万華鏡
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第三十九話 読書感想文その十三
「けれど阪神の優勝は皆が元気になるから」
「大喜びでお金も使うから」
「だからいいのよ」
それでだというのだ。
「阪神の優勝はね」
「じゃあ是非ですね」
「阪神の優勝を祈願して」
「幸い今年は巨人は最下位よ」
それもダントツのだ、先輩はとても嬉しそうに語る。
「あのまま一千億年は最下位になって欲しいわね」
「ですよね、本当に」
「だから今余計に皆機嫌がいいんですよね」
「巨人は勝ってはいけないのよ」
世の為人の為世界平和の為にだ。
「阪神と違ってね」
「そういえばうちの部活の規則で」
ここでだ、彩夏が言った。
「巨人の歌は選手のそれに至るまで歌ってはならないんですよね」
「八条学園の校則にもなってるわ」
巨人の歌を歌ってはならないのだ、絶対にだ。
「だから絶対にね」
「歌ってはいけないんですね」
「若し歌ったらね」
その時はどうなるか、先輩はこのことも話した。
「停学よ、部活も暫く出入り禁止になるから」
「ですよね、巨人の場合は」
「そうなりますよね」
「巨人は悪の軍団よ」
戦後日本の救い難い病理の象徴でもある、マスコミの報道に洗脳され無批判に支持してしまう、巨人はまさにマスコミの弊害の最たるものだ。
そしてその巨人のこれまでの悪事、それも見ての言葉だった。
「その悪の歌を歌えばね」
「悪の華は読んでもいいですよね」
ここでだ、里香は少し冗談を入れて言った。
「そうですよね」
「ああ、ボードレールの」
「そちらはいいですよね」
「ちょっと危ないけれどね」
これはボードレールの作風の為だ、大体において谷崎潤一郎と同じ理由である。
「それでもそちらはね」
「いいんですね」
「ええ、読んでもね」
「わかりました、じゃあ今度読んでみます」
「里香ちゃんって本当に色々読むよな」
美優はその里香に横から言った。
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