舞台神聖祝典劇パルジファル
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第一幕その十一
第一幕その十一
「それが僕に」
「わしは御前がわかったような気がする」
彼を見ながらの言葉だった。
「聖杯に通じる道はだ」
「その道は?」
「国中にただ一筋もなく」
こう若者に話すのだった。
「聖杯自ら導き寄せようとしない限りはだ」
「そうしない限りは」
「誰も近付くことはできない」
そうだというのだ。
「誰一人としてだ」
「僕は碌に歩いていないのに」
これは主観だった。
「もう遠くに来た気がする」
「それがわかるのか」
「何となく」
「ここではだ。行くぞ」
「うん」
グルネマンツは若者に共に行くように促す。彼もそれに応え二人で進む。そのうえで歩いていくとだった。舞台は徐々にではあるが森が消えて岸壁の間に門が開けてきた。その門内に入り白い美しい宮殿の中に入っていた。
そしてその宮殿の中は壮厳で上から白い光が入ってきている。白い光は白い壁と立ち並ぶ円柱、それに銀色に輝く床に白い宮殿を歩いてだ。そのうえでさらに中に入ってきていた。
そうしてだ。その中を進みながらさらに話すグルネマンツであった。
「ここではだ」
「ここでは?」
「時間が空間に変わるのだ」
こう彼に話すのだった。
「ここではだ」
「そうなのか」
「わしに見せてもらいたい」
また若者に告げた。
「それをだ」
「僕が何を見せるんだ?」
「御前が愚か者で純粋ならばだ」
若しそうであればというのだ。
「どんなものが御前に授けられているのかをだ」
「僕が見せる?」
「そうだ。それをだ」
こう話すのだ。
「それを」
「そうだ、それをだ」
また彼に話した。
「いいな」
「僕には何もわからない」
実際に彼はわかっていなかった。何もだ。
「それでもなのか」
「そうだ、それでもだ」
まだ若者に言うのであった。
「来るのだ」
「ここに」
「そう、今来た」
歩ければそれだけで辿り着いたのだった。そこは柱が連なる広間でやはり白い光に白と銀の世界が映し出されている。天井はアーチになっている。その左右の扉が開かれると騎士達が来た。そうしてそれぞれ集って言うのであった。
「今こそはじめよう」
「朝の儀式を」
「それを」
こう言ってであった。それぞれ集まっていた。
そこに今にも倒れそうな老騎士が来た。他の騎士のそれと比べて雰囲気が違っていた。グルネマンツと同じく白い髭を生やしている。その彼がその騎士の中央に横たえられその上体を起こしている王に言ってきた。
「我が子アムフォルタスよ」
「父上ですか」
「そうだ。そなたの務めを果たしているか」
こう彼に問うのであった。
「それはだ。どうなのだ?」
「それは」
「わしは今日も聖杯を仰ぎ生きながらえることができるのか」
こう言うのであった。
「それとも主に導かれることなく去ることになるのか」
「しかし私は」
だがここで王は項垂れて父王に言葉を返した。
「父上、どうかもう一度」
「どうしたというのだ?」
「この務めを果たしてくれぬでしょうか」
これが彼の言葉だった。
「どうか私に代わって」
「それは何故だ?」
「私はもう生きることを望んではいません」
顔を俯けさせての言葉だった。
「ですから」
「それはできん」
しかし王の返事は悲しいものだった。
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