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友人フリッツ

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第三幕その四


第三幕その四

「どなたからそのお話を?」
「そうか、違うのか」
 ところが彼はここで自己完結してしまった。ほっと胸を撫で下ろしたのである。
「それは何よりだよ」
「何よりですか」
「うん、全く」
 そのほっとした顔でさらに言うフリッツだった。
「よかったよ。それでだけれど」
「はい」
「君に言いたいことがあるんだ」
 真剣な顔に戻って彼女に告げてきた。
「いいかな、それは」
「私にですか」
「そう、告げたい」
 向かい合っているスーゼルに対する言葉であった。それは。
「僕は君を」
「私を?」
「愛しているんだ」
 この言葉を告げたのであった。
「君をね」
「そうですか。私をですか」
「いいかな」
 あらためてスーゼルに告げた。
「僕が君を愛しても」
「それを拒める人はこの世にはいません」
 これがスーゼルの返答だった。
「特に私は」
「君は」
「はい、私は」
 スーゼルの顔が上気していた。顔が紅に染まっていく。その中での言葉だった。
「私もまた」
「君も?」
「フリッツさん」
 彼を見ての言葉である。
「私は貴方を愛しています」
「夢ではないんだね」
 このことをまず確かめずにはいられなかった。
「今の君の言葉は」
「どうして嘘なぞ言えるのですか?」
 これがスーゼルの返答だった。
「私がどうして」
「それじゃあ本当に」
「はい」
 その紅に染まった顔で頷いたのだった。
「私もまた御聞きしたいのです」
「何を?」
「私のこの愛も受けて頂けるでしょうか」
 こう問うのだった。
「フリッツさんはこの私の愛を」
「どうして受けずにいられるんだい?」
 フリッツの返答も同じであった。
「僕が君のその言葉を」
「それでは」
「うん」
 あらためてこくりと頷いてみせたのだった。
「御願いするよ、僕からもね」
「有り難うございます」
 今にも泣きそうな顔で応えるスーゼルだった。
「では私達はこれから」
「うん、愛し合うことができるんだ」
 見詰め合いながらの言葉であった。
「これで晴れてね」
「何という幸せ」
 スーゼルは泣いていた。歓喜の涙である。
「私にとってこれは」
「僕もだよ」
 フリッツは泣いてはいなかった。しかし喜びに包まれているのは同じであった。その喜びの中で彼女に対して言うのであった。
 
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