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八条学園怪異譚

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第三十九話 狸囃子その九

「具体的に泉をどうするかね」
「それですか」
「どうするかですか」
「今までこのころを真面目に考えたことなかったのね」
「見つけることだけでした」
「それからのことは」
 実際にそうだとだ、二人も答える。
「ちらって考えたことはありますけれど」
「これといって」
「まあねえ、そういうことって多いからね」
 茉莉也は人生経験からも話した。
「見つけたいけれどね」
「ただ見つけたいだけって考えてることはですか」
「多いんですか」
「例えば大学に合格したいけれど」
 具体的な例をここで挙げられる。
「ただ合格したいだけでね」
「後具体的に何をするかは考えていない」
「そういうこともありますね、確かに」
 二人も話を聞いて納得した。
「だからですか」
「今の私達も」
「そう、そんな感じね」
 大学に合格したいだけで受験している受験生と何処か似ているというのだ。
「見つけたいだけだから」
「そこからがないんですね」
「どうするかが」
「そう、まあ冒険心というか探究心というかね」
 それはというと。
「悪くないものだけれどね」
「じゃあいいんですか」
「悪くないんですか」
「そう、まあ泉のことはそろそろ考えていくってことでね」
「今は、ですね」
「中庭に行って」
「そう、狸さん達と会おう」
 こう二人に話してだった、そうして。
 三人で中庭に来た、そしてだった。
 茉莉也はその中庭で車座、狐達と同じくそうなって酒を飲み色々と食べている狸達に自分から挨拶をした、その挨拶の言葉はというと。
「こんばんは」
「ああ、こんばんは」
「来たんだ」
「ええ、今日はお客さん連れて来たわよ」
 こう明るく言うのだった。
「とはいっても知ってる娘達よね」
「ああ、大学の農学部で会った娘達じゃないか」
 狸のうちの一匹が二人を見て言った。
「今日はここに来たんだ」
「こんばんは」
 二人はここで狸達に挨拶をした、それから言うのだった。
「今日はここの泉を探しに来たの」
「それで来たの」
「そうか、じゃあまずはか」
「わし等と楽しく飲む前にか」
「ちょっとね、泉を探させて」
「そうさせてくれる?」
「ああ、いいよ」
 その狸は二人に笑顔で応えた。
「そこの倉庫だよね」
「ええ、そこなの」
「そこが泉って聞いたから」
「よし、じゃあな」
 別の狸が言って来た、その狸はとうと。
 相撲の親方の様な立派な和服を着ている、大きさは他の狸達より遥かに大きい。その狸が二人に対して言って来たのだ。
「その倉庫の鍵はいるかい?」
「そういえば閉まってるね、その鍵は」
 茉莉也がその和服の狸の言葉に応えて言った。
「そうだったわね」
「そうだ、合鍵なら持っているからな」 
 それを使うかどうかというのだ。
「貸すぞ」
「ええ、じゃあ御願いね」
 茉莉也は二人の代わりに狸に応えた、二人の考えを先に読んでだ。 
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