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ゲルググSEED DESTINY

作者:BK201
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第三十八話 紅に染まる雪

戦線は現状維持が続き、お互いに膠着状態と言っても良かった。しかし、それでも被害がなくなるわけではない。デストロイというロゴスの士気を底上げしている残った四機の砲撃によって、ザフトと反ロゴスの連合軍はまともに前線を維持できないでいた。
数の上では勝っていようとも勝敗は戦略と士気が明暗を分ける。そう言わんばかりのロゴスの猛攻。事実、態勢を狂わされたザフトと連合はミネルバとラー・カイラムの部隊がデストロイを抑え込まなければそのまま崩れ去っていたことだろう。そして、混乱している前線部隊の中で、クラウは指揮系統をまとめ上げていた。

「艦隊は支援射撃をしながら一旦下がるんだ!MS隊はデストロイの射線軸から離れて―――部隊の指揮は俺が取る!ルドルフ、アレック―――部隊を三つに!俺は海中部隊を中心に、ルドルフはグフやディン、ウィンダムといった機動力の高い部隊を、アレックは射撃部隊を中心に指揮を分ける!」

『フフン、良いだろう!この僕の華麗にも美しい指揮というものを見せてやる』

『華麗と美しいは大して意味が違わんぞ……ともかく、指示は了解した。バビ隊!後退する艦隊を援護しろ!ザク部隊は後退するMSやバビを援護するのだ!敵を近づけさせるな!』

アレックはデストロイに対して射撃が有効でないと判断し、艦隊の護衛に付かせる。その足の遅いMS隊を援護させるように指示しながら自身も射撃で敵部隊を牽制していく。

『さあ、美しさというものを見せつけてやろうではないか!さあ、私と共について来い!』

ルドルフはギャンを中心に敵部隊のMSに突撃を仕掛ける。一見すると何も考えていないただの突撃のように見えるが、彼の行動は理に適っている。足の遅いMSや艦隊ではデストロイや大型MAの餌食になるだけだが、機動力の高いMS部隊なら戦線を流動的ながらも維持することは可能だ。
そしてやはり金色のギャンは戦場では目出ち、味方には象徴のようにこちらの士気を上げ、敵には狙いを集中させる効果がある。並のパイロットならばあっさりと囲まれて叩き潰されるところだが、予想外に卓越した技量を持つルドルフは敵部隊を真っ向から相手にしても問題なく対応した。

「ゾノ、グーン隊は艦への攻撃をさせないように注意するんだ!MSの数では勝っている。囲い込んで倒せ!」

クラウはリゲルグを駆りつつ、おおよその行動を指示する。どちらにしても海中の状況はリアルタイムで把握など出来ず、大まかな対応にならざる得ない。フォローもするし、状況が分かり次第指示も下すが、基本的にはセオリー通り戦線維持するように動かす。
海上の艦隊は距離を取り、空中は流動的に戦線を維持し、制空権はこちらが取り押さえる。そして海中では艦隊が被害を受けないように戦線を維持させる。そう指示をした後はクラウは海上の敵MS隊を落としにかかる。

「そんな機体で勝負する気かい?舐められたものだね!」

リゲルグに迫って来る戦闘機やダガーを次々と切り裂いていく。既に旧式と化しているそれらの機体では些か以上に役不足と言えた。
ビームサーベルはまた一機、一機と敵を捉え断ち切る。無論、敵部隊も抵抗するが、そもそもリゲルグを捉えきれず、また一撃目を防いでも次の連撃が襲い掛かる。次々と落とされていく部隊のその様子を見て、リゲルグを仕留めようとザムザザーが迫ってきた。砲頭をリゲルグに向け、四つのガムザートフを一斉に放つ。

「止まって撃つような砲撃に当たるわけない!」

しかし、リゲルグはそれを難なく躱し、逆に下腹部を見せたザムザザーにビームとミサイルを放つ。ほぼ全弾が命中し呆気なく落とされるザムザザー。その様子を見た敵MSは僅かに後ずさる。

「まだまだ、リゲルグの性能はこんなものじゃないよ―――」

ビームライフルを一旦腰に掛け、左手からもビームサーベルを抜出、右手に持っていたビームサーベルと連結させる。一番近くに居た敵のウィンダムに斬りかかり、そのまますり抜けざまに切り裂く。黒いリゲルグは次々と敵を葬り去っていった。







「見つけたッ、あそこだ!」

デスティニーを使いこなしシンはその圧倒的な機動力を持って敵陣奥深くまで切り込みながら敵の切札の一つであるニーベルングを射程距離に収める。長射程ビーム砲を構えて放とうとするが、敵が大量にいるヘブンズベース内ではまともに放てない。

「クソッ!」

長距離ビーム砲を元に戻し、フラッシュエッジ2ビームブーメランを二本とも抜き出してサーベル替わりに使う。アロンダイトでは敵のMSに対して威力が過剰であるし、囲まれている中では隙も大きい為、ビームブーメランのビームの長さを調節してビームサーベルとして扱う。
十分な威力を誇るビームブーメランは自身のシールドであるビームシールドであろうとも切断できる威力であるため、並のMSでは太刀打ちできるはずもない。持つサイズとしても一般的なビームサーベルと変わらず使い勝手が良い為、敵の攻撃は当たらず、一方的に敵を切り裂いていく。

『速いッ!?』

『突破させるな!距離を取るんだ!!』

次々と敵を屠っていくデスティニーに距離を置いて射撃戦で撃墜しようとする敵部隊。しかし、即座にデスティニーのビームブーメランの出力を調整し、本来の使い方であるブーメランとして左手に握ったフラッシュエッジ2ビームブーメランを投げ放った。
山なりに線が描かれていく不規則な軌道をしているビームブーメランに距離を置こうとした二機が切り裂かれる。

『う、ウアアァァァ――――――!?』

距離を詰めれば切り裂かれ、距離を置こうとしても投げられた攻撃によって切り裂かれる。どちらをとっても殺されるという恐怖に脅え、一人の兵士はシールドを正面に構えビームサーベルを持ちながら突撃していく。

「抵抗したって無駄死にするだけだっていうのに!!」

無手の状態になっていた左手を突き出し、相手のビームサーベルを翳めるように躱し、逆にパルマフィオキーナによってシールドごと敵は撃墜される。機体の爆発を通り過ぎ、戻ってきた投げたビームブーメランを左手で受け止めて肩に戻す。

『たった一機に、何を手こずっているんだ!?』

拠点防衛のゲルズゲー部隊の三機がデスティニーにむかってビームを乱射する。しかし、それを後ろに目があるかのように見切り、そのまま動きを止めずに流れるようにビームの弾幕を回避しながら近づいていき、光の翼の出力を上げて加速する。

『こいつ、まだ速く!?』

『幻影が!本物はッ!?』

加速したことによって光の翼から現れる幻影に翻弄される。ゲルズゲーはまともに迎撃することも出来ずに陽電子リフレクターで敵を防御しようとする(ビームシールドすら敗れるビームブーメラン等に殆ど意味を成すとは思えないが)。

『こんなはずじゃッ……おいッ!早く加勢してくれ!?』

デスティニーはそのまま右手に持ったビームブーメランを上に投げ、背面からアロンダイトを取り出し、中央に居たゲルズゲーを一瞬の抵抗すらさせずにアロンダイトで一気に断った。

「これっでェ―――!」

そして上に投げたビームブーメランと肩に取り付けていたビームブーメランを展開し直し、左右に向かって投げつける。残った二機のゲルズゲーに向かっていき、片方は胴体をそのまま裂かれ、もう一機は下半身の多脚部に突き刺さり、爆発した。
そうして生まれる一瞬の空白――――――シンはそれを逃すことなく長距離ビーム砲を構え、ニーベルングの中心部にあるビームの照射装置を狙い、撃ち抜いた。

『そんな馬鹿な……!』

『嘘だろ……こうもあっさりと』

デスティニーの獅子奮迅の活躍は、まさにロゴス側の兵士たちから脅威でしかなかった。シンはすぐさまアスラン達に破壊したことを伝え、アスランはミネルバやラー・カイラムにそれを伝える。デュランダル議長はそれを聞いてすぐに本命の降下部隊を降下させた。
シンも降下部隊を支援するために残っている僅かな対空砲や迎撃しているMSを撃ち落としていく。内陸への侵入を果たしたことによって戦況は傾き始めていた。







「フン、甘いなッ!」

陽電子リフレクターを展開させて防御に回っていたザムザザーに対し、一気に距離を詰めてヒート・ランスで貫く。戦いを有利に運ぶために大型MAを中心に狩っていたのだが、既に近くの海岸線沿いには敵MAはいなくなっていた。

『死ねェェ―――!コーディネーター!!』

「お前が死んでおけ、ナチュラル」

立ち止まったマーレのゲルググを狙って一機のMSが背後から突撃してくるが読んでいたかのようにあっさりと躱してほぼ零距離で下腕部速射砲を放つ。既にニーベルングを撃墜したことで降下部隊も降り始め、大勢は決し始めていると言ってもいいだろう。しかし、デストロイはまだ四機とも存在しており、あれが存在する限りロゴス側の士気は下がらず、徹底抗戦となるだろう。そうなれば、ロゴスの戦略次第だが、逆襲にあう可能性も存在している。

「なら早い所落とすのが最善か……アスラン、援護する!懐に潜り込め!!」

『マーレか?分かった!任せるぞ!!』

マーレはビームバズーカ、ビームキャノン、ビームライフル、3連装ミサイルランチャー、下腕部速射砲とほぼ総ての銃火器を向け、デストロイに放つ。当然、デストロイのIフィールドとVPS装甲によって通用しないと言っていい。
しかし、これほどの膨大な火力を浴びせてきた相手に対して無視するというわけにはいかないのだろう。結果、こちらに向き直ろうとする。

「その瞬間が、貴様の狙い目だッ!」

振り向きざまが最も隙を見せると判断したマーレは相手の動きを先読みし、ヒート・ランスを構え、突撃する。それを見て五連装スプリットビームガンやツォーンmk2を放って迎撃する。そこでマーレはそれを躱してそのまま接近するかと思ったが、逆に大きく回避してヒート・ランスを投げるという攻撃で留まる。それを残っていた方の片腕で弾くデストロイ。しかし、それは致命的な隙となる。

『そこだッ!!』

変形して一気に突っ込むセイバー。前面部と翼部にビームが展開され、その突撃は直撃する。怯むデストロイのパイロット。そしてセイバーはすぐさまMS形態へと戻り、ビームを展開したままのシールドでデストロイのコックピットを貫いた。

『すまない、だが俺達は――――――』

そう呟き、アスラン達はデストロイを落とした。







一方でハイネもデスティニーを駆りながら、デストロイと対峙し続ける。

「シンも同じ機体に乗って一人で仕留めたからな。俺も先輩としてしっかりやってのけてみせねえとな!」

アロンダイト構え、光の翼の出力を一気に引き上げて、攪乱する。しかし、デストロイは冷静にミサイルの迎撃を行い、六連装×四の計二十四発に迎撃される。
後ろ向きで距離を取りつつCIWSで迎撃する。そして直線軌道上に居なくなった時点で反転し、残りのミサイルはデスティニーの機動力で引き離そうとして光の翼を展開させて離れる。しかし、それによってミサイルは振り切られるのではなく、その場で爆発を起こした。

「何だ?一体どういうことだ?勝手に爆発していっただと……」

何が起こったのかは推測でしか判断できないが、とにかくこの状況を利用すべく、軌道ルートを変更してデストロイに接近する。

「こいつでッ!」

ビームブーメランを二対投げつけ、デストロイのパイロットの判断を鈍らせる。そのままアロンダイトを構え、切り裂き、止めを刺すかと思いきや、上昇した。デストロイが迎撃のビームを自機に当たるのもお構いなしに撃ち出したからだ。
上昇したデスティニーは大上段でアロンダイトをもって斬りかかる。しかし、アロンダイトを直前で手放し、光の翼を展開させ、幻影をまるで頭部から斬りかかる残像のように映し出す。

「目の良さが命取りだぜッ!!」

そして、ハイネ自身のデスティニーは機動する方向を一気に変え、懐に潜り込み、今度こそとばかりに右腕を突き出してパルマフィオキーナでコックピットを貫いた。

「勝ったぞッ!」

ハイネもデストロイを撃墜することに成功した。ロゴスの戦力は次々に失われていき、彼らロゴスの勝利は遠ざかっていく。







「馬鹿な……」

「おい、ジブリール!あれほど豪語していた貴様自慢の……あやつはどこにいった?」

デストロイが次々と撃墜されていく様子を見て、ロゴスの面々はこのままでは負けてしまうのではと焦り、この場の責任者であるジブリールにどうにかしろと文句を言おうとするが、すでに彼はいなかった。

「クッ、アズラエルのやつめ、こういう時の為に私に知らせていたという事か?」

一人猫を抱きながら逃げるジブリール。他のロゴスの面々は見捨てることを選択した。
脱出の準備を進めているとロゴスの面々が知ったら我先にと逃げ出すことは確実だろう。とはいえ準備をしているという事はおそらく全員が逃げれる分はあるには違いない。しかし、それを教えれば敗北したことによってジブリール自身の評価は下がり、逆にアズラエルの評価は上がってしまう。そう思ったジブリールはアズラエルがいる所まで自分だけ先に逃げることにした。
一対一ならばアズラエルとジブリールは対等、いや若干ながらもジブリールの方が上である。

「遅かったではないか、ジブリール。他の面々は如何した?」

「フ、わかっているだろう?他の奴等は我々にとっては邪魔な存在だ。おそらくこの戦いが終われば我々に責任を擦り付けようとするだろうからな」

こうなったらジブリールとしても言葉は選ぶ。自分がという言葉ではなく、我々という共同意識で動くしかない。

「脱出の準備はどうなっているのだね?」

「既に出来ているとも。後はどのルートを選ぶかだ。宇宙に行くも良し、海に逃げるもよしだ」

そうしてアズラエルとジブリールは既に敵が囲いつつある戦場でヘブンズベースから脱出した。
 
 

 
後書き
皆さんがクラウがクラウがと叫んでいるのでクラウにも活躍の機会を与えてあげました。どうよ、これで主人公やってるだろ?え、次のキャラ達が目立って全然活躍してない?そんなわけ……。
ヘブンズベース戦はほぼ終了?デストロイは頑張ったけど彼らほどの戦力を前にはIフィールド付でも無理でした。元々Iフィールドでは近接戦に弱いという弱点をカバーしきれてないわけだし(笑)

というわけで幾つかアンケートというかどうしたいかを聞きたいです。答えなくても構わないですし一部にだけ答えてもらっても構いません。

①ロゴス(というかアズラエルとジブリール)どこ行く?
 原作通りオーブ、そのままシャトルで月、大穴でアラスカとか、寧ろ日本で、など色々あると思うので参考にしたいです。別々というのもアリですよ?とりあえず日本が選ばれた場合はまず日本沈没ですからIFで書くだけで実際には却下ですからね(じゃあ聞くなよ)

②設定は公開すべき?
 現時点での機体の詳しい説明とかいります?ヘブンズベースという山場は超えたのでそろそろこのあたりでゲルググや魔改造組含めた詳しい機体設定を……という方はYESで。キャラの説明も欲しいなら書きます。書かなかった場合は最終話後の後書きという名の蛇足で書く予定です。今欲しいか最終話後で良いかの違いでしかありません。
ちなみにこの設定での公開も一話分なのでその日に二話更新とかありませんよ(笑)

③ifは出して欲しい?
 外伝というか思いっきりIFストーリー。例、アスランが原作通りだったら。クラウが自重しなかったらなど。出して欲しいならいつ出して欲しいかも含めてで。今?最終話後?

④ゲルググ以外の機体はあり?
 既に出たギャンとガルバルディと議長専用機と青いロゴスのMS以外でゲルググ以外の機体は出して欲しい?これはYESorNOquestionで(ただしYESでも限度はあります)。IFでならありというのも手。IFなら自重はしません。

⑤クラウは主人公?
 あなたはこの作品の主人公がクラウだと思ってますか? 
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