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プリテンダー千雨

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桜通りの吸血鬼編
  第四話


私は神楽坂明日奈。麻帆良学園女子中学三年A組よ。ひょんな事から担任の子供先生が魔法使いだって知っちゃって、いまはパートナーとして仮契約してるの。
って、誰に説明してるのよ私は。
まあ、それはさておき。今日は茶々丸さんと戦った日の翌日なんだけど・・・

「あの茶々丸ってロボを仕留められ無かったのは不味いッス!きっと今頃、兄貴にパートナーができたことをチクってるに違いないッスよ!」

昨日の失敗についてネギのペットのカモ(私は“エロガモ”って呼んでる)が慌ててた。

「で、でも昨日は見逃してくれたし、」

「エヴァンジェリンも茶々丸さんも2年間私のクラスメイトだったから、本気で命を狙ってくるなんて思えないんだけど。」

ネギと私はエロガモをなだめようとする。

「甘い!兄貴も姐さんも甘々ッスよ!見てください、俺っちが昨晩“まほネット”で調べたんスけど」

すると、エロガモはノートPCのモニターにある画像を出した。そこにはエヴァンジェリンの顔写真が映っていて、さらにその上には“WANTED”の文字が・・・どう見ても手配書ね。

「あのエヴァンジェリンって女は15年前までは魔法界で600万ドルの賞金首だったんですぜ!」

「ちょ、ちょっと何よそれ!?」

何でそんなのがうちのクラスに居るのよ!

「とにかく奴らが今本気で来たらヤバイッス。下手すりゃ寮内のカタギ衆も巻き込まれるかも…」

「マ、マジッ!?」

「とりあえず、兄貴が今ここにいるのはマズイッスよ。」

「そうね、今日は休みでほとんど皆寮内にいるし…」

そう私とエロガモが話していると・・・

「うわあああーん!」

ネギが泣きながら杖にまたがって飛び出していっちゃった。って!?

「ちょっと!何処に行くのよネギ!!」

「ハッ!まさかあんな事を言ったからアニキは・・・」

「このバカガモ!!」

「いや、姐さんだって同意してたでしょうが!!」

うっ…そりゃそうだけど。とにかく、今はネギを追いかけないと!!




《千雨Side》

今日、私はビークルモードになって飛行訓練(と言う名の空の散歩)をやっていた。これはもう完全に私の日課の一つになっている。その影響で飛行機乗り風の衣装を作って着て自分のサイトにアップしたりもした。
さて、今日は航空部の活動が無いことは確認済みだし、思いっきり飛び回るとするか。
そう考えていた時だった。眼前に杖に跨った先生が迫っていたのだ。このままでは接触するので私は急いで避けようとする。先生の方も私に気付いて止まろうとするが間に合わず、私の主翼の先端に接触して墜ちてしまった。

「先生!!」

私はロボットモードにトランスフォームすると、先生の救出に向かった。




《ネギSide》

アスナさん達に迷惑を掛けないように飛び出してきたら、戦闘機とぶつかって落ちちゃった。不味いよ!この高さじゃ絶対助からない!!
でも、僕が死んだらもうアスナさん達に迷惑かけなくて済むのかな・・・

「何もう諦めたみてえな顔してんだ!!!」

その時、黒い大きなロボットがこっちに向かって飛んで来た。ロボットは僕をキャッチすると、ゆっくりと地面に着陸した。




《千雨Side》

危うく人を、それも知り合いを殺しちまう所だった。間に合って良かった。

「あの、あなたは一体・・・」

手の上に乗っている先生が私の顔を見上げながら聞いてきた。

「私はスチールレイン。宇宙から来たロボットだ。レインと呼んでくれ。」

とりあえず、父さんに与えられたサイバトロンとしての名前を名乗る。だけど、バトルスーツ姿と同一人物とは言わないでおこう。ややこしい事になりそうだからな。
因みに、この喋り方は某勇者なシリーズの第一作の主役ロボを元にした。私はジェット機に変形するからどちらかと言えば第二作のノ○スケヴォイスの勇者に近いんだろうけど。

「レインさんですか?」

「ああ。さっきはぶつかってしまって済まなかった。」

「いえ、僕の方こそ・・・って、申し遅れました!僕はネギ・スプリングフィールドって言います!!」

「ああ、よろしくだネギ。所で、君はどうしてこんな所を飛んでいたんだ?」

「実は・・・」

先生は何があったか話し始めた。マクダウェルに狙われている事、昨日絡繰と戦った事、そしてマクダウェルが昔賞金首だった事…ってマジか!?それから、皆に迷惑をかけない為に寮から飛び出してきた事だ。

「僕があそこに居たら、きっと関係の無い皆さんまで巻き込んでしまいます。だから、こうやって・・・」

「なるほど。」

ったく、考え方が単純過ぎんだろ。やっぱガキだな。しょうがねえ、ここは年上としてアドバイスするか。

「確かに、君の言葉も一理ある。」

「ですよね・・・」

「だが、君が出て行く事で心配したり悲しんだりする人も居るんじゃないのか?」

「あ・・・」

やっと気付いたみたいだな。先生は色々と非常識だが、悔しい事にクラスの連中からの信頼とか人気は大きいからな。

「でも、それならどうすればいいんですか?」

そうだな・・・答えが無い訳じゃないけど、父さんならこう言うだろうな。私がそう考えていた時だった。

「ああ!?」

急に先生が叫んだ。

「どうしたんだ!?」

「杖が無い!?」

「杖?」

それって、いつも先生が持ち歩いてたり、空を飛ぶのに使ってた奴か?

「どうしよう!大切な物なのに!!」

「・・・分かった、私も探すのを手伝おう。」

「いいんですか?」

「君が大事な物を落としてしまったのは私のせいだからね?」

「え?それってどう言う意味ですか?」

「こう言う意味さ。トランスフォーム!!」

私はビークルモードへと変形した。

「ああ!!さっきの飛行機!!!」

「そう言う事だ、さあ乗れ。空から探した方が多分早い。」

「分かりました。」

私は先生をコックピットに乗せると離陸後した。




杖の落ちた場所は多分私と先生が接触した場所の近くだと思い、その周辺を捜索したが中々見つからない。

「あの、レインさん。」

すると、先生が話しかけてきた。

「なんだい?」

「その、レインさんの事も少し教えてくれませんか?その、何処の星から来たのか?」

確かに、先生の話を聞いておいてこっちが何も話さないのは不公平だな。

「分かった。じゃあ、私の故郷の話をしよう。」

とりあえず、父さんから聞いたセイバートロン星の話をする事にした。何処から話せばいいのか分からなかったので、クインテッサが私達のご先祖様を作ったあたりから話したけどな。

「あの、どうしてレインさんは自分の生みの親や兵隊と戦ったんですか?」

すると、先生が聞いてきた。

「勘違いしているようだが、私が生まれたのは全ての戦争が終わって平和になった後だ。」

「あ、そうだったんですか。」

「だが、何故私達の先祖が戦ったのかは分かる。」

「本当ですか!教えて下さい!!」

「先祖達は皆“自由”が欲しかったんだろうな。」

「自由、ですか?」

「ああ。クインテッサによる奴隷としての扱いや、デストロンによる独裁に立ち向かったのは自由が欲しかったからだ。だが、何もしなければ自由は手に入らない。」

「そうですか・・・それでエヴァンジェリンさんは僕を狙うんですね。」

「ああ。だが、だからと言って彼女に降参するのか?」

「でも、エヴァンジェリンの自由のためには・・・」

「それだと君の自由はどうなる。」

「僕の、自由?」

「そうだ。君の自由・・・やりたい事は何だ?」

「僕のやりたい事。それは・・・これから卒業まで3-Aの皆さんと過ごして、“立派な魔法使い(マギステルマギ)”になる事です!!」

「それを成すためにはどうすればいい?」

「それは・・・エヴァンジェリンさんに勝つ事です!」

「ああ、その通りだ。」

やれやれ、やっと分かったみてえだな。

「あ!ありました!!あれが僕の杖です!!!」

その時、先生が一本の木の上を指差した。そこには確かに先生の杖が引っかかっている。

「よし、寄せるぞ。」

「お願いします。」

私はVITOL機のように滞空しながらゆっくりと木に近付いてキャノピーを開けた。そして先生は腕を伸ばして杖を掴む。

「やった!取れました!!」

大事な物を取り戻した先生は無邪気に喜び、その上に跨った。

「ありがとうございます、レインさん。このお礼は必ずします。」

「ああ。ではまた会おう、ネギ君。」

そして、私は先生の元から飛び去って行った。やれやれ、柄にも無い事のオンパレードだったな、今日は。やっぱり、私もサイバトロンって事か。




翌日。朝のホームルームで先生は前みたいにビクビクせず、むしろ堂々と入ってきた。

「おはようございます!エヴァンジェリンさんは居ますか!!」

さらに、開口一番にマクダウェルを指名ときたモンだ。どうも覚悟を決めてきたみてえだな。でもまあ・・・今日はマクダウェルは来て無いから空回りもいいトコなんだよな。とりあえず、教えとくか。

「マクダウェルなら風邪で休みだぞ。絡繰は看病のために一緒に休むんだそうだ。」

これは絡繰にメールで聞いて知った。最近アドレスを交換したからこれ以外にもよくメールのやり取りをしている。
って、あ。先生が教室を飛び出して言った。まあ、吸血鬼が風邪で休みとか信じられないよな。でも事実だそうだ。これも呪いによる弱体化の影響らしい。
え?見舞いに行かないのかって?絡繰が一緒なら大丈夫だろ。それに指名手配の件も15年前に取り消されてるって話だし、それを今の状況と照らし合わせると、今のマクダウェルは服役中みたいな状況って事だな。確かに私は正義のトランスフォーマー、サイバトロンだけど既に捕まった犯罪者をどうこうしようとは思わないからな。



続く
 
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