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とある碧空の暴風族(ストームライダー)

作者:七の名
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常盤台中学襲撃事件
  Trick45_全てを溶かす“情熱”さ




炎の無限の空 (インフィニティ・アトモスフィア)を使っても倒す事が出来ない。

出し惜しみをせず、大技を出すために信乃は頭を切り替えた。

「宗像、黒妻さん、下がって。

 こいつは俺が完全に破壊する」

まだ炎に包まれて動けない≪スティンガー≫。

今のうちに自分以外を下がらせるように信乃は指示を出した。

「信乃! さすがにそれは無理だろ!?

 今だってデカイ炎をぶつけたのに、ほとんど効いてなかったじゃねぇか!!」

平民(くろづま)、下がれ。高貴なる私からも絶対なる命令を出す。

 ニシオリの邪魔はするな』

「だが位置外!!?」

反論する黒妻の肩に、側にいた宗像が手を置いて止めた。

「あいつは無茶をするけど、できないことをやらない男じゃない。

 おれらの族長(リーダー)はそんなやつだろ」

宗像からも止められたが、納得がいかず黒妻は強く歯を噛みしめた。

「なんでだよ・・・お前らの相手が普通の戦いじゃないってことは知ってけど・・

 でも、何でそこまで諦めないで戦えるんだよ!?」

「さぁ? あいつの事なんでどうでもいいからね」

「っ!? なら俺もたたか『無駄だ』」

『その程度の実力で戦う?
 足手纏いになって信乃を道連れに一緒に死ぬの間違いだろ』

「その通りだね」

「おまえら!!」

「黒妻さん、下がってくれ。頼む」

「信乃、1人でどうにかなる戦いじゃないだろ!?

 なら、俺も戦わせてくれ!!」

「ダメだ。

 辛辣な言葉を浴びせるのは心外だけど、状況が状況だから遠慮なく言うぞ。

 自惚れるな たかが数度だけ裏の世界に顔を突っ込んだだけで慣れてんじゃねぇよ

 足手纏いもこの上ねぇんだよ。下がれ、黒妻」

「くっ!」

信乃にまで強く言われた黒妻は、もう黙るしかなかった。。

「もう一度言う、下がってくれ」

「・・・・・ッ、わかったよ」

納得できない顔のまま、黒妻は近くの建物の屋上まで離れて行った。

「信乃、分かってると思うが・・・・」

「大丈夫、生きて帰るよ」

「違う。僕はお前がどうなろうと構わない。

 だがな、まだA・Tでお前を超えていないんだ。勝手に死なれては困る」

「・・・・・はっ! 言ってろ! 永遠に超させるつもりはない!!」

「では別の言葉を言おう。

 無理して怪我すると、西折美雪が泣くぞ。僕がチクるから」

「は!? 言うなよ!? (美雪に)永遠に怒られ続けるぞ俺!!?」

『シリアスなシーンが台無しだな・・・・』

そんな口では馬鹿なことをいっている状態でも信乃は集中力を乱さず、自分の中の扉を開く。

「サンキュ、宗像。リラックスできた」

次に眼を開いたときには、本日二度目の碧眼になっていた。





「信乃の目が・・・・・」

「そういえば黒妻は初めて見るよな」

信乃との漫才が終わり、黒妻の側まで離れた宗像。

離れた位置からでもはっきりと見える(あお)

信乃のシンボルともいえる(あお)

それを見て黒妻は驚いていた。
人間の眼の色が後天的に変わるなど普通はありえない。

ただし、信乃は普通ではない。
裏の世界に生きただけでなく、その血筋も特殊だった。

「あいつは特殊な一族の生まれらしい。

 正確にいえば一族を含めた機関の全員が特殊だ」

「機関? 一族って何が特殊なんだ?」

『先祖代々、“アオ”を体のどこかに持っている』

「体のどこかどころか丸見えだぞ、その(アオ)

「その中でも眼の色が“アオ”なら、かなり能力が高くなるらしいよ」

『さらに言えば、後天変化型の“アオ”はレアだ。

 さすが我がニシオリの次期党首になる男だ。将来が楽しみでしかたない』

「信乃って家柄も良かったのか。  ん? ≪我がニシオリ≫ってどういう意味だ?」

「気にするな黒妻。

 それと位置外、信乃はお前の誘いを断り続けていると聞いたぞ?

 無理して引き込もうとすると信乃に機関を潰されるよ」

『それもまた一興。高貴なる私の玖渚(くなぎさ)機関と、人類最速の請負人。

 “アオ”の一族と碧空(スカイ)の戦いなどゾクゾクする』

「・・・・・いろいろあるんだな。

 でも、信乃(あいつ)信乃(あいつ)だろ。
 人類最速とか色々抜きにして、俺らの仲間が戦うんだ。

 もう俺は手出しをしない・・・・・ゆっくり見守ろうぜ」

『・・・いいだろう』「それもそうだな」

3人は信乃を見守るように注目した。

そして見えた。

信乃の後ろにそびえる炎龍の技影(シャドウ)を。





「それじゃ・・・・・これからだ!!」


炎の道(フレイム・ロード)

  Trick 無限の空 (インフィニティ・アトモスフィア)

      無限の煉獄 (インフィニティ・インフェルノ)



再び≪スティンガー≫を襲う獄炎。

炎の道 (フレイム・ロード)の最高技(ハイエンドトリック)

だが、それは今から放たれる(トリック)の序章でしかない。



炎の道 (フレイム・ロード)

  CHAIN TRICK  - HAND RED ・ GANTRET -



獄炎の周りには100体の分身にして熱の塊。

その全てが≪スティンガー≫へと集約するように飛び込む。

「オラ」「オラ」「オラ」「オラ」「オラ」「オラ」「オラ」「オラ」「オラ」「オラ」
 「オラ」「オラ」「オラ」「オラ」「オラ」「オラ」「オラ」「オラ」「オラ」
  「オラ」「オラ」「オラ」「オラ」「オラ」「オラ」「オラ」「オラ」「オラ」
   「オラ」「オラ」「オラ」「オラ」「オラ」「オラ!」「オラ」「オラ」「オラ」
  「オラ!」「オラ」「オラ」「オラ」「オラ」「オラ」「オラ」「オラ」「オラ」
   「オラ」「オラ!」「オラ」「オラ」「!オラ」「オラ」「オラ!」「オラ」「オラ」
  「オラ」「オラ」「オラ」「オラ!」「オラ」「オラ」「オラ」「オラ」「オラ」
  「オラ!」「オラ」「オラ」「オラ」「オラ」「オラ!」「オラ」「オラ」「オラ」
   「オラ」「オラ」「オラ」「オラ」「オラ!」「オラ!」「オラ!」「オラ」
   「オラ!」「オラ!」「オラ!!」「オラ!」「オラ!」「オラ!!」
 「オラ!!」「オラ!!」「オラ!!」「オラ!!」「オラ!!」「オラ!!!」
   「オラ!」「オラ!!」「オラ!!」「オラ!!!」
         「オラ!!!!!」「オラ!!!!」

     「オラぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁ!! 死ねクソッたれ!!」



炎はさらに燃え上がり、燃え猛る。

『このっ!! こっちが動けない事をいいことに勝手なことしやがって!!』

『だが無駄だ。この≪スティンガー≫はミサイルの直撃も耐えきる』

その炎の中から声が聞こえた。

声にはダメージは感じられない。事実、操縦席の温度は全く変わっていなかった。

「まただ、足りない・・・もっと、もっとだ!!」



  TRICK  - HAND RED ・ GANTRET  ×4(クワトロ)-



際限なく(しの)は突撃し続けて行った。









「すげぇ・・・けど、あいつらには・・・クソッ!!」

遠くからでも信乃の戦いはハッキリと見れた。

信乃の凄まじさも、敵の防御の堅さも。

それを見た黒妻は再び強く噛みしめた。

「まだ続けるか。諦めの悪さはさすがだな」

「なんでだよ、なんでここまでできるんだよ・・・

 俺達は学生だぞ? 警備員(アンチスキル)にでも任せればいいじゃねぇか!

 信乃(あいつ)だって、強いけど身体能力が高いわけじゃないだろ!?」

小烏丸の練習中、黒妻と信乃は何度も模擬戦をしていた。

黒妻の戦闘スタイルは接近型。模擬戦で信乃と殴り合って気付いていた。

あいつ自身(だけ)の攻撃は重くない。
強いのはA・Tと、それを扱う技術があってこその強さだと。

だからこそ黒妻は勇気づけられた。
圧倒的に強いと思っていた奴が、実は自分と同じ世界(ランク)にいることに。
自分も努力すれば、同じ力を手に入れられる希望を持てた。

だが、それが今は逆に働いている。
信乃が勝てるとは思えない、マイナスな思考へと繋がる。

そんな黒妻を、宗像は諭すように言った。

「信乃は・・・そうだな。

 はっきり言ってそんなに身体能力があるとは思わない。

 体もまだまだ成長途中だし・・・

 少なくとも殺すために作られた僕や・・・・
 サヴァン症候群(シンドローム)の位置外とは違う。

 力を身につけた理由は複雑だが、才能に恵まれているタイプじゃないのは確かだ。

 でも信乃(あいつ)は止まらない。

 炎の王である限りな」

「? 炎の王である限り、ってなんだよ?」

「それは・・・・・もうすぐ決着がつくぞ」

宗像は話を切り、再び信乃を凝視した。









「ここで楽しいクイズだ」

「今、俺達が見えるものの中で」

「一番の熱源ってな~んだ?」

攻撃の最中、異なる角度から信乃の声が聞こえた。

『この≪スティンガー≫のエンジンに決まっている』

『それともお前は何か!? 自分の炎が一番だと思ってたのか!?

 あんた馬鹿!? カカカカ! 自惚れてんじゃねーよ!!』

「残念、外れ」

「答えは」

分身していた信乃はすべて消えさり、正面に本物(しの)が立ち止まる。

そして上を指さした。

「太陽だ」





旧約聖書創世記

 第十八章から第二十章に記される悪徳の街 「ソドム」と「ゴモラ」

  神は堕落して正しきものがいない罪深き街としてこの2つを滅ぼした。

   天からの火によって

    その炎の名は



炎の道 (フレイム・ロード)

TRICK

   - MEGID(メギド)・FLAME(フレイム) -




天からの炎。

それは太陽の光を集束した熱。

“百の熱弾による私刑 (ハンドレット・ガントレット)”から生み出された大量の熱。

その熱を走りながら“時”で触れ、操り、形を作り出す。

      上空数kmにわたる巨大なレンズを作り出す。

レンズを通過して集まる太陽の光。
その焦点の温度は何十万℃にもなり、万物を一瞬で融解する。

さらにスティンガーの周りには Trick “溶解する監獄”(バーニング・プリズン)を展開。

出来る限りではあるが、熱を逃がさず温度はさらに上昇し続けた。





熱が届かないように離れていた宗像と黒妻。

しかし2人は“溶解する監獄”(バーニング・プリズン)でも抑えきれない
熱の余波が、肌が焼けるような熱風が届いていた。

「・・・本当に無茶苦茶だな」

「黒妻、覚えておくといい。

 炎の道 (フレイム・ロード)は炎を操る道じゃない。

 熱を操る道だ」

地面を走るときに発生する摩擦熱。それを操り最速を走る。

そして熱で生まれた空気(レンズ)を操り、新たな熱を生み出す。

 それが炎の道 (フレイム・ロード)

「そして何より、炎の王の条件を持っている限りあいつは負けない」

「条件? さっきも言っていたな。なんだそれ?」

「諦めない、挫けない心。 いや、ここは“情熱”というべきかな。


  ≪炎の王≫に必要な絶対条件。
  
    それは全てを溶かす“情熱”さ    」

信乃について言っているのに、なぜか自分の事のように嬉しそうに話す宗像。
そこには強敵(ライバル)などと生温く思えるほどの関係があっての気持ちだろう。

「“情熱”か・・・あいつにぴったりだな」

「位置外、こんな相手でも玖渚(くなぎさ)機関の全てを賭けて戦って勝つ自信はあるのか?」

『・・・・・ふん、そんな戦いなどは起こらない。

 ニシオリは我が機関に組み込むのだからな』

宗像の言葉に位置外は少し遅れて答えた。

その返事にはいつもの覇気が無かった。

「さーってと。後始末に行くか。

 あいつはもう動けないだろうからな」

黒妻の言葉に宗像も頷き、屋上から降りていった。






「あ~、疲れた。

 よかったよ、≪メギド・フレイム≫で壊れてくれて。

 ≪クロスファイア≫まで出すのは勘弁だからな・・・・」

技を終えて、信乃は地面にへたり込んだ。

メギド・フレイムで発生させた熱は“溶解する監獄”(バーニング・プリズン)で操作して
操縦席をギリギリで外し、パイロットの2人は(外部的には)怪我をせずにいた。

そして操縦席以外の全て、破壊した脚から頑丈なハサミ、堅い胴体、凶悪な砲台(しっぽ)
跡かたもなく消え去っている。

溶かすのを通り過ぎて蒸発させた。

人間の限界を超えた、太陽(しぜん)を使った(トリック)

もちろん信乃も無事ではない。

球鬘(たまかずら)との戦闘前に玉璽(レガリア)を開放して、脚に負担を賭けていた。

その後で玉璽の完全開放をした結果、
学園都市に来てから一番ひどい怪我が信乃を襲った。

脚だけではない。メギド・フレイムは全身を使って発動させた(トリック)

疲労も限界を超えていて立つことも困難な状態にあった。

いや、意識を保つ事もギリギリである。

「つーちゃん、後始末よろしく・・・・」

『いいだろう。高貴なる私の・・』

そしてついには仰向けに倒れ込んで意識を手放した。


・・・・・・

・・・・・

・・・・

・・・

・・




今回の事件の後日談

信乃が意識を取り戻して最初に目にしたのは

「知っている天井だ」

残念ながらお決まりのセリフを言う事が出来なかった。

なぜなら幻想御手事件の後、自分が入院していた病室とまったく同じだったからだ。

ゆっくりと上体を起こそうとしたが、力が全く入らずに微動だにできなかった。

「・・・・さすがに玉璽(レガリア)開放を1日2度は無理があったか」

「当たり前でしょ」

「!?・・・・・美雪さん、二重の意味で恐い顔になっていますよ?」

ベットの側には美雪が座っていた。

信乃が無理をする事を分かっていたので、佐天に道具を渡した後ですぐに病院に向かっていた。

そして案の定、ひどい疲労状態でしかも意識を失って搬送されてきた。

その日から付きっきりで、文字通り寝ずに看病していたのだ。

「誰のせいだと思う?」

「わたしのせいですはいすいません」

信乃は首も動かせない状態なので素直に口で謝った、冷や汗を流しながら。

信乃が言った二重の意味で恐い顔。それは怒っているという意味で恐いという事。

そして美雪の眼の下には濃い隈があった。

1日にの徹夜では、あそこまで濃くならない。つまり

「3日も寝たからすっきりしたでしょ? ついでに今の私の顔を見て寝起きばっちり?」

「・・・・・ごめん、心配掛けて」

美雪の嫌味を無視して信乃は謝った。

「許すと思う?」

いつもなら「怪我をしても治すから大丈夫♪」などと言う美雪。

だが、今は俯いていて表情は見えない。

「・・・・・・許してほしい。

 俺は・・・これからもこんな感じで生きていくから。

 美雪に許してもらわないと、戦えなくなる」

「戦わなくていいじゃん・・・・・・戦場にいたんでしょ!?

 なんでよ!? これ以上ひどい目にあう必要ないよ!!」

勢いよく上げた顔から、目から涙が流れていた。

その勢いのまま信乃の襟首を掴んだ。

「俺は・・・」

「なんで・・・なんで・・・」

「ごめん・・・・」

「うぅ・・・・ヒック・・・・・」

顔を信乃の胸にうずめ、嗚咽をだす美雪。

予想外に戦いを止めるように言われた。

いや、予想していたが無意識に目を反らしていた、最悪の展開。

美雪に戦いを止められる事。

信乃が学園都市に戻りたくなかった理由の一つでもある、彼女からの停止の言葉。

たかが一人の少女の言葉、で片付けられない。
自分の一番大切な人からの言葉。それは束縛、呪いにも似た効果があった。

信乃は何もできず、何も言えずにいるだけだった。





つづく
 
 

 
後書き
信乃の戦い、これが七の名流の炎の道です。
前にも言いましたが、原作とは違った戦い方にしました。

メギド・フレイムはファイナルファンタジーからのネタではなく、
皆川亮二の漫画、スプリガンからのものです。
原作で対スレイプニールでカズの炎のレンズを見て思い浮かびました。

炎の道、いかがだったでしょうか?
文句は受け付けません。お褒めの言葉だけをください(キリッ)!!

作中で不明、疑問などありましたらご連絡ください。
後書き、または補足話の投稿などでお答えします。
誤字脱字がありましたら教えて頂くと嬉しいです。

皆様の感想をお待ちしています! 
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