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オベローン

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第一幕その四


第一幕その四

「それでですね」
「うん」
「それで一体」
「公爵」
 ヒュオンに声をかけてきたのだった。
「貴方は今恋をされていますね」
「えっ、いや」
 そのことを言われてまずはギクリとなるヒュオンだった。表情にもそれが出ている。
「僕は何も」
「何もじゃありません。私は妖精です」
 パックはにこやかに笑ってヒュオンに告げるのだった。
「そうしたことはよくわかっています」
「何と、そうだったのですか」
「あっ、そうだったのですか」
 シェラスミンも今の主の態度を聞いてそれで事情を察したのだった。
「旦那様は最近それで」
「実はそうだったんだ」
 ヒュオンもここで観念して遂に彼に言うのだった。
「僕は今夢で出会った人に恋をしているんだ」
「夢でですか」
「うん。あれはバグダットの太守の娘で」
 こう話すのだった。
「レツィアというんだ。素晴らしい美人なんだよ」
「そうだったのですか。夢で」
「うん。とても素晴らしい人でね」
 ヒュオンは恍惚とした声で話すのだった。
「夢だけじゃなくて本当に会いたいよ」
「会えますよ」
 パックは早速彼に告げてきた。
「そのレツィアさんに」
「それは本当かい!?」
 ヒュオンは今のパックの声を聞いて驚きの声をあげた。
「けれど彼女はバグダットにいるんだ。それでどうして」
「私は妖精です」
 しかしパックは平然とした顔で彼に返すのだった。
「ですから何の問題もありません」
「問題ないというと」
「どうするんですか?」
「すぐにバグダットに向かいます」
 パックはこう二人に言うのだった。ヒュオンだけでなくシェラスミンに対してもだ。
「すぐに。宜しいですね」
「何と。すぐにバグダットに」
「行けるのですか」
「公爵だけでなくシェラスミンさんも」
 やはりここでも彼に声をかけるのだった。
「貴方も御一緒に」
「おや、私もですか」
「はい、どうぞ」
 にこやかに笑って彼に告げるのだった。
「それでは行きましょう、すぐに」
「レツィアに本当に会える」
 ヒュオンはそれを聞いて恍惚とした顔になっていた。
「バグダットで」
「それでは」
 パックが右手の親指と人差し指を鳴らすとすぐだった。三人はそれだけで異国の城の城壁の前にいた。その高い城壁から丸いドームを思わせる屋根の建物が多く見える。
「ここが」
「まさかバグダットなのですか」
「はい、そうです」
 パックはその城壁の向こうに見える多くの建物を見て言う二人に答える。
「その入り口です」
「まさかすぐに来るとは」
「本当にバグダットに」
「そうです。それではですね」
 彼はすぐに二人にまた告げてきた。
「服装を変えましょう」
「服をなのか」
「今御二人はフランクの服ですが」
 その服のことを指摘するのだった。
「そのままでは都合が悪いですし」
「確かに」 
 シェラスミンはそれを聞いて頷いた。
 
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