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万華鏡

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第三十九話 読書感想文その四

 母が来た、母は琴乃が読んでいるその本を見て顔を曇らせてこう言って来た。
「そうしたj本はここでは読まないでね」
「駄目なの?」
「だってあんた今谷崎潤一郎読んでるでしょ」
「ええ、読書感想文でね」
「あの子が読んだらどうするのよ」
 琴乃の弟、彼がだというのだ。。
「だからよ」
「ここで読んだら駄目なのね」
「そういうのは自分のお部屋で読んで」
 読むなとは言わないがそれでもだというのだ。
「あの子の目の届かないところでね」
「やっぱり谷崎って問題があるのね」
「当たり前よ、発禁処分を受けたこともあるし」
 里香と同じことを言う母だった。
「それにね」
「それによね」
「そう、国会でも問題になったから」
 やはり里香と同じことを言う。
「だからよ」
「そうなのね、じゃあ」
「読書感想文なら急いで読みなさい」
 母はこうも言った。
「いいわね」
「うん、だから今読んでるの」
「夏休みももうすぐ終わりだから」
 母は娘にこのことも言った。
「宿題全部終わってからね」
「それからよね」
「そう、始業式を迎えないと」
「いつも通りね。何か今年は読書感想文だけ残って」
 他の宿題は終わらせた、だがそれだけはだった。
「どの本読もうかって迷ってたら」
「それで谷崎にしたの」
「他にどんな作家の本がよかったかしら」
「色々あるでしょ、夏目漱石とか太宰治とか」
「里香ちゃんと同じこと言ってるわよ」
「というか読書感想文ならね」
 それならばというのだ。
「そうした人達でしょ」
「他ないの?」
「海外だと若草物語とか?」
「やっぱり里香ちゃんと同じこと言ってるわよ」
「それか赤毛のアンか」
「また同じだから」
 娘はこう母に言う。
「というか何で同じなの?」
「定番っていうかね」
 それでだというのだ。
「お母さん実際に読んできたから」
「それで読書感想文に書いてたの」
「ええ、そうよ」
「ふうん、お母さんはそっちだったの」
「若草物語とか赤毛のアンね」
 つまり海外文学派だったというのだ。
「他には三銃士も呼んだわよ」
「三銃士もなの」
「あくまで三銃士の部分だけだけれどね」
 限ってきた、そこだけだとだ。
「あのお話本当はかなり長いから」
「鉄仮面が続編だったかしら」
「違うの、三銃士はダルタニャン物語っていう長編の中のお話で」
「ダルタニャン物語?」
「実はダルタニャンって実在人物なのよ」
 母は琴乃にこのことも話した。
「三銃士もそれぞれ実在のモデルの人がいてね」
「へえ、そうだったの」
「ダルタニャンの半生を書いた作品なのよ」
 そして三銃士はそのうちの一部だというのだ。
「かなり長い作品で鉄仮面もその中にあるのよ」
「何か凄く長いみたいね」
「分厚い文庫本で十一巻あって」
 その巻数のことも話す。 
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