私立アインクラッド学園
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第二部 文化祭
第27話 お互い
前書き
DEBANチャンを活躍させたかった。(
俺は一体、なにをしているのだろう。
アスナを傷つけ、ついには大切な妹を何年にも渡って傷つけていたことにも気づかず。
俺は、あの事実を10歳の頃に知った。
血液型が母親にも父親にも合わないことに気づき、名前や顔は覚えていないけれど──神聖術が得意な友人に頼み、本当の家族なのかどうか調べてもらったのだ。
俺は確かに直葉を避けていたし、その理由が10年前の事件にあることも強ち間違ってはいない。
わからなかった。
妹だと信じて疑わなかった直葉が実は本当の妹ではなかったと知ってしまった後は、どう接していいのかわからなかった。
俺は逃げるようにアインクラッドに入学し、一度として家に帰ることをしなかった。
4月に直葉が編入してきた時は驚いた。
俺はあの頃のように──事実について知る前の頃のように、直葉に接しようと思った。だが、できていなかったのだ。現に直葉を傷つけている。
「……キリトさん?」
後ろからあどけない声がした。
振り返ると、見知った少女の姿があった。髪をふたつに分けてまとめていて、ブレザーを赤に、スカートを黒にカスタマイズした制服を着用している。直葉の友人で、以前行動を共にしたビーストテイマーの中学生だ。
「らしくないですよ、キリトさん」
その少女──シリカは俺の右手を両手で包み込むと、にっこり微笑んだ。
「直葉ちゃんとなにかあったんですよね? さっき一緒にいるとこ見ちゃいました」
シリカは切なそうな笑みを浮かべ、俯いた。
「直葉ちゃんとなにがあったのかは、なんとなく想像がつきます。でもですね……キリトさん」
シリカは顔を上げると、真っ直ぐにこちらを見つめてきた。
「あたし、直葉ちゃんも悲しんでると思うんです」
「ああ……俺が傷つけたから」
「違いますよ! キリトさんだって傷ついてる。直葉ちゃんは、キリトさんを傷つけてしまったことで自身が傷ついてるんですよ」
「俺を……傷つけてしまったことに傷つく……?」
「そうですよ。……キリトさんがそんな悲しい顔してたら、直葉ちゃんは壊れてしまいますよ」
シリカが俺の目尻にそっと触れた。今更ながら自分が涙をこぼしていたことに気がつく。
「心配ないですよ、キリトさん。しばらくすればきっと、元に戻りますから」
シリカは再び微笑む。
次いでハッとなにかに気づいたような表情になると、俺の右手を離した。
「ご、ごごごごめんなさい! あっ、ううぅ……あ、あたし、職員室に用事があるんでした! そ、それじゃあさよなら、キリトさん!」
「え、ああ……うん」
シリカが走り去っていく姿が見えなくなるまで眼で見送ってから、俺は小さく呟いた。
「ありがとう……シリカ」
後書き
里香「うっわぁー……久々登場のクセして、なにこのマジ天使展開!」
珪子「甘いんですよ! 弱ってるとこつかないでどうするんですか!」
里香「さっきの発言台無しになってるわよ」
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