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友人フリッツ

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第一幕その七


第一幕その七

「立派な娘さんになったね」
「そうだね、本当に」
「奇麗になったよ」
 フェデリーコとハネゾーも彼の今の言葉に頷く。
「今じゃこの辺りで一番の美人さんかな」
「カテリーナも可愛いけれどね」
「有り難うございます」
 それまで何も言わず食べていたカテリーナも今のハネゾーの言葉にはにこりとなった。
「そう言って頂けると何よりです」
「そういえば」
「音楽はあるかな」
 フェデリーコとハネゾーはふと言った。
「ピアノか何か」
「誰か演奏できるかな」
「じゃあ私が」
 スーゼルがそれを受けて立とうとする。しかしそれはフリッツが止めた。
「ああ、お客様はいいよ」
「ですが」
「何なら誰か来てもらうし。誰がいいかな」
 そう考えているとだった。不意に窓の外からバイオリンの音が聴こえてきた。
「おや?」
「これはタイミングがいいな」
「誰から」
 ダヴィッドを含めた三人がその音に顔を向けると。ダヴィッドが窓の外に対して声をかけた。
「来てくれないか?」
「宜しいのですか?」
「うん、是非」
 こう声をかけたのだった。すると暫くして部屋の中に浅黒い肌の若い女がやって来た。波がかった黒髪を長く伸ばしている。はっきりとした顔立ちの美女である。赤と黒の服が極めて目立つ。当然ながらその手にはバイオリンがある。弦もその手に持っている。
「ようこそ」
「お招き頂き有り難うございます」
 その女がダヴィッドに礼を述べた。
「ジプシーのペッペです」
「ああ、ペッペかい」
 彼女の名前を聞いてすぐに頷くフリッツだった。
「誰かって思ったら」
「暫くぶりです、旦那様」
「フリッツでいいよ」
 彼女にも気さくに言うフリッツだった。
「フリッツでね」
「それでは。フリッツさん」
「うん」
 その呼び方に気さくに笑って応える。
「それで何だい?」
「フリッツさんに音楽を捧げたいと思いまして」
「それでさっきの音楽をなのかい」
「そうです」
 こうフリッツに述べるのだった。
「それで来たのですが」
「そうだったのか」
「如何でしょうか」
 フリッツの顔を見て問うペッペだった。
「曲は」
「よかったよ。けれど」
 曲は満足できた。しかしそれでもまだ聞きたいことがあった。そして彼は実際にそのことを彼女に対して問うたのであった。
「何で僕に音楽を?」
「フリッツさんの人徳にです」
「僕のって」
「貧しい子供達をいつも助けておられるではありませんか」
 彼女はこのことを彼に告げた。
「そうですね」
「あれは」
 それを聞いてこう返したフリッツだった。
「当然のことだから」
「当然だと仰るのですか?」
「そうだよ。困った人を助けるのは当然のことじゃないかい?」
 フリッツは特に何でもないといった様子で言葉を返した。
「それは」
「いや、そう言えること自体が凄いよ」
「そうそう」
 今の彼の言葉にこそ突込みを入れるフェデリーコとハネゾーだった。
 
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