友人フリッツ
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第一幕その六
第一幕その六
「是非ね」
「私に御礼なんて」
「いや、こちらとしてもね」
「御礼をですか」
「そうだよ。させてほしいんだ」
こう言うのであった。そうして。
「そうだ。まずは」
「はい?」
「座って」
まだ食事中だった。それで彼女にも食事を勧めるのだった。
「何か食べてよ」
「食事ですか」
「好きなものを食べていいよ」
また言うフリッツだった。
「君の好きなものをね。カテリーナ」
「はい」
「彼女の分も運んでくれないか」
「わかりました。それでは」
「あと君の分も」
彼女のものもだというのだ。
「持って来て。一緒に食べよう」
「私のもですか」
「他の皆はもう食べたかな」
彼女以外に家にいる使用人達のことである。
「それはどうかな」
「はい、もう」
食べたと答えるカテリーナだった。
「皆食べました」
「それなら仕方ないな。君も入ってね」
「有り難うございます」
こうして彼女も食事に入ることいなった。皆で食べる。ここでダヴィッドが戻って来た。
「ああ、食事中かい」
「君もどうだい?」
フリッツも食べている。その食べるのを少し止めて彼も食事に勧めるのだった。
「食事に」
「僕もいいのかい」
「君の分もあるよ」
こう言って勧めるのだった。
「だから是非ね」
「悪いね、いつも」
「いいさ。人間食べないと生きていけないからね」
笑顔でこう友人に言うのだった。
「さあ。だから」
「美味しいよ」
「是非君もこの楽しみを味わってくれないか?」
フェデリーコとハネゾーも彼を誘う。
「さあ、皆で」
「是非ね」
「そこまで言うのなら」
ダヴィッドも頷くのだった。
「言葉に甘えて」
「さあ、楽しんでくれ」
フリッツは自分から彼のコップにワインを注ぐ。そのうえで彼に差し出す。
「そして飲んでくれ」
「有り難う」
礼を述べてからその杯を受け取るダヴィッドだった。
「それじゃあ」
「さて、この楽しい宴に」
「足りないものは何もなし」
フェデリーコとハネゾーは相変わらず楽しくやっている。その後馳走も次々と食べていく。
「それにしてもスーゼルちゃんは」
「奇麗になったな」
「全くだよ」
ダヴィッドは二人の陽気な言葉に真面目な顔で頷いた。
「本当にね。大きくなったし」
「そうですか?」
「それにとても奇麗になったよ」
彼女を見ながら言うのだった。
「とてもね。奇麗になったよ」
「奇麗にですか」
「うん、なったよ」
彼はさらに言う。
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