| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

久遠の神話

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第五十話 政府の判断その九

「あくまで可能性ですしその大尉をこの目で見てはいませんが」
「それだけの強さになると」
「勝つことは容易ではありません」
 この結論が出た。
「今の時点で遭遇したなら気をつけて下さい」
「わかりました」
 上城は大石の言葉に確かな顔で頷いた。とりあえずはこれで話は終わった。
 だがすぐに彼はこんなことも言われた。
「ところで、です」
「ところで?」
「上城君は最近学業の方はどうですか」
 学生の本分であるそちらはどうかというのだ。
「そちらの状況は」
「悪くないです」
 こう答えることができた。上城は穏やかな顔で述べる。
「志望校にもこのままいけば」
「行けますか」
「多分ですけれど」
「来年受験でしたね」
「はい」
「八条大学ですね」
 大石は八条高校の上の大学の名前も出した。
「あそこを受けられますね」
「そのつもりです」
「では学部は違うでしょうが私の後輩になりますね」
「神父さんも確か」
「そうです。八条大学出身です」
 彼もそうだというのだ。
「宗教学部キリスト教学科です」
「そのカトリックですか」
「キリスト教学科にはカトリック、プロテスタント、正教がありまして」
 この三つが全て備わっているというのだ。
「神父や牧師の資格を得られます」
「そしてそこでなんですね」
「私は神父にならせて頂きました」
 なった、ではなかった。ならせて頂いた、だった。
「神によって」
「神様に神父さんにさせてもらったんですか」
「そうです。これはカトリックの教理とはいささか違いますが」
 大石はこう前置きして話した。
「全ては神が定めておられました」
「神父さんが神父さんになられることも」
「運命でしょうか。予定されていたのです」
「予定説ですね」
 この考えは何か、上城は学校の授業で得た知識から述べた。
「それですよね」
「そうです、まさにそれです」
「確かあれはカルヴァンで」
「カトリックではありません」
「プレテスタントですよね」
「その中のカルヴァン派です」
 ルター派ではなくそちらになるというのだ。尚カルヴァンはルターよりも厳格で融通が利かない性格だったと言われている。
「その考えになります」
「カトリックじゃないんですね」
「日本ではそうしたことはなく私も違いますが」
 大石は前置きから上城にこのことも話した。
「あちらではカトリック、プロテスタントというだけで」
「物凄い戦争になってませんでした?」
「なりました。このことも日本のキリスト教ではどうとでもないことですが」
 大石もまた日本人だ、キリスト教の神父ではあっても日本人である。だから欧州のことはわからないkともあると言って述べるのだ。
「異端も然りです」
「異端ですか」
「異端も許されていなかったのです」
「魔女狩りとかですか」
「私は運命とは思っていません」
 それは全くだというのだ。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧