オベローン
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第二幕その五
第二幕その五
「それで宜しいですね」
「うん、それでいいと思うよ」
ヒュオンはパックのその提案に満足した顔で頷いた。
「じゃあすぐに乗って」
「フランクに戻りましょう」
またヒュオンに言うのだった。
「例えそれまでに何があろうとも」
「僕は必ずレツィアを守る」
ヒュオンの言葉はこれまでになく強いものだった。
「そう、何があってもね」
「私もです」
レツィアもまた強い言葉を出した。
「私も何があってもヒュオン様と共にいます」
「その言葉に偽りはありませんね」
パックは二人のその言葉を聞いて念を押すようにして尋ねた。
「それで」
「うん、何があってもね」
「生きる時も死ぬ時も一緒です」
「わかりました」
パックは二人の言葉をここまで聞いて頷くのだった。
「それでは。頑張って下さい」
「頑張る?」
「何かあるのですか?」
二人は今のパックの言葉に感覚として妙なものを感じたのだった。
「一体それって」
「どういうことですか?」
「やがておわかりになられることです」
パックは今はこう言うだけだった。
「しかしまずはともかく」
「はい、舟に乗りましょう」
「いざフランクへ」
シェラスミンとファティメも手に手を取っていた。
「私が舵取りをしますので」
「帆も掲げていざ」
「食べ物も水もたっぷりと積んでいますよ」
パックはこのことも告げた。
「それでは」
「うん、フランクに」
「二人で」
こう言って舟に乗り込む。そのままシリアに出てそこから馬で進んで地中海に出る。地中海にも五人で出た。ところが地中海に出てすぐだった。
地中海は青く何処までも澄んでいる。遠くに緑の大地が見える。それは北のギリシアであり東に今出て来たばかりのシリアもあった。彼等はその海と大地を見ながらすぐに気付いたのだった。
「パックがいない?」
「そういえば」
まずはヒュオンとレツィアが気付いたのだった。
「一体何処に」
「まさかシリアの港に置いててぼりなのでしょうか」
「いえ、それはありません」
「今さっきまでそこに」
シェラスミンとファティメも舟の中を見回す。しかし彼の姿は何処にもないのだった。
「あれ、いませんね」
「どうしてでしょうか」
やはり彼はいない。このことに首を傾げるしかなかった。だがここで今度は。
「あれっ、空が」
「何か急に」
シェラスミンとファティメが空が急に暗くなってきたのを見た。
「それに海も」
「波が高くなってきて」
「嵐!?馬鹿な」
ヒュオンは嵐を察して目を顰めさせた。
「今まで晴れていたのに」
「いえ、海の天気は変わりやすいものです」
だがここでシェラスミンは言うのだった。
「ですからこれも」
「いけないな、すぐに帆をあげよう」
ヒュオンはすぐに手を打ちだした。
「そして嵐を乗り切ろう。いいね」
「わかりました」
シェラスミンが応える。こうしてすぐに帆を上げるが無駄だった。すぐに凄まじい豪雨と暴風が起こりそのうえで舟は無惨に転覆してしまった。
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