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とある英雄の逆行世界

作者:大城晃
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幼年期編
第6章
  帰省しよう~Part.2~

 
前書き
帰省編その2です。 

 
「はじめまして美琴さん、当麻くん。衛宮凜と言います。でこっちが…」


「ええっと凜の…夫…の衛宮士郎だ。はじめまして美琴ちゃん、当麻君」


「はじめまして御坂美琴です。今年で小学1年生になります」


「上条当麻です。小学3年生です」


 男女を美琴の第一印象で表現するなら、ものすんごい美人と日本人離れした(顔のつくりは東洋系であるのだが日本人とは思えなかった)印象の精悍な男性だ。男性が“夫”と名乗ったときに二人の頬が朱に染まった事から新婚さんだろうなぁとその場にいる全員が思っている。


「えっとね、美琴ちゃん、当麻君。凜さんと士郎さんは旅掛さん(お父さん)の知り合いなのよ」


「お父さんの?」


 御坂旅掛。御坂家の大黒柱であり、あまりに広すぎて交友関係がつかみきれない御仁だ。
 美琴は旅掛の友人かということでとりあえず納得はした。だがどういう関係の知人なのだろうか?という疑問は抜けない。今まで旅掛や美鈴が自身の友人を美琴や当麻に紹介してくることなんてなかったし、美琴が“あの世界”ではあったこともない人物だからなおさらだった。


「ええ、そうよ。今日美琴ちゃんと当麻君に二人を紹介したのはちょっとした理由があるんだけど…実は凜さんと士郎さん2学期から学園都市で教師として仕事をすることになったらしいの」


 なるほど、と美琴は心の中で思いながら美鈴の狙いを推察する。学園都市において両親たちが信用できると判断した人間がいることのメリットなどひとつしかない訳だから想像は容易であるわけだが。

 つまりは…


「それでね美琴ちゃんたちがOKならって条件付なんだけど、凜さんたちと一緒に生活しない?」


 自分たちの子供に本当に信用できる保護者をつけることができる、これに尽きる。

 それにこれは美琴にとっても悪い話ではないのだ、少なくとも何かあった時に信用できる人間は大いにこした事はないのだから。凜と士朗が信用できるかどうかはまた別の話ではあるが問題はない。美琴は“旅掛())”を信用しているだけなのだから。凜と士朗個人個人を信用するかどうかについてはこれから判断していけばいいのだ。

 ここまでくれば美琴の答えは決まっている、ついでに美琴の答えが決まっているなら当麻の答えも決まったも同然だ。


「私は良けど…当麻は?」

「みことが良いならそれでいいぞ」


 その場で即答した二人に美鈴と隣に座っている詩菜は苦笑を浮かべつつも安心しているようだった。二人からすれば一月程接してみた感想から凜と士郎が信用できる人間だとはわかっている為不満も文句もあろうはずもない。

 一方で面食らったようにしているのは凜と士郎だ。美鈴と詩菜から子供を預かってくれと頼まれ強引に押し切られていた為に文句は言えないのだが美琴や当麻が即決で答えを返してくるとは考えていなかったのだ。

 そんな状態からの立ち直りが早かったのは士郎だった。少なくとも一緒に住むことになるのならば話しておかなければいけない事柄があったことに気がついたのだ。


「えっと、そういうことでよろしくな美琴、当麻。一緒に住むのに堅苦しいのはごめんだから呼び捨てにするが…いいか?」


「はい」
「うん」


 士郎が口を開いてから美琴が最初に思ったのは、なんとなくだが“当麻”に似ているというものだった。ちなみにこの時点で美琴は士郎個人のことを信頼しても良いかと思い始めている自分がいることに気がついていた、そしてその士郎が選んだ女性である凜のこともだ。

 我ながら単純だなと思いつつも悪い気がしないのは“当麻”がらみの事柄だからだろうか。そこからは復活した凜さんも交えていろいろな話を聞いた。凜さんのこと、士朗さんのこと、とりあえず住む場所は学園都市の一角に建てた士郎さんと凜さんが昔すんでいたお屋敷を模したものをという事、アルトリア・セイバーさんというイギリス人女性の居候がいる事、一緒に住むにあたってのルール etc.etc.――。そしてその話がひと段落した頃に爆弾(?)は投下された。


「あ、それと美琴ちゃんは半年後くらいにはお姉ちゃんになってる予定だからよろしくね」


 と、さらっと美鈴は言ってのけた。もちろん最初は美琴は意味がわからなかった。

 10秒後に意味が飲み込めてきた。その20秒後に当麻も気がついた。当麻がきらきらした目で「すげー」と連呼していた。


「お姉ちゃん?私が?妹?弟?…ほんとママ」


「もちよ!」 


 美鈴はそう言うと美琴にやさしい微笑を向けた。

 一方の美琴はといえば呆然というか自体が飲み込めていなかった。前の世界と違うことが起こりすぎて少しばかりショートしたのだ、もっともうれしいのには変わりなく年齢相応(見た目に関して)にうれしくて美鈴に抱きついたり(もちろんおなかに衝撃を与えないようにゆっくりとだ)していてそれに生暖かい眼差し(×4)が注がれていたりするのだが美琴は気がついていなかった。


「そっか、ママが太ってたのって赤ちゃんがいたからそう見えたんだ」


「…いや、美琴ちゃん太った言うのやめて。妊娠中だっていうのを含めても地味にへこむから」


 美鈴のその科白に少々の笑いが起きる。その日よる遅くまで御坂邸からは楽しそうな笑い声が響いていたのだった。


 

 この日はお祝いということで士郎や凜、詩菜も御坂邸で夕食をとっていき主賓は御坂親子ということで士朗が料理の腕を振るっていた。そしてそれを食べた美琴が料理を習うと決断し士朗に弟子入りを決意したのは余談である。

 この後は特に何事もなく過ぎてゆき美琴と当麻は楽しい夏休みを過ごすのだった。 
 

 
後書き
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