舞台神聖祝典劇パルジファル
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第二幕その七
第二幕その七
「どちらも。そして私は」
「御前は?」
「多くのものを見てきたわ」
今度はこう話すのだった。
「まだ子供の御前が母の胸にすがっているところも」
「母さんが」
「そして」
クンドリーの言葉は続く。
「ものを言いはじめた時もね」
「そんなことは全く覚えていない」
「あんたが覚えていなくとも私が覚えている」
「そうなのか」
「そう。心の悩みを持ちながらも」
これは若者の知らないことだった。だがクンドリーはそれをあえて言ってみせてそのうえで話したのである。それも彼女の考えの中であった。
「ヘルツェライデも自然と笑顔になったもの」
「そうだったのか」
「御前はお前の母の楽しみで」
若者にさらに話していく。
「彼女が苦しい時も御前は楽しく笑い彼女はそれを見て笑い」
「それでどうなったんだ?」
「彼女はその御前を優しく撫でて寝かせていた」
「母さんが」
「御前を目覚めさせたのは母の熱い涙の露だった」
「涙?」
「そう、涙よ」
それも話すのだった。若者の知らないことだと知りながらもだった。
「御前の父を失った悲しみと御前への愛で」
「父さんと僕の」
「御前には父親と同じ悲しみをして欲しくなかった」
「だからなのか」
「武器を遠ざけ戦いから引き離し」
これがその母のしたことであったのだ。
「世間から引き離してそうして育てていた」
「父さんの様に死ぬことがないように」
「夕方遅くまで帰って来ない時も心配で泣き御前が帰って来て微笑み」
まさにそうしたというのである。
「そして御前がいなくなった時」
「ここまで聞くその時に」
「そう、その時に」
まさにその時だというのだ。
「母が嘆き悲しんだ声や心を傷めた叫び声は聞かなかったのね」
「知らなかった」
「彼女は昼も夜も待ち遂には」
「遂には?」
「深い悲しみは心を悩まさせて」
「そして?」
「その中で死んだのよ」
そこまで聞いてであった。若者は今ある感情を感じた。その感情は。
「悲しい・・・・・・」
「悲しいというのね」
「悲しい・・・・・・」
項垂れた顔での言葉だった。
「僕はその時何をしていた」
「あの城に向かっていた」
「そして懐かしく優しい母さんを死なせた」
こう言ってその場に崩れ落ちてしまった。
「僕が」
「しかしそれは」
「僕はふらふらとして自分の母親を死なせてしまった。大切な母さんを」
「その苦痛の思いをまだ知らなかったその時は」
クンドリーはこう彼に話した。
「優しい慰めはなかった」
「なかった・・・・・」
「しかし御前は今悲しみを知った」
まずはその感情だというのだ。
「そして」
「そして?」
「後悔をしている筈」
「今この悲しみと共に僕を苦しめているものが」
「そう、それが後悔」
まさにそれだというのだ。
「悲しみや苦しみの思いは」
「その思いは?」
「愛が御前に捧げてくれる慰めで」
この言葉を出すのであった。
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