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ゲルググSEED DESTINY

作者:BK201
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第四十二話 暁と救世主

正直な話、アスランはアークエンジェルをテロリストとして扱われている様子を見た時、自分の中で感情の波が爆発していたことに困惑していた。

(議長は、アークエンジェルを利用してオーブを討つというのか?)

だが、そう思う一方で、同時に納得している自分もいるのだ。どちらが正しいのかも、どうすればいいのかも、一体何が間違っているのかも、判らない。考えれば考えるほどその思考の渦に嵌っていく。
戦争を終わらせるためにロゴスを討つ。その為にオーブを討つ。自分の欲しかった未来は本当にそんなものなのか?そう思うが、アスランはふとミネルバに乗艦したばかりの頃を思い出す。

『お前はオーブを討てるのか?―――そりゃこっちだって向かってこなけりゃ撃たんだろうが、状況が変われば最悪、本土まで攻めることになるんだぞ?それでもテメエは討てるのかよ?』

マーレに忠告されたこの言葉。今思うに、彼はこうなる可能性を考慮していたのだろうか。

「全く、お前の言葉にはいつも核心を突かれてるような気がするよ」

今はラー・カイラムに居るマーレに感謝と皮肉を込めたような発言をするアスラン。その目には覚悟があった。迷うわけにはいかない。けれど、見過ごすわけにもいかない。

(俺自身の目で、議長の思い描く未来を見る――――)

その先にある世界が本当に自分たちにとって幸福な世界なのか?事実を確かめるべきなんだ。そう思いながら彼はセイバーに乗り込んだ。







今になって―――レジェンドを受け取った時からだろうか?過去を振り返ることが多くなりだしてきた。

『良い曲だね―――もっと聞かせてくれないか?』

ピアノを弾いているとラウがそう言って来てくれた―――嬉しかった。そう思っていつだって彼に最高の曲を聞かせてあげようと努力した。
―――いつからだろう、自分に残された時間が少ないことが理解させられたのは……。

『ねえ、ラウは?』

『ラウは―――もういないんだ』

ラウが死んだことを知った。自分も彼と同じ運命が背負わされていることを知った。そのことを悲しく思う必要はなかった。だって、ギルの言葉はいつだって正しかったから……。

『だがレイ、君もラウだ―――それが、君の運命なんだよ―――』

俺にとって、ギルとラウの言葉だけが真実だった。世界は今、ギルの手で生まれ変わろうとしている。理念だけでは革命は成し得ない。必要なのは実現する《力》だ。

『連合か、プラントか、今また二色になろうとしている世界に、私達はただ邪魔な色なのかもしれません。ですが、だからこそ今ここで消える訳にはいかないのです。守るべきものの為に―――』

そう言って、アークエンジェルはギルの判断を間違いだと疑念を投げかけ潰えた。変化は不安を生む。故に疑念を投げかけることは容易い。だが、答えを出さずに惑わせている彼らこそ間違っている。

『ロゴスを討つと言う事に対して色々と考える事はあるだろうが―――今、君達にできる事を精一杯やってくれたまえ』

考える必要性などあるのだろうか?ギルの言っていることは正しい。レジェンドを受け取ったのもアスランが辞退しなくとも、適性のあった俺を選んだのではないだろうか?

「俺のような存在が産みだされないためにも、やらなくてはならない……」

もうすぐだ……もうすぐ終わる。ギルが正しい未来を創るために、俺は、あと少しだけもてばいい。そうすれば、悲しみに暮れることも、俺のような存在が産まれることもなく、総て―――そう、総てが終わる。

「だから――――――」

ギルの世界を俺が俺たちの手で実現して見せる。その言葉を胸に刻み、俺は歩みを止めない。その世界を創るために残された時間で俺がやれることは、あとどれくらいあるのだろう。







「結局の所、これらの回答、要求に対して何らかの変化なし。オーブとの戦闘は予定通りとり行う、ね」

オーブの発言内容を加味しても戦闘が無くなるという事はないらしい。まあ、当たり前の事実だしその辺はどうでもいい。クラウはそう思いながら資料を読み直す。オペレーション・フューリーが発動されるまであと僅かだろう。セントヘレンズを旗艦として戦闘を開始する準備は整いつつある。何故ミネルバやラー・カイラムを旗艦にしなかったのかに関しては疑問を感じるが、まあそのあたりはどうでもいい。
戦闘の準備を整えているのはオーブも同様でミネルバとかつて戦闘を行ったタケミカヅチを中心にイージス艦やクラオミカミ級を中心に防衛陣を築きつつあった。

『最早どうにもならんようだな?私は正義と切なる平和への願いを持って、断固これに立ち向かう。ロード・ジブリールをオーブから引きずり出せ!』

警告した時間となり、攻撃が開始される。序盤の戦闘は艦隊戦だ。どちらかの陣営が崩れ去ったところで本格的にMS戦闘が始まることになる。

「問題はその後かな……」

オーブが匿ったロゴスの二人。彼らがどこにいるかが問題だ。国内で高みの見物をしているというならセイラン家か国防本部にいるだろう。しかし、脱出が目的だとしたらどうだ?一番ありえるのはマスドライバー施設。だが、シャトルの発射施設ならいくらでも存在する。それを全て虱潰しに探すのは不可能といってもいい。発射されてから撃ち落とす。或いは発射される前にオーブを制圧するしかないのだ。

「まあ、やるしかないか……」

『各員はMSの発進準備を整えてください』

ラー・カイラムのオペレーターであるアビー・ウィンザーの声が聞こえる。この戦闘はヘブンズベース戦の時みたいに一気に撃ち合う戦いではなく、どちらかといえば長期戦になるだろう。上手く編成しないとあっという間にこちらが息切れするな。

「第一陣はマーレ、ルドルフ―――二人に任せるけどいいかい?」

『そりゃいいが、こいつとか?』

マーレとしては金色に塗装したルドルフと一緒に出ることになるのはあまりお気に召さないらしい。まあ、気持ちはわかる。クラウ自身も頭部の修理の際に散々苦労させられたのだから。

『フッ、心配する必要などないさ。この僕と共に行くのだ。敵を恐れる必要などない』

随分と的外れな指摘をしてくるが、まあ彼が役に立たないという事はないのでマーレも出撃には了承した。

「第二陣は俺とアレック。そして第三陣に残りのメンバー。第二陣出撃と同時に第一陣は後方支援に変更、その後は第三陣とタイミングを計っての交代。質問はある?」

『隊を三つにも分ける理由は?二つでも構わんと思うのだが?』

アレックが戦力を分散してまで三つに分ける必要はあるのかと尋ねる。確かに普通に戦闘を行うなら三つではなく二つの方が効率が良いだろう。しかし、態々三つに分けたのには理由がある。

「ロゴスの二人を発見した際、すぐに行動を起こせるメンバーが必要になる。その場合、直接行動が可能な部隊があった方がロスも少なくて済むからね。だからこそ、二部隊ではなく三部隊に分けたんだよ」

アレック達も納得したのか、それ以上の質問はせずに発進準備を進める。

『各員、出撃してください』

アビーが出撃するように命ずる。グラスゴーにMS部隊を直接指示する権限が無いわけではないので指示をしたのだろう。

『了解した、マーレ・ストロード―――ゲルググ、出るぞ!』

『ルドルフ・ヴィトゲンシュタイン―――ゴールデンギャン、出撃する!』

二人がオーブ軍を迎撃するために出撃する。さて、勝利の女神はどちらに微笑むのか?







「私は、また間違えたというのか……」

カガリは自身の行動の所為でオーブが討たれる名目が出来たことに悔しさのあまり思わず涙を零す。

―――私の最も幼いオーブの記憶はお父様に見せてもらった国の情景だった。

『カガリよ、このオーブという国を娘としてどう思う?』

美しい国だと思った。理想の国だと感じた。私はこの国を受け継いでも恥じない国家元首になるといつも言っていた。そして、そう言っていつも諌められていたことも。

『カガリ、気持ちだけでは成せぬことは多い。だが、力だけでも何かを成すことは難しい。そして、《意志》と《力》、その両方を持っても国を導くのは難しい。真に必要なのは国を守り、民を守り、その国民の思いを支える《理念》だ』

お父様が言っていることは正しいと感じていた。けど、私はそれを実行できなかった。私の選んだ道で結果、オーブが滅ぼされそうになっている。何一つ変えることの出来なかった私の罪だと感じてしまう。だから、そんな私だから議長は所詮何も出来ない『姫』でしかないと、そう思っていたのだろう。

『だが、その理念すらもあくまで指針に過ぎん。本当に必要なものは国を思う人の心によって変わる。お前が私と違う道を選んだとしても私はお前を恨むことはない。だから、カガリ、お前は――――――』

最後に言ったその一言は未だに思い出せない。幼き日に一度だけ言われた言葉だから仕方がないのかもしれないが、それ以外は覚えていたのだから、よっぽどその言葉だけは意識を向けていなかったのかもしれない。

「オーブが再び討たれようとしている今、私は如何するべきなのですか、お父様?」

分からない、自分のしてきたことで国が亡ぶかもしれない。なら、すぐにでも出るべきだ。でも、私は―――

『本当に守りたいと思うなら、もっと考えてから行動しろ。俺は、今だって考えて、それでザフトにいるんだから。カガリ、君はオーブの首相だ。だからこそ、オーブを撃たれるのは嫌だっていうことはわかる。でも、だったら本当にするべきことは何なのか、考えてほしいんだ――――――』

アスランの言葉が胸に突き刺さる。彼はこうなることが分かっていたのだろうか?私が本当にすべきことは何なんだ?このまま出撃する事か、それともこのまま国が滅ぼされるのを見ているだけなのか?

「もう、いつまで不貞腐れてるのよ、あなたは?」

そう言って目の前にやってきたのはエリカとキサカの二人だった。

「でも、私のせいで……私が、こんなことをしたばかりにッ……」

涙を零しながらそう言う。そうだ、全部私の責任なのだ。こんなことになってしまったのは、私が勝手なことをしたから、国に戻ろうとしなかったからだ。そんな風なことを言って泣きじゃくってるとエリカが私の頬を叩いてきた。

「うじうじと言って引きこもるのは誰にだって出来る事よ?でも、貴女は何をするべきなの?どうしたいの?国を守るんでしょう!それが、あなたのカガリ・ユラ・アスハの決めた道なんでしょう!」

そう言われて衝撃を受ける。国を守る―――それが私の意志。オーブを離れた時、お父様との最後の別れをした時に私が決めたのではなかったのか?なら、今自分がすべきことは何だ?国を守る事だろう!

「うん、良い顔つきになった。それじゃあなたのお父様、ウズミ様の言葉を聞いておかないとね」

「―――お父様の?」

そうして連れてこられたのは格納庫の一つだった。その正面には碑があり、こう書かれている。

「この扉開かれる日の来ぬことを切に願う……?」

そうして、開かれる扉。その先にあったのは―――

「黄金の……MS!?」

『カガリよ、もしもお前が《力》を欲する日来たれば、その希求に応えて私はこれを贈ろう』

お父様の声が聞こえ、私はこの黄金のMSがあることを含めて驚きが増す。

『力はただ力―――多くを望むのも愚かなれど、むやみに厭うのもまた愚か。守るための剣、今必要ならばこれを取れ!お前が定めた、成すべきことを成すためならば!』

国を、民をオーブを守りたいと思うその私の想い。それは愚かで、どうしようもなくて、たくさんの間違いがあったものだけど――――――

『―――だが、真に願うはお前がこれを開く日の来ぬことだ。今この扉を開けしお前には届かぬ願いかもしれないが―――《どうか幸せに生きよ》カガリ』

「おとう、さま……」

あの日の言葉を思い出す。幼いあの日に一度だけ言われた言葉。

『お前が私と違う道を選んだとしても私はお前を恨むことはない。だから、カガリ、お前は自分の道を進め。そして、幸せに生きてゆくんだ』

「カガリ、アカツキに乗るか?」

キサカがそう問いかける。黄金のMSアカツキ―――私の罪は、国をこんな風にした責任は消えないだろう。それでも―――いや、だからこそ私は国を救ってみせる。それが私の想いだから―――ユウナ達が間違っていたわけではない。キラ達に責任を押し付ける気もない。総ては私が選んで、それで進んだ道だから。だから―――

「カガリ・ユラ・アスハ―――アカツキ、発進する!!」

この戦いが終わったら、私は責任を負う。今度こそ逃げない。オーブを失わせなんてしない!
 
 

 
後書き
今話を書いてて思ったこと。クラウ視点いらなくね?タイトルでもわかるでしょうが暁=アカツキ=カガリ、救世主=セイバー=アスラン……本気でクラウ視点いらないな。
とまあいつも恒例のクラウいらない説は置いといて、前話のロゴス→ユウナ→議長といった二転三転に色々とやりきった感が個人的にあったので今話では若干カガリ救済を(笑)
別に作者はデスティニーで嫌いなキャラは特にいないです。この作品ではアークエンジェル組アンチしてるけど、それはあくまで主人公たちの視点がミネルバ側だからです。
まあ各々の主張は時々おかしいように感じたりもするけど、それが人だしって思ってます。シャアだって母性を求めて隕石落とししたんだから(笑)
強いてあげるなら作者はSEED時代の恋人関係はアスカガが一番好きだったので放送当時はメイリンが悪女にしか見えなかった。いや、今はそんなことないですよ? 
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