八条学園怪異譚
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第三十九話 狸囃子その七
「関わったら危ないですから」
「お父さん達にも言われてきました」
そうだったというのだ、彼等にしてもだ。
そうした話をしながらだ、一行は中等部に入った。
中等部を超えてすぐにだ、茉莉也は二人に笑顔で言った。
「ここ来るの久し振りなのよね」
「先輩ってこの中学出身でしたね」
「そうでしたね」
「そうよ、保育園からね」
八条学園に通っているというのだ。
「幼稚園も小学校もね」
「それで中等部もですか」
「通っておられたんですね」
「そうなのよ、いや懐かしいわね」
笑顔で話す茉莉也だった。
「ここに三年間通ってたのよ」
「先輩にとって思い出の場所なんですね、ここも」
「そうなんですね」
「そうなの、よく遊んだわ」
こうも言う茉莉也だった。
「いや、嬉しいわ」
「嬉しいんですか、ここにまた来られて」
「そうなんですね」
「そう、懐かしくてね」
その感情に加えてだというのだ。
「嬉しいのよ」
「思い出の場所にまた来られて」
「それで、ですか」
「とはいっても学園全体が私の家みたいなものだけれどね」
茉莉也にとってはそうなのだ、生まれた頃からこの学園の中で生まれ育ってきているからだ。
「ここもなのよ」
「この中学校もですね」
「好きな場所なんですね」
「そうなの、それこそ校舎の隅まで知ってるわ」
だから案内も出来るというのだ。
「勿論狸さんの場所にまで案内出来るわよ」
「何か騒ぎ声聞こえますね
ここで聖花が言った。
「遠くから」
「あっ、もう聞こえてきたわね」
「あの声がですよね」
「そう、狸さん達のね」
声だというのだ。
「そうよ、中庭の方ね」
「あの声がする方が中庭ですか」
「この中等部の」
「そうよ」
その通りだというのだ、茉莉也はここで声がした方を指差してあらためて二人に対して語った。
「あっちの方がね」
「じゃあ今からそっちに行って」
「それで」
「体育館もね」
そこにも行くというのだ。
「いいわね」
「はい、目的の場所にもですね」
「行くんですね」
「まあ今回は狸さん達だから」
体育館ではなかった、それは高等部の普通科だ。
「とりあえずね、中庭に行ってそれからよ」
「狸囃子ですか」
ここで聖花が言った。
「狐さんの時と同じで童話みたいですね」
「童話ね」
「はい、怪談の筈なのに」
「童話と怪談は似てるのよ」
茉莉也は聖花の言葉にこう突っ込みを入れた。
「都市伝説もね」
「そうなんですか」
「そう、童話も妖怪さんや幽霊の人達が出るでしょ」
「はい」
このことはその通りだ、こうした存在は童話にもよく出る。
「怪談にもね。それで都市伝説も」
「あっ、怪談ですね」
愛実がここではっと気付いた。三人でその中庭に向かいながら話す。
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