遊戯王GX ~水と氷の交響曲~
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ターン27 女戦士と宝石騎士
前書き
今回の三沢は今一つスタイリッシュさというかカッコよさというか、そういったものがいつもより足りないかも。ラストに関しては、今後の展開で一つ二つやりたいことがあるためこんな形になりました。
「ん………よし、そろそろかな」
まだ日も昇っておらず、ちょっと東の空が白んで見えるくらいの時間に僕は、レッド寮を出た。夕べ新しいことに手を出してみたのだが、その成果が知りたくなったのだ。
『ふわぁ……なんだお前、もう行くのか?』
「あ、起こしちゃった?ごめんごめん、まだ寝てていーよ」
ふわふわとユーノが飛んできて僕の半歩後ろにつく。さらにシャーク・サッカーも僕の右隣をゆったりと泳ぎだす。ふーむ、なんか悪いことしちゃったかな。
「あ、そろそろだ」
もう一回謝っとこうかな、そう思ったところで海に面した崖、とはいっても水面までの距離はせいぜい1メートル程度の場所に出て、目印にしていたひもに括り付けた浮き輪がぷかぷかと浮かんでいるのが見えた。
「いよっこいせぇ!」
掛け声とともに、その浮き輪に手を伸ばして思いっきり引っ張る。あれ、これ意外と重いのね。もうちょっと人手がいるし、またデッキの誰かに手伝ってもらおうかな?さっそく呼び出そうとすると、すぐ近くに三沢がいるのを見つけた。まだこっちには気づいていないようで、海に向かって何やら体操をしている。
「おーい、みっさわー!暇ならこれ手伝ってくれるー?」
手を口に当てて声を張り上げる。すぐに気付いてくれたみたいで、こっちに向けて走ってくるのが見えた。
「おいーっす、三沢。おはよ」
「ああ、おはよう。それはいいが、一体こんな時間から何をしてるんだ?」
お前もな、と言いたいのをぐっと飲み込む。あまり無駄話をしてる暇はない。今はそれより、こっちを手伝ってもらいたいのだ。
「訳は後で話すからさ三沢、ちょっとこれ引っ張るの手伝って…くれ、る……?」
「わ、わかった!」
割と全力で引っ張ってるのにちっとも海から引っ張り出せない浮き輪を見て、慌てて手を貸してくれる三沢。
「ありが、と……!」
「気に、する、な…!」
二人がかりで思いっきり引っ張ってると、何かバチッと嫌な音がした。そしてみるみる軽くなってくる浮き輪。あああああ、やっちゃった!
「きょ、今日のごはん~………」
涙目になってもう一人でも持ち上げられる重さの浮き輪を引っ張り上げると、案の定無残に大穴のあいたでっかい網がくっついていた。それを黙ってみていた三沢が、信じられない、といった様子で声をかけてくる。
「ま、まさか今日のごはんって……」
「ここ、十代と釣りしててもよく釣れるポイントだから、レッド寮の食卓に刺身なり焼き魚なりを出そうと思ってゆうべの夜遅く頑張って定置網張っておいたのに、せっかく金曜のエビフライと毎日のメザシ以外にも海産物を安定して全員に出せると思ったのに!」
「そんなに困ってるなら一言相談してくれ!」
『うん、俺もずっとそう思ってた。なんで定置網張ったり投網ぶん投げたりする方向に走るんだよお前は。ってツッコミができないぐらい必死だったから黙ってたけどな』
「ありがと三沢。でもいいよ、とりあえず僕は今から寮に帰ってこの網を縫い直すから。あ、大量になったらラーイエローにもおすそ分けするから楽しみにしててね」
『これ全部嫌味抜きの本音で言えるんだからお前って大した奴だよな』
何代前の先輩が何を考えて買ったのかまるで訳が分からないけどせっかくなのでありがたく使わせてもらってる軽く20メートルはある投網をバサッと肩に担ぎながらそう言うと、三沢は心底呆れたようにため息をついた。そのまま僕の肩に手を置き、真剣な目で一言、
「わかった、わかったからとりあえず今日はお前ら全員でウチまで来てくれ。樺山先生のことだ、今日もカレーの仕込みはもう終わってるだろうしな」
って言ってくれたのがなんか泣きそうになるほど嬉しかった。樺山先生、カレー美味しかったです。あ、それと投網修理に使う針だのなんだのも貸してくれてほんとありがとうございました。この恩はいつかこの網でたくさん魚が獲れたら返します。
『お前……三沢がメシおごってくれた意味ぜんっぜん理解してねーな?』
そして、朝カレーをおなか一杯頂いてから。僕と十代、隼人に翔は三沢からラーイエローのすぐ近くの崖まで呼び出されていた。なんでも、デュエルの早朝特訓を始めるらしい。そう思ってた時期が僕にもありました。始まったのは、掛け声とともにひたすらカードを引く特訓。確かに効果があるであろうことは大山先輩が実証済みだけど、だけど………あえて言わせてもらおう、どうしてこうなった。
「アン、ドゥー、ドロー。アン、ドゥー・ドロー。アン、ドゥー、ドロー………ねえ三沢、これあと何セットやるんだっけ?」
「アン、ドゥー、ドロー。もちろん、自分のデッキがなくなるまでだ!」
「アン、ドゥー、ドロー……ってことは、俺と隼人と翔はあと11回か!」
「アン、ドゥー…………ってことは何?デッキ枚数60の僕はこの3人より20回多くやんなきゃいけないの!?」
「そもそも、なんで俺らまでやらなきゃいけないんだな~。お、翔、そのカード雷電娘々か?」
「あ、ばれた?えへへ、僕のアイドルカードなんだ」
残りデッキの枚数が10枚を切ったあたりで、隼人と翔が雑談を始める。隼人のおかーさん、ディアン・ケトに似てるってどんな顔なんだろ。少なくとも隼人本人が父親似なのはこの前よくわかったけど。
ふむ、アイドルカード、か。まあ僕のデッキならレイス一択だな。三沢は間違いなくピケルだろう。まあ本人にとっては触れてほしくない点らしいので、あえて何も言わないでおく。それが自分でもわかっているのだろう、特にとがめられることはなく特訓は終わりになった。さ、授業授業。確か今日は、1時間目から大徳寺先生の錬金術だっけか。
「ガラッガラだ」
「スカスカっすね」
おかしい。何がおかしいって、もう授業はじまってるのに空席がやたらと目立つ。青黄赤、全色合わせてもせいぜいいつもの4分の3ぐらいしかいない。いつものほほんとした大徳寺先生もさすがに不安そうな顔をして、無断欠席の理由を知っている人がいないか尋ねている。が、どうも誰もわからないらしい。そういや、今朝もレッド生が数人いなかったな。貧乏根性のしみついたオシリスレッドでただ飯に来ないなんて何かあるとは思ってたけど、まさかこんなに人がいないとは。
「大変です先生、森でこんなものが!」
そういいながら事務の人が、何やらカバンを持って駆け込んでくる。そのかばんにはくっきりと『GOTOU』の文字があった。後藤……一体どこに行っちゃったんだ?その後人がいないので授業は中止となり、いったん生徒は各自寮に戻るようアナウンスがあった。けど、
「これはもう、探してみるしかないね。ちょっと手かしてね、サッカー」
「だな。手伝ってくれ相棒!」
当然のごとく無視。ハネクリボーとシャーク・サッカーを呼び出して、僕らも素早く森の中に入るのであった。
そして、かれこれ10分ほど歩きまわったころ。いきなり森の開けた場所に出ると、そこには謎の石造りの建物がそびえたっていた。え、なにこれ。
「ああ、みんな、あれを見るんだな~!」
隼人が指差した先には、見覚えのある制服を着たたくさんの男子高校生が四角い石を運んだり切ったりしてその建物を作り上げていくシュールな光景。それと、虎。英語にするとタイガー。
「………虎?」
なんかもう手遅れな気もしたけど、なるべく刺激しないようにしてゆっくりと後ろを向き、そのまま一歩ずつ前に進m
「こっち来た!逃げろーっ!!」
大慌てで走り出し、必死になって建設途中の柱の一本にしがみついてよじ登った。チラッと下を見たら、こっちが手を放すまで粘るつもりなのか足元でうろうろしてる虎と目があった。今気づいたけど、この虎片目がないのね。でっかい傷跡が残ってる。まあどうでもいいことだけど。
「バース!」
「ん?」
さて、これからどうしようかと考えだしたとき、建物の中から凛とした女性の声が聞こえた。するとその虎、いやバースはさっきまでの態度が嘘のように、例えて言うなら借りてきた猫のようになって大人しく声のほうに走って行った。
「ようこそ、私の城へ。もう降りてもらっても構わないぞ」
そのたくましい褐色の肌の女性の言葉に従って地面に降りると、当の女性はさっきまで作業していたアカデミア生に対してひとりひとり丁寧にねぎらいの言葉をかけて給料袋とおぼしきものを手渡していた。くっ、バイトがあると一声かけてくれれば僕だって行ってたのに。
「いやいやいや、だってさ」
うん、さすがに半分は冗談。まあどう考えてもこんなところで闘技場作らせてる女なんてただ者なわけがないし、こっちから遠慮してただろう。………しかし給料ってあれいくらぐらいもらってたんだろうか。
「さて、待たせたな。私はセブンスターズの一員にしてアマゾネスの末裔、タニヤ。このコロシアムで七星門の鍵をかけた聖なる戦いを行う」
わかっていたこととはいえ、サッと場に緊張が走る。アマゾネス、確か地球のどこかにあるっていう女性だけの一族のことだ。しかしこの人、下手すると一回で終わるデュエルのためだけにわざわざこんな建物作らせたのか。暇人というかなんというか。と、いきなりタニヤの声がぶりっ子っぽくなった。
「でもね、私と戦うことができるのは、男の中の男だけ」
「「何よそれ!」……だって!」
語尾にハートマークでもつきそうな声で事実上あんたらとはデュエルしないという宣言をされ、女性人二人が怒りの声を上げる。もうこの迫力からいっても明日香は資格あるんじゃないかな、本人の前では死んでもこんなこと言えないけど。あ、また声戻った。
「我こそは男というもの、出て来い!」
「俺が!」
「いや、俺だろう!」
「いいや、俺だ!」
「僕が行く!」
我こそは男!ということで一斉に名乗りを上げる男性陣をじっくりと見つめたタニヤ。これ、当ててもらえなかったら地味にへこむだろうなー。
「面構えは全員悪くないけど………ユー!」
そういってタニヤが指差したのは、三沢。くっ……なんかちょっと一瞬だけドヤ顔になってたのが無駄に悔しい!
「いいだろう、この三沢大地が相手しよう」
「まず、デュエルの前に聞かせてもらう。ここに2つのデッキがあるが、一つは勇気のデッキでもう一つは知恵のデッキ。さあ、どちらを選ぶ?」
「当然、知恵のデッキだ!」
なにが当然なんだろーか。
「そっちがデッキの内容を決めさせたならば、俺も同じことをしてやろう。ここに6つの属性デッキがあるが、どれを相手にするか選んでもらおうか!」
そう言って黄色の制服をはだけ、常に身に着けている6つのデッキケースを見せつける三沢。三沢よ、仮にも女性の前でいちいちそのポーズとるのはやめたほうがいいと僕は思うよ。素肌は見せてないとはいえ、セクハラ扱いされても文句言えないし。
「キャー、三沢っちったら大胆ー!じゃあタニヤ、あなたの名前と同じ地属性のデッキをお願いするわー!」
コロシアム全体に、何とも言えない空気が広がった。………三沢、ファイト。
「ええい、そんな見え透いたお色気作戦なんかに引っかかってたまるか!」
「三沢っちったら硬派ね、そこがまた素敵ー!……では、ゆくぞ!」
「「デュエル!」」
「先行は私がもらう!ドロー、手札からフィールド魔法、アマゾネスの里を発動!」
周りにニョキニョキと木が生えてきて、まるで南国の森のようになった。木の向こう側には、なにやら木製の家もいくつか見える。
アマゾネスの里
フィールド魔法
このカードがフィールド上に存在する限り、
フィールド上に表側表示で存在する「アマゾネス」と名のついた
モンスターの攻撃力は200ポイントアップする。
「アマゾネス」と名のついたモンスターが戦闘または
カードの効果によって破壊され墓地へ送られた時、
その「アマゾネス」と名のついたモンスターのレベル以下の
「アマゾネス」と名のついたモンスター1体を自分のデッキから特殊召喚する事ができる。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。
「さらに、アマゾネスの聖戦士を通常召喚する。このカードの攻撃力は1700だが、自分の場のアマゾネスモンスター1体につき100ポイントアップする。今の私の場には聖戦士1体しかいないが、アマゾネスの里の効果でさらに200ポイントアップする!カードをセットして、ターン終了だ」
アマゾネスの聖戦士 攻1700→2000
「いきなり攻撃力2000のアタッカーを通常召喚一回で召喚!?」
「イロモノかと思ったらなかなかやるね、だってさ」
「い、いやイロモノってさすがに失礼じゃ」
別にタニヤをかばうつもりはさらさらないが、さすがにいきなりイロモノ扱いはあんまりじゃなかろうか。そう思って言っただけなのに何が気に入らなかったのか、夢想はぷぅっと頬を膨らませてそっぽ向いてしまった。え、僕何かまずいこと言った!?
「いいわよ、どうせ清明は女の人には甘いんだもん、だってさ。どうせあの人がちょっと露出高いからってデレデレしてるんでしょ、なんだって」
「え、ええ!?べ、別にそんなことないよ!」
「どうだかね、だって。ふんっ!」
…………嫌われたらどうしよう。いや、ホント誤解なんだけどなあ。ほんとほんと。ちょっと胸のあたり見たとかそういうのは決して否定しないけどいやでもそれぐらいは気づいてほしくなかったというか気づいててもノーカンにしてほしかったといいますかだって僕だって男のはしくれですし、ねえ?
「俺のターン、ドロー!手札のレスキューラビットを召喚、効果を使ってデッキのジェムナイト・サフィアを2体特殊召喚する」
そんな僕の沈んだ気持など知ったこっちゃない、という顔をした首から笛を下げたウサギがぴょこぴょこ跳ねてきてフィールドの真ん中で笛を吹くと、その音につられた水で楯を作ることができるジェムナイトの戦士が寄ってきた。
レスキューラビット
効果モンスター(準制限カード)
星4/地属性/獣族/攻 300/守 100
このカードはデッキから特殊召喚する事はできない。
自分フィールド上に表側表示で存在するこのカードをゲームから除外して発動する。
自分のデッキからレベル4以下の同名通常モンスター2体を特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターはエンドフェイズ時に破壊される。
「レスキューラビット」の効果は1ターンに1度しか使用できない。
ジェムナイト・サフィア×2 守2100
「そしてこのジェムナイト専用の融合、ジェムナイト・フュージョンを発動!場のサフィア2体を融合してジェムナイト・アクアマリナを特殊召喚!」
ジェムナイト・アクアマリナ
融合・効果モンスター
星6/地属性/水族/攻1400/守2600
「ジェムナイト・サフィア」+「ジェムナイト」と名のついたモンスター
このカードは上記のカードを融合素材にした融合召喚でのみ
エクストラデッキから特殊召喚できる。
このカードは攻撃した場合、バトルフェイズ終了時に守備表示になる。
このカードがフィールド上から墓地へ送られた時、
相手フィールド上のカード1枚を選択して持ち主の手札に戻す。
「キャー三沢っち、後攻1ターン目から融合召喚なんてかっこいいー!」
「そんな手に俺は引っかからんぞと言ったはずだ!さらに墓地のサフィアを除外することで、再び回収したジェムナイト・フュージョンを発動!手札のジェムナイト・サニクスと場のアクアマリナを融合!来い、ジェムナイト・マディラ!」
三沢の場の青いジェムナイトと手札の赤いジェムナイトが融合し、高熱のため真っ赤に光る両腕と剣を持った炎のジェムナイトが胸の核石を光らせた。でも、なんでわざわざ融合してから融合なんて手間のかかる真似を?
『アクアマリナの効果で場を開けてからマディラで確実に一撃叩き込むか……いきなり2200ダメージとかやってらんねえな。まあ、どうせ三沢が解説するからそれ聞いとけ』
「?」
「そしてこの時、アクアマリナの効果発動!このカードが場を離れたことで、相手のカードを1枚バウンスする。俺が選ぶのは、アマゾネスの聖戦士だ!さらにジェムナイト・マディラは、戦闘時に相手のあらゆるカードの発動を封じ込めることができる。この戦闘、確実にダメージを通らせてもらうぞ!」
おお、なるほど!これならあの伏せカードも手札誘発も気にせずにバトルができるってことか。しかし、よくまあこんなコンボ思いつくなあ。
「さすがにやるようね。だけど、まだ甘いわよ!メインフェイズ最後に速攻魔法発動、死者への供物!ジェムナイト・マディラには破壊されてもらうわ!」
死者への供物
速攻魔法
フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を破壊する。
次の自分のドローフェイズをスキップする。
「くっ………ターンエンドだ」
タニヤ LP4000 手札:4 モンスター:なし 魔法・罠:なし
三沢 LP4000 手札:3 モンスター:なし 魔法・罠:なし
場:アマゾネスの里
「私のターン、ドロー……は飛ばしてメインフェイズ、もう一度アマゾネスの聖戦士を召喚して攻撃!聖剣の舞!」
アマゾネスの聖戦士 攻1700→2000→三沢(直接攻撃)
三沢 LP4000→2000
「三沢!」
「この程度案ずるな……俺の場に何もカードがない状態でダイレクトアタックを受けた時、冥府の使者はもう一人の使者を伴ってフィールドに特殊召喚できる!ゴーズ、カイエン特殊召喚!」
聖戦士が手にした細身の剣で三沢を切り裂いた瞬間、地面に伸びた三沢の影の色が急に濃くなったかと思うとその真下に闇に包まれた地下へ続く階段が現れ、その中から二体のモンスターがゆっくりと登ってきた。
冥府の使者ゴーズ
効果モンスター(準制限カード)
星7/闇属性/悪魔族/攻2700/守2500
自分フィールド上にカードが存在しない場合、
相手がコントロールするカードによってダメージを受けた時、
このカードを手札から特殊召喚する事ができる。
この方法で特殊召喚に成功した時、受けたダメージの種類により以下の効果を発動する。
●戦闘ダメージの場合、自分フィールド上に「冥府の使者カイエントークン」
(天使族・光・星7・攻/守?)を1体特殊召喚する。
このトークンの攻撃力・守備力は、この時受けた戦闘ダメージと同じ数値になる。
●カードの効果によるダメージの場合、
受けたダメージと同じダメージを相手ライフに与える。
冥府の使者ゴーズ 守2500
冥府の使者カイエントークン 守2000
やれやれ、一時はどうなるかと思ったけどこれで状況はまた五分五分か、どちらかといえば三沢がちょっと有利になったわけだ。よかったよかった、このまま押し切ってくれるといいんだけど。
「カードを2枚伏せる。ターンエンドだ」
「俺のターン、ドロー!ジェムレシスを召喚して効果発動、デッキからジェムナイト・ラズリーを手札に加えるぞ」
ジェムレシス
効果モンスター
星4/地属性/岩石族/攻1700/守 500
このカードが召喚に成功した時、
デッキから「ジェムナイト」と名のついた
モンスター1体を手札に加える事ができる。
「さらに墓地からジェムナイト・フュージョンの効果を使い、墓地のジェムナイトモンスターであるサフィアを除外することでこのカードを手札に加える。そして発動!手札のラズリーと、場の光属性のカイエントークンを融合!ジェムナイト・セラフィ召喚!」
カイエントークンの体が光に包まれ、光り輝くレイピアを掲げる天使の羽のようなものを背中に生やしたジェムナイト唯一の女戦士へと変わった。
ジェムナイト・セラフィ
融合・効果モンスター
星5/地属性/天使族/攻2300/守1400
「ジェムナイト」と名のついたモンスター+光属性モンスター
このカードは上記のカードを融合素材にした融合召喚でのみ
エクストラデッキから特殊召喚できる。
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
自分のメインフェイズ時に1度だけ、
自分は通常召喚に加えてモンスター1体を通常召喚できる。
「さすが三沢っち、たった1ターンでモンスターをこんなに揃えるなんて!」
「その三沢っちというのをやめろ!………墓地に行ったラズリーは、墓地の通常モンスターを代わりに手札に加えることができる。俺はこの効果により、墓地では通常モンスターとして扱うジェムナイト・サニクスを手札に加えてセラフィの効果でそのまま通常召喚!」
ジェムナイト・サニクス 攻1800
「うわー、三沢本気だね」
『久しぶりにここまでのソリティア見た気がするな。あっという間にモンスター0から4体か』
どこか緊張感の抜けた観戦ムードの僕らを尻目に、一人真面目に攻撃準備を整えていく三沢。これだけモンスターがいれば、ちょっとぐらい余裕もってもいいと思うけどなあ。
「……念のためゴーズは守備表示のままにしておくか。バトル!セラフィでアマゾネスの聖戦士に攻撃!」
「トラップ発動、アマゾネスの弩弓隊!全員迎撃しなさい、アマゾネスの聖戦士!」
タニヤの号令によって森の奥から数人の弓を構えた部隊が統率のとれた動きで並び、一斉に三沢のモンスターに弓を撃った。2人のジェムナイト、ジェムレシス、そしてゴーズの体に数本の矢が突き刺さってゆき、身に着けていたマントなどがすっかりボロボロになってしまう。
アマゾネスの弩弓隊
通常罠
相手の攻撃宣言時に、自分フィールド上に「アマゾネス」という
名のついたモンスターが存在する場合のみ発動する事ができる。
相手フィールド上の全てのモンスターは表側攻撃表示になり
(リバース効果は発動しない)、攻撃力は500ポイントダウンする。
相手は全てのモンスターで攻撃しなければならない。
ジェムナイト・セラフィ 攻2300→1800
ジェムナイト・サニクス 攻1800→1300
ジェムレシス 攻1700→1200
冥府の使者ゴーズ 守2500→攻2700→2200
「残念だったな、セラフィの攻撃はもう止まらないぞ!」
タニヤの言葉通り、すっかりぼろぼろになった青いマントを羽織ったセラフィが若干ふらつく動きで放ったレイピアでの突きをあっさりかわした聖戦士が素早くセラフィの体を切り返す。普段の状態ならまだしも、全身に矢を受けた今の状態ではかわすことすらできなかった。
ジェムナイト・セラフィ 攻1800(破壊)→アマゾネスの聖戦士 攻2000
三沢 LP2000→1800
「くっ……だが、俺の場にはそれでもお前のモンスターの攻撃力を上回るゴーズがいる!ゴーズでもう一度聖戦士に攻撃!」
「残念ね、三沢っち!トラップ発動、奇策!私が捨てるのは攻撃力1500、アマゾネスの格闘戦士!これで2度目の返り討ちだ!」
これまたぼろぼろになった服装のゴーズが手にはめたかぎづめで聖戦士の体を切り裂こうとするも、その攻撃すらもひらりとジャンプしてよけた聖戦士がその剣で上空からゴーズの体を貫く。聖戦士、さっきから攻撃パターンが妙に多いな。
奇策
通常罠
手札からモンスター1体を捨て、
フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。
選択したモンスターの攻撃力は、捨てたモンスターの元々の攻撃力分ダウンする。
冥府の使者ゴーズ 攻2200→700(破壊)→アマゾネスの聖戦士 攻2000
三沢 LP1800→500
「ごめんね三沢っち、このターンの攻撃は強制なのー。さあ、残りはその2体ね」
例によってぶりっ子な声音でさらっと鬼畜なことを言うタニヤに対し、圧倒的に不利なはずの三沢は、なんとかすかに笑っていた。ちょ、ちょっと三沢?
「ふっ、もし俺がこの最悪の事態まで想定して対策していたとすれば、どうする?」
「え?」
「まさかここまでボロボロにされるとは思っていなかったから単なる保険のつもりだったが………まさか本当に使うことになるとは、な。わからないかタニヤ、これでお前の場に伏せカードはない。俺はその瞬間を待っていたんだ!ジェムナイト・サニクスで攻撃!」
「迎え撃ちなさい、聖戦士!」
「この瞬間、手札からジェム・マーチャントの効果発動!今はまだ通常モンスター扱いのサニクスの攻撃力は、これで1000ポイントアップする!」
赤いモーニングスターを手にしたサニクスが、うなりをつけて鎖を振り回しながら聖戦士に戦いを挑んでいく。だが、その動きにもやはり精彩が欠ける。また攻撃がかわされるんだろうと思った瞬間、いきなりサニクスの胸の核石が真っ赤に輝いてそのスピードが跳ね上がった。聖戦士の剣がむなしく空を切り、がら空きになった胴にサニクスのモーニングスターが命中する。
ジェム・マーチャント
効果モンスター
星3/地属性/魔法使い族/攻1000/守1000
自分フィールド上の地属性の通常モンスターが
戦闘を行うダメージステップ時、
このカードを手札から墓地へ送って発動できる。
そのモンスターの攻撃力・守備力は
エンドフェイズ時まで1000ポイントアップする。
ジェムナイト・サニクス 攻1300→2300→アマゾネスの聖戦士 攻2000(破壊)
タニヤ LP4000→3700
「やるわね三沢っち!だが、この瞬間にアマゾネスの里の効果が発動する!出てきなさい、アマゾネスの射手!」
タニヤの声を聞きつけ、ほかのアマゾネスよりも色白で体の線も細い弓を持った女戦士が森の奥から駆けつけてきた。
アマゾネスの射手
効果モンスター
星4/地属性/戦士族/攻1400/守1000
自分フィールド上に存在するモンスター2体をリリースして発動する。
相手ライフに1200ポイントダメージを与える。
「くっ……これはどうしようもない、ジェムレシスで攻撃」
ジェムレシス 攻1200(破壊)→アマゾネスの射手 攻1400→1600
三沢 LP500→100
「さあ、これで残るモンスターは私のターンに攻撃力1300に戻るサニクス1体のみ。潔く負けを認め、サレンダーしたらどうだ?」
「誰が!まだ俺には最後の賭けが残されている、馬の骨の対価を発動!」
三沢が発動したのは、自分の場の通常モンスター1体をリリースすることでカードを2枚引くことができるドローカード、馬の骨の対価。そこそこ使い勝手のいいドローソースだ、という程度の知識は僕だって持ってるけど、このタイミングで使うのは危険すぎる。
もちろんこのプレイングは確率や計算を重視する三沢のスタイル通りの戦法だ。ここでターンエンドして確実に負けるよりは、2枚ドローして最後の賭けに出る方がいいに決まってる。だけどそれはただ計算づくなんじゃなくて、一回一回のドローに全てを賭けてる十代や僕の戦い方に似たところもある。自分の引くカードを、自分のデッキを信じる戦い方には運がいる。計算と運、この二つを同時に使えることが三沢の最大の強みだと思う。僕なんかはいまだに運と勘とその場の閃きだけで頑張ってるようなものだから、そういうところが僕にとっては羨ましい。
「いくぞ、タニヤ…………ドロー!!!」
素早く引いた2枚のカードをちらりと見て、三沢はあくまでも表情を崩さない。
「カードを2枚セットする。これでターンエンドだ」
タニヤ LP3700 手札:0 モンスター:アマゾネスの剣士(攻) 魔法・罠:なし
三沢 LP200 手札:0 モンスター:なし 魔法・罠:2(伏せ)
場:アマゾネスの里
「さっき何を引いたかは知らないが、このターンで終わりだ!アマゾネスの射手で直接攻撃!」
「トラップ発動、攻撃の無力化!このターンのバトルフェイズはこれで終了だ!」
「ならばメイン2にアマゾネスの射手をリリースし、アマゾネス王女を召喚!この壁、超えられるものなら超えてみろ!」
アマゾネス王女
効果モンスター
星6/地属性/戦士族/攻2400/守1800
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
自分フィールド上に存在する「アマゾネス」と名のついたモンスターは
戦闘では破壊されない。
「戦闘破壊されない攻撃力2400か……甘いな、タニヤ。俺を倒しきることができず、この伏せカードを残した状態でターンを終了した時点で、お前の負けは既に決まっている!」
「なんだと!?」
「証拠を見せてやろう。永続トラップ発動、零式魔道粉砕機!」
三沢が発動した最後の伏せカードの古めかしい機械が、ガタガタと音を立てて蒸気を吹き上げながら起動する。
「このカードは、自分の魔法カードを1枚捨てることで、相手に500のバーンダメージを与える効果を持つ」
「だが、お前の手札は1枚のはず!」
『いや、魔法カードに限って言うなら最低でも5枚、だな』
え、5枚……えっと、どゆこと?
「墓地からジェムナイト・フュージョンの効果を発動、サニクスを除外してこのカードを手札に戻す。そして零式魔道粉砕機の効果で射出、ファイヤー!」
タニヤ LP3700→3200
「ぐっ……そうか、そういうことか!」
「そういうことだ。今ならサレンダーを受け付けてもいいが……」
「いや、私とて誇り高きアマゾネスの末裔!勝負から逃げはしないから存分にかかってこい、三沢大地!」
「いいだろう、墓地からジェムナイト・フュージョンの効果発動!マディラを除外して手札に戻し、ファイヤー!」
タニヤ LP3200→2700
「墓地のアクアマリナを除外し、ジェムナイト・フュージョンを射出!ファイヤー!」
タニヤ LP2700→2200
「墓地のラズリーを除外!ファイヤー!」
タニヤ LP2200→1700
「墓地のセラフィを除外!」
タニヤ LP1700→1200
「こ、これでお前の墓地のモンスターは品切れのはずだが………」
「無論、対策はある。さっきはああ言ったが、本当はこのドローフェイズでこのカードがなかったら俺の負けだったな。速攻魔法、異次元からの埋葬発動!除外されたサフィア2体とラズリーを墓地に戻し、すべてジェムナイト・フュージョンのコストにする!ファイヤー!」
異次元からの埋葬
速攻魔法(制限カード)
ゲームから除外されているモンスターカードを3枚まで選択し、
そのカードを墓地に戻す。
タニヤ LP1200→700→200→0
「私の負け、か」
「いや、もし零式魔道粉砕機がなかったら俺が圧倒的に不利だった。俺の計算をお前の戦法が上回ったのは事実だ」
「だが、それを引いたのもお前の実力………では、私は精霊界にでも帰るとしよう。このコロッセオは好きに使ってくれ。さらばだ、三沢大地」
そう言うと、みるみるうちにタニヤの姿が一匹のメス虎へ変化していく。呆然としている僕らをよそに、いつの間にか近くに寄ってきていたバースとタニヤは僕らに背を向けてゆっくりと去っていった。その姿が完全に見えなくなったあたりで、思わず気になったことをぽつりとつぶやいた。
「好きに使ってくれって……こんな校舎から絶妙に距離が離れた建物どう使えっていうのさ………」
レッド寮が限界を迎えたあたりで新生オシリスレッドにでもしろと?あ、でもそれはそれでありかも。敷地広いし。とりあえず、月一ぐらいで掃除しに来ようかな。維持管理が大変そうだ。
後書き
最後に里の効果で剣士とか訓練生とか呼べばタニヤが勝ってた?そこを言ったらおしまいよ。
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