ドラクエⅤ主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?
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二部:絶世傾世イケメン美女青年期
五十四話:最後の一仕事
思い返せば、相手を力で捩じ伏せてから従えたということは、無かった気がする。
なんかあったような気もしなくも無いが、うん、無いね、たぶん無い。
しかしやはり、モンスター使いの卵としてはね!
たまには基本に立ち返って、力を見せ付けたのちに、従えないとね!
マリアさんを痛い目に合わせた落とし前とか、考え無しなことをするとどうなるかという見せしめとか、色々含めてね!
「さて、お前たち。覚悟は、いいだろうね?」
と、既に殴りかかっているヘンリーの背後から、新入りの魔物たちにプレッシャーをかけてみます。
ヘンリーに殴り飛ばされてた一体と、攻撃直後の隙を狙って攻撃を仕掛けようとしていた二体が、こちらの気配に気付いてビクッとします。
何故かヘンリーもビクッとしたような気がするが、まあ気のせいということにしておく。
お馬鹿な割には危険察知能力はまあまあだが、もう少し周囲の状況を冷静に見極める観察力があれば、もっと良かったね!
上から与えられた使命がなんだったのか、先任の魔物がどう振る舞ってるのか。
よく見て考えていれば、余計な恐怖を味わわずに済んだのにね?
私としても、散々鍛えに鍛えた戦闘力を、十年発揮する機会が無かったわけですからね!
腕試しに、死なない程度に!
思いっ切り殺らせて、いや戦らせてもらいます!
などという一方的な蹂躙を詳細に語る意味は無いので、割愛。
とりあえず完膚無きまでに叩きのめし、倒れ伏した魔物どもの胸ぐらを掴み上げて、一体ずつ目を合わせて従わせておきました。
こうなってはもはや口で語る必要もありません。
先程までの威勢の良さはどこへやら、ヤツらの瞳は捨てられた子犬のように怯えて震え、恭順の意がありありと示されています。
まあ私も、鬼では無いし。
叩きのめしたことにより禊も一応は済んだということで、睨み付けたのちは、にっこり優しく微笑みかけておきましたけれどもね!
一回は、許す。
次は、無いよ?
という、愛を込めてね!
まあ次とかの前に私はいなくなるわけですけれども、これだけやっとけば、当面は私がいなくとも大丈夫でしょう!
何故かヘンリーが、魔物どもに憐れみの目を向けた上に、
「鬼だ……」
とか呟いてたが、意味がわからない。
美女を特段の意味も必要も無く痛め付けるような不届き者を、一回痛め付けただけで許してやる、海のように広い心を持った私に対して!
ヘンリーだって、一緒にぶっ飛ばしたのに!
ヘンリーに任せた一体だけ、明らかに傷が浅いけれども!
そんな些末なことはともかく、ヨシュアさん到着までに最低限すべきことは終えて、マリアさんは勿論、一応は私の傘下に入ったことになる魔物どもも、治療はしたいところですが。
ヨシュアさんに現場を見てもらわないといけないし、私の教育の成果で奴隷仲間のみなさんにもホイミ程度は使える人が複数いるし、教団側の人間にも魔法の使い手はいるようだし。
私が拘束されても治療できる人手がある以上、ここは心を鬼にして、現場保存を優先すべきですね!
と傷付いた美女を前に心を痛める私の前に、ヨシュアさん以下数名(人間)が到着しました。
「どうした。これは、何の騒ぎだ」
言葉に緊迫感を漂わせながらも、声を荒げること無く、冷静に状況を確認するヨシュアさん。
うん、なかなか出来る雰囲気ですね!
マリアさんのお兄さんだけあって、かなりのイケメンだし!
妙な宗教にハマってるところは、かなりのマイナスポイントですけれども!
宗教についてはマリアさんの件で足を洗えるなら洗いたいところだろうし、一緒に脱出できるなら前向きに検討したいところだが、まあ無理なんだろうから諦めよう。
と、私が勝手に結婚相手候補に挙げたり外したりしてるうちに、状況の把握を終えたヨシュアさんが、マリアさんの手当てと、私たちの拘束を命じます。
奴隷仲間のみなさんはざわざわしてるし、魔物たち(人間に擬態中)も、平静を装いながらも心配そうに見てますが。
いつかは脱出するつもりであることは、双方に伝えてあったのでね。
今がそうだと、気付いてる人と魔物が、どれだけいるかはわからないけど。
そのために、私がいなくても当面は回るような体制を作ってきたし、魔法も教えてきた。
その体制がいつまで保つかはわからないし、どんな理由を付けても結局は私は、この人たちを見捨てることになるのかもしれない。
それでも、私の目的のためには、どうしてもここを出ないといけないから。
何を捨てても、諦められないことがあるから。
「ごめんね、みんな。今まで、ありがとう」
擦れ違った人と魔物に辛うじて聞こえる程度の小さな声で、伝えます。
人も、魔物も。
第一印象は最悪だったけど、どっちもいい人たちで、いいヤツらだった。
ゲーム通りなら、あと十年ちょっと。
その期間が長くなるか、短くなるかわからないけど、でもきっと助けに来るから。
一度は見捨てて出ていく私が、身勝手かもしれないけど、それでも。
それまで、どうか。
死なないで、生きていてください。
そんなわけで、牢獄に囚われている現在。
「一応、ゲーム通りの感じで進んだね」
「そうだな。しかし、お前……鬼だな」
「意味がわかりません。か弱い美女を痛め付けるような輩には、当然の報い!むしろあの程度で済ませるなんて、私は優しすぎる!ヘンリーは、甘すぎる!!」
「完全に、弱い者いじめだったろ……」
「最初にそれをしたのはあっちでしょ!因果応報!本当は十倍返しでもしたいところを、そこまでやったらさすがに死にそうだから、ギリ死なない程度で我慢したんだから!」
「あれ以上って、つまり死ぬってことだろ……。最悪じゃねえか……」
「もっとやろうと思えば、回復してまた痛め付けることもできた」
「本当に鬼だな、お前」
お迎えが来るまで、暇なので駄弁ってます。
ゲーム通りに進む保障は無いが、足掻こうにもなにもできないし。
「あー、マリアさん大丈夫かなー。やっぱり、マリアさんだけでも回復しとけば良かったかなー?」
「大丈夫だろ。お前しか治せないわけでも無いんだし」
「そうだけど!やっぱり、キレイに傷が癒えたのを確認しないことには!心配なわけ!ヘンリーは、心配じゃないの!?」
「それは、それなりに心配ではあるけどよ。お前のその情熱は、なんなんだよ。昨日今日会っただけの相手に」
「そりゃあ、この世の見目麗しく、美しい心を持った女性を愛し守るのが、私の使命のようなものだからね!」
イケメン美女としての、譲れない部分ですね!
例え愛を返されなかったとしても、こちらから愛が有る限り問題無い!
マリアさんは中身も外見も余裕で合格ラインですからね、ヘンリーのことがどうでも、確実に庇護対象ですよ!
ヘンリーにそこまでのメンタルに至れとは言わないというか、なられても困るけど(宿敵的な意味で)。
それにしても、ちょっと冷たくね?
会話もしてなかった気がするし。
「……マリアさんってさ。美人だよね?」
「そうだったか?」
興味薄ッッ!!
これは、無理か?無理なのか?
好みじゃ無かったのか?
「……でもさ。助けに、駆け付けてたよね?」
そこに、一筋の光明が、あったりなんかしないだろうか。
「なんだ?妬いてるのか」
「それは無い」
「即答し過ぎだろ」
無いものは無いですし。
「放っといたら、お前が暴走するだろ」
ああ、そういう。
お目付け役的な。
これはアレだね、無理かもわからんね。
たぶん一緒に塔登ったりするし、まだ望みが無いわけでは無いけど。
過剰な期待はしないようにしよう。
……別に嫁なんか見付からなくても、城に置いてくればいいだけだしね!!
と、擦り付けることに関しては諦めも必要かもしれないと、私が割り切りかけたところで、ヨシュアさんがマリアさんを連れてやって参りました。
ひとまず、脱出は確定と見ても良さそうだね!
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