それじゃあ中に入って確かめた後は」
「それで」
「そうか、わかった」
日下部は二人の話を聞いて頷いた。
「それでは鬼の諸君達に閉めてもらおう」
「ああ、その時は任せてくれ」
「すぐに閉める」
二人が確かめたならとだ、赤鬼と青鬼も答える。
「ただ、出て来る時は言ってくれ」
「中に出てから言ってくれ」
そうしてくれというのだ。
「閉じ込めては話にならないからな」
「だからその時はな」
「そうよね、開かずの間になんかずっといたくないし」
「出たらすぐに言うわね」
二人も鬼達に応える、そうしてだった。
今回も二人で中に入った、そうして確かめると。
ここも違った、二人はその埃だらけの倉庫の中を歩き回ってから出て話した。
「次ね」
「そうね、次ね」
顔を見合わせてこう話した、そして鬼達に言った。
「じゃあ悪いけれど」
「閉めてくれるかしら」
「よし、わかった」
「それならな」
鬼達も二人の言葉に頷きそうしてだった。
開かれた扉は今度は強く閉められた、幽霊はその扉を見てこう言った。
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