魔法少女リリカルなのはStrikerS ~賢者の槍を持ちし者~
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Chapter27「ホテル・アグスタ」
前書き
区切りが丁度よかったのか、ホテル・アグスタ編から最新話投稿です。
本当に長らくお待たせ、いたしました。
尚、本日を持ちましてアンケート投票を終了させていただきます。
ご協力ありがとうございました。
ルドガーははやて率いる機動六課メンバーと共にヘリで新たな任務先へと移動中。
その中ではやてが任務の概要の説明を始め、全員が真剣な面持ちとなる。
「ほんなら改めて、ここまでの流れと今日の任務のおさらいや」
パネルを操作しモニターを開き、これまでで入手した情報を表示される。
「これまで謎やったガジェットドローンの製作者、及びレリックの収集者が現状ではこの男……違法研究で広域指名手配されてる人物、次元犯罪者ジェイル・スカリエッティの線を中心に捜査を進める」
モニターに映像腰でもわかる異様な雰囲気を漂わせた1人の白衣を身に纏った男が映し出される。
「こっちの捜査は、主に私が進めるんだけど……皆も一応覚えておいてね」
「「「「はい!」」」」
捕捉で説明するように話すフェイトにフォワード4名は元気良く返事をする。
「ジェイル・スカリエッティ…ねぇ……なるほど」
「どうかしたですか、ルドガーさん?」
スカリエッティの映るモニターを見て呟くルドガーに気付いたリインが話し掛ける。
「いや、このスカリエッティってヤツは顔からして随分陰険で根暗で研究室に引きこもってるんじゃないかと思っただけだよ」
ルドガーのスカリエッティの予想図をリインとフォワード達が頭の中で想像する。
暗い研究室でごちゃごちゃ機材で囲まれた環境で1人研究を続けるスカリエッティ。
何日も風呂に入らない事で頭を掻く度にフケが落ち、彼の周囲に無数のハエが集る。
そんなスカリエッティの姿を思い浮かべたリインとフォワードは……
「「「「「ぶっ!」」」」」
場を忘れて思いっきり吹いてしまった。
「も、もう、アホ事言うもんやないで……くっく」
「は、はやて……はやても笑ってるよ…ぷっ!」
「フェイトちゃんも……くっ…はやてちゃんの事言えない…よ……ふっふっ!」
「ル、ルドガー君ったら…!ちょっとは空気読んで…よ……ぷっ!」
どうやらはやて達隊長陣にもウケていたようだ。
「えっと……何かごめん」
「ま、全くルドガーさんは少しは空気を読んでくださいです!」
笑いから回復したリインが空気を読めとルドガーに話す。
それからリインははやてに変わり任務先について説明する。
「で、今日これから向かう先はここ……ホテル・アグスタですよ」
「骨董美術品オークションの会場警護と人員警護。それが今日のお仕事ね」
リインに続き笑いから回復したなのはが説明を付け加える。
「取引許可が出ているロストロギアがいくつも出品されるので、その反応をレリックと誤認したガジェットが出てきちゃう可能性が高い……とのことで私達が、警備に呼ばれたです」
「この手の大型オークションは、密輸取引の隠れ蓑にもなるし、いろいろ油断は禁物だよ」
執務官としてこういったケースを多く見てきたフェイトが言う事からフォワード達は任務に対しての緊張を敷き直す。
(なるほどな……木の葉を隠すなら森に…か)
これほどの規模のイベントだ。審査を受け安全性が確認されたロストロギア以外でも違法に持ち込まれた物が紛れこんでいる事も十分考慮でき、取り引きされるロストロギアに反応してガジェットの襲撃も考えられる。更には六課の確保対象でもあるレリックも今任務で確保される可能性もあり得る。
「現場には昨夜から、シグナム副隊長とヴィータ副隊長他数名の隊員が張ってくれてる」
警備は厳重に厳重を重ねている。並みの犯罪者なら潜り込む事すら困難だ。
まぁ並みの犯罪者なら…だが……。
「私達は建物の中の警備に回るから、前線は副隊長の指示に従ってね」
「「「「はい」」」」
返事を返したフォワード。その中でキャロが何かに気付き視線をそちらに向ける。
「あの、シャマル先生。さっきから気になってたんですけど……その箱って?」
その言葉を受けて、考えを一旦止めてシャマルの足元へと視線を移す。
そこにはケースが4つあった。
「あ、これ?……ふふ、隊長達とルドガー君のお仕事着♪」
「「「「 ? 」」」」
「は?」
シャマルの言葉でより訳がわからなくる、フォワード達とルドガーだった。
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ホテル・アグスタに到着した六課一同。
それぞれの配置に付きいよいよ任務が始まる。
ドレスに着替え受付を済ませたなのはとはやて、フェイトはロービーで各自会場警備の最終チェック中。今回のオークション参加者には女性も多く参加しているが、この3人にその参加者は勿論、ホテル関係者も彼女達の美貌に目を奪われている。
なのはとはやての2人は、それぞれ桃色と水色を基調とした肩紐のあるタイプのスレンダーラインのロングドレス。フェイトは黒で統一された、やや胸元の開いた、裾がやや斜めになっているのが特徴のショートラインと呼ばれるタイプのドレスを着ている。デザインは3人それぞれではあるが、各人の魅力を十二分に引き立てており、更に3人とも淡く化粧をしているので、より一層大人っぽさが引き立ち、魅力を倍増させている。
彼女達が街を歩けば10人が10人全て振り替えることになるだろう。
「……お待たせ」
そんな彼女達に1人の男性が話しかける。
話しかけられた3人は打合せを一旦止め、男性の方に体を向ける。
「おお!意外に似合っとるやない」
「こういうの好きじゃないんだけどなぁ」
男性は…ルドガーは、面倒くさそうな顔をするとネクタイに手をやり、緩めようとする。
「こらっ!」
「ぐえっ」
ネクタイを緩めようとしたその時、はやてに腕を捕まれ、ネクタイを更にきつく締めなおされてしまい、小さい悲鳴をあげる。
「108部隊に一緒に出てた時、こういう服を着る時はシャキッと着るよう私は言うたよな?」
「ならもう一度俺も敢えて言うぞ……堅苦しいのは苦手なんだよ」
「ア・ホ☆」
頭を軽く叩かれる。
「そうだよルドガー。礼服には礼服の着こなし方もあるんだし」
「それにそのスーツ凄く似合ってるのに勿体ないよ」
ルドガーは今、普段彼が着ている青のワイシャツにスーツパンツではなく、統一した黒いスーツを着ている。何の巡り合わせか分からないが、その全体の組み合わせはヴィクトル家の写真に映っているヴィクトルのスーツ姿そのままであった。
更に髪型も左側の前髪をワックスで後ろへと綺麗に纏められており、格好だけ見れば、敏腕の大企業の社長にも見えなくもない。
実際彼はクランスピア社の副社長だったことから、ヴィクトル同様彼にも人を率いる素質があるのかもしれない。
「一緒にお出かけした時に買い揃えておいてよかったわぁ。普段あんなだらしない感じやけど、まぁまぁ素材がええから綺麗な衣装着ると輝いて見えるなぁ」
「頼むから兄さんみたいなこと言わないでくれ……」
このやり取りを見ていたなのはとフェイトはおもしろかったようで微笑んでいて、そんな2人に気付いたルドガーは気恥ずかしさを感じずにはいられなかった。
「さぁ、お喋りはこれくらいにして、そろそろ会場警備にまわるよ。準備はいい?ルドガー、はやて?」
「あ、ああ、そうだな」
「ごめんなぁ、つまらない事で時間取ってもうて」
ルドガーのネクタイや襟に手を伸ばしていたはやても、フェイトの声で本来やるべき事から今自分がやっている事が逸れている事に気付き手を離し、ルドガーを加えて再び会場警備の確認をすると、それぞれ自分の持ち場へと向かった。
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所定の位置で警備を行っているフォワード陣。退屈なのかスバルはティアナに念話を送っていた。
「(でも今日は、八神部隊長の守護騎士団、全員集合か~)」
「(そうね……スバルは結構詳しいわよね?八神部隊長や副隊長の事)」
「(うーん、父さんやギン姉から聞いたことぐらいだけど、八神部隊長が使っているデバイスが魔導書型で、それの名前が夜天の書って事。副隊長達とシャマル先生、ザフィーラは八神部隊長個人が保有している特別戦力だって事。で、それにリイン曹長を合わせて、6人揃えば無敵の戦力って事……まぁ、八神部隊長達の詳しい実状とか能力の詳細は特秘事項だから、私も詳しくは知らないけど)」
あくまで聞いた話だと言いながらも、八神家についてそれなりに詳しく説明したスバル。
「(レアスキル持ちの人は皆そうよね)」
「(ティア、何か気になるの?)」
普段と違うティアナの様子に気付いたスバルが反応する。
「(……別に)」
「(そう、じゃあまた後でね)」
スバルとの念話を切る。念話を終えた後、ティアナは深く何かを考え込んでいるような顔をしていた。
(六課の戦力は、無敵を通り越して明らかに異常だ。八神部隊長がどんな裏技を使ったのか知らないけど、隊長格全員がオーバーS、副隊長でもニアSランク)
通常の部隊とレベルを比べれば天と地の差。一個の部隊としてはティアナの言うとおり、無敵を通り越して異常な戦力だった。
(他の隊員達だって、前線から管制官まで未来のエリート達ばっかり。あの歳でもうBランクを取ってるエリオと、レアで強力な竜召喚士のキャロは、2人供フェイトさんの秘蔵子。危なかっしくはあっても、潜在能力と可能性の塊で、優しい家族のバックアップもあるスバル……)
そこで一度考えを止め、ある人物の事を思い浮かべる。
ある意味六課で1番のイレギュラーである男の事を。
(そして……ルドガーさん)
現在のティアナの実質、銃の師でもあるルドガー。
だが彼女は今でも彼と一線置いて接している。
その理由はやはりルドガーの力と能力だ。
(異世界渡航者でありながらも八神部隊長にその実力を認められ、リミッター付きとはいえ、シグナム副隊長から一本取る程の実力……当然、私達では相手にもならない。更に魔法とは全く異なる『骸殻』という能力を持ったある意味最強の人物……)
しかもルドガーに魔導の素養は全くなく、魔法は使えない。
しかし彼はその高い戦闘能力と魔導サイドからは未知なる力、骸殻能力により、魔導師と同等……それ以上の力を有している。ティアナからしたら、ルドガーこそ彼女が求める力と才能の全てを持っている人間だ。
そして目標の人間であると供に、ライバルでもある。
(射撃も、戦術も、身体能力のどれもルドガーさんと比べたら私は足元にも及ばない……結局、うちの部隊で凡人は私だけだ……)
同じ2丁拳銃を扱うルドガーに銃を教わっているからか、ティアナは今までにない深い劣等感と、より一層力を欲するようになった。ティアナの目には、ルドガーはどんな事でも出来る超人に見えていた。
(だけど、そんなの関係ない!私は……立ち止まる訳にはいかないんだ!)
目を閉じ、ルドガーに対して抱いた劣等感を振り払う。
自分の力を証明する……ティアナは意思を固める。
だがティアナは何も分かっていなかった。
ルドガーは決して最初から強い人間ではなかっことを……力は、ただ力でしかないということを。
この時のティアナは、それがいずれ、間違いを起こす事に繋がるとは予想も出来なかった……。
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静寂に包まれる森から、大柄のフードを被った男と紫髪の少女が六課が警備中のホテルを眺めている。
「あそこか……お前の探し物は、ここにはないのだろう?」
大柄な男性は、隣に並ぶ紫髪の少女へ問いかける。紫髪の少女は何かを伝えるように一言も言わず男を見上げる。
「何か気になるのか?」
「……うん」
そこへ、銀色の虫が紫髪の少女の方へ飛んでくる。虫は少女の前で、体を動かして何かを伝える。
「……ドクターのおもちゃが、近づいてきてるって」
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ホテルの屋上で周囲を警戒していたシャマルのデバイスに反応が感知される。
「クラールヴィントのセンサーに反応!?シャーリー!」
『はい!……来た来た、来ましたよ!』
『ガジェット・ドローン陸戦Ⅰ型、機影30、35……』
『陸戦Ⅱ型、2、3、4……』
応答するシャーリーに続き、アルトとルキノが状況を報告する。
「前みたいに不可視化した状態で進行してくるガジェットも考えられるから、作戦行動範囲のスキャニングも忘れずにね!」
『『『はい!』』』
これを機に、機動六課前線部隊はガジェットからホテル防衛の為、迎撃を開始する。
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時は同じく、オークションが行われるフロアで警備についていたルドガーとはやては、オペレーター陣のガジェット襲撃の報告を受け、来るモノが来たなと思いながらも、警戒を改め直す。
「フォワード達が迎撃に、動いてるみたいだな」
「シグナムとヴィータにザフィーラもや。今頃フォワードの前に出てガジェットを叩いてる頃やろうな」
そう言ってる側から、ホテルから見える森一ヶ所から爆発が起こる。
「……派手に、やってるな」
「あのくらい序の口や。ルドガーもそう言うワリには、派手な戦い方やと思うよ」
「そ、そうか?」
そう言われてみて自分の戦い方を改めて思い返してみる。確かに自分の戦い方は大胆なのだろう。
けどだったら、ミュゼやティポはどうなる?強敵が相手とはいえ、仲間に一声なく広範囲で高い威力を誇る、グラビティを落とすミュゼ。雑魚限定とはいえ、魔物や兵士崩れを吸い込んで食べるティポ(ルドガーは一度消化されそうになった)。
派手を通りこしてド派手な2人を知っているルドガーは、自分の戦い方を派手と認めなければならなかった。
「ところでルドガーは今回、迎撃にまわらなくていいん?」
「今の所は出る必要もないだろ」
あれだけの戦力だ。そう易々と防衛ラインを割られる事もない。
「作戦通り、俺は万が一の保険で待機しておくさ」
ルドガーは今回戦いに出るつもりはない。防衛ラインを突破され、新人達がピンチになった場合は勿論出るが、そうならないなら、新人達の成長を確かめる意味でも、出来れば手は出したくはない。
「フェイトちゃん?」
フェイトの名を1人呟くはやて。目の前に彼女の姿がない事から、はやては今フェイトと念話で話しをしていると予想した。
「フェイトから念話か?」
「うん。なのはちゃんとフェイトちゃんが、主催者に外の状況を伝えたら、オークションの中止は困るから、時間を遅らせて様子を見るって」
「いっそ、中止にしてもらった方がこっちの手間が省けるんだがな」
「何言ってるんや。中止になったらなったで、オークション参加者に事情説明して、安全に避難させなかあかんくなる……一番楽なんは、この事件を迅速に解決する事やろ?」
「まぁ……そうだな」
もっともな事を言われ、納得するしかなかった。
「それより何か他に言う事あるんやないの?」
「え?」
少し目を離している間に、一部隊長の顔をしていたはずのはやての顔は、少し不機嫌な少女の顔になっていた。
「えっと……何か作戦にミスでもあったか?」
「アホ!」
「じゃあ……作戦変更でもするのか?」
「違うわ!」
「じゃあ……どうしたら胸が大きく---」
「ああん?」
「はいすみせん調子に乗り過ぎました」
この状況に関係する事を思いつきで言ってみたが、どれ一つ当たる事はなかった。
いったい何なのだと、はやてが自分に何に気付かせたいか考え続けるが、やはりわからない。
「はぁ……ルドガーは女心がわかっとらんなぁ……これだから彼女いない歴=年齢の男は」
「なっ!?てゆーかっ、お前だってそうだろ!なのはから聞いたぞ。お前に彼氏が出来た事なんて一度もない事をな!」
「くっ……!」
睨み合う2人。
はたから見たら、仲の良い夫婦が些細な事で夫婦喧嘩している図に見えなくもない。
今こうしてガジェットと戦っている前線メンバーの事を考えると、自分達の今やっている事は酷くアホらしく思えてしまい、咳払いをして睨み合いを止める。
「……合ってるかって」
「ん?」
背中を向け、話すはやてたが、その言葉は肝心なルドガーには、小さすぎて聞こえないようだ。
「あの、はやてさん。何て言ってるか聞こえま---」
「似合ってるかって聞いてるんや!」
「……はい?」
自分の耳が狂ったのかと思った。これまで自分の体に無理をさせてきた。
きっとそうだ。この任務が終わったら、シャマルに精密検査を依頼しよう。
頑張る事と無理をする事は違---
「だから!私のこのドレス、似合っとるか聞いとるんや!」
「…………」
ようやくはやてが自分に伝えようとしている事が理解できた。
でもまさか、このタイミングであのはやてが、そんな事を聞いてくるとは思ってもみなかった。
「えっと……そ、そうだな……似合ってるぞ?」
「……疑問系?」
「うっ……」
ここぞという時に、目を潤ませて自分を見るはやてに、これまで使った事のないほどに頭を使い、彼女に掛ける言葉を探す。
「そのドレス、凄く似合っているよ」
「………」
「あ、あと、いつもよりはやてが輝いて見えるなぁ、うんうん。多分、いつもと違う化粧に口紅とか使ってるからだよな!いや~女の子ってちょっと身だしなみ整えただけで、別人になっちゃうんだな、あははは!」
打てる手は全て打った。
後は……出たとこ勝負だ。
「はぁ~……まぁまぁやな。54点ってとこかな?」
「ぐあっ」
54点……それがはやてのルドガーへの評価だった。
虚しさのあまり両膝を付くルドガー。
そんなルドガーの手を取り、立ち上げさせるはやて。
「でも、まぁ嬉しかったよ。ありがとうな、ルドガー」
「まったく、お前は……」
とてもすぐ側で戦いが起こっているとは思わさない、甘い香り全開の会話に今戦っている前線メンバーに対して罪悪感を2人は覚えるが、それでも決してこの感覚は嫌いにはなれなかった。
後書き
アンケートに続いて読者さま方に作者からのお願いです。
ただいまこの小説の挿絵を募集中です。
私自身が書くこともできますが、リアルが忙しいので、イラストまではさすがに手がまわりません。
こちらは長期募集ですので、興味のある方は感想・アンケートでお声をかけてください。
皆様のお返事お待ちしております。
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