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【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス

作者:海戦型
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役者は踊る
  第三三幕 「教務補助生」

前回のあらすじ:病弱少年を理解できてる人とできてない人


上から降り注ぐ容赦ない直射日光を浴びながら集合した生徒達。1,2組両方が参加しているだけあってそれなりに人数が多い。なおISスーツは外見だけ見ると競泳水着+ニーハイタイツという(男性から見て)非常に眼福なデザインをしており、一夏とユウは直視できず恥ずかしそうに目を泳がせまくっている。

(全身にフィットする形ってのはまだ分かるけど、ここまでボディラインを強調するようなデザインにする必要あるのか?)
(一応脳から筋肉に送られる電気信号を増幅する機能があるらしいけど、なんか胡散臭いよね・・・)

実は開発者の趣味・・・という線がイマイチ捨てきれない2人。
実際の所このスーツはかなり特殊な繊維で作られており、下手な鉄砲程度なら簡単に受け止めてしまうのだとか。最近は更なる改良で衝撃吸収機能も追加されたとかで、最上品のお値段は軍用防弾チョッキを軽くオーバーしている。
なお、二人は知らないがISスーツにはアームサポーターやグローブも存在する・・・が、デザイン的に女性に受けが悪いためほとんど普及していないという裏事情があったりする。

閑話休題。それよりも二人には気になっていることがあった。授業に参加するはずのジョウが姿を見せないのだ。遅刻など余程のことがあったとしても遅れない彼がどうして授業開始直前になっても姿を見せないのか、二人以外の面々も少し気になっているようだ。

と、そこへ授業開始を告げる千冬が現れて全員は整列する。


「では、本日から格闘及び射撃を含む実践訓練を開始する」
「「「ヤー!!」」」
「・・・ボーデヴィッヒの真似はせんでよろしい」

ノリのいい連中である。当のラウラはその謎の一体感に「これが日本のお笑い根性というものか・・・!」と無駄に感動しており、その若干アホっぽい姿はとてもではないが軍人には見えない。というか学園に来ている間彼女の軍籍はどうなっているのだろうかという密かな疑問を抱いたりするが、まぁ考えるだけ無駄だろう。

「まず、専用機持ちの中から・・・そうだな、織斑と凰、ISを展開して前へ出ろ」
「「はい!」」

何をするのか分からないまますぐさま自分のISを展開する二人。鈴は0,5秒、一夏は1,2秒で展開を終えた。

「凰はいいとして・・・織斑、展開が少し遅い。最低でも1秒以内に展開できるようにしておけ」
「は、はい!」
「さて、2人にはこれから模擬戦を行ってもらう。相手は―――」


「織斑先生、こっちはもう準備できてますよー!」
「・・・ふむ、来たようだな」

千冬の目線の先に居たのは、訓練機であるラファール・リヴァイヴを纏った山田先生と見覚えのない銀色のISだった。そのISを見たシャルを含む数名が、あっ、と声を上げる。そう、そのISは確か・・・

「そのISは・・・ジョウ!?」
「御名答!実は先生に呼ばれてお手伝いすることになったのさ」
「え?兄さん?何してるの!?っていうかそのISは何さ!?」

ざわめく周囲。ジョウのISは専用機を開発中という偽の情報を流していたので多くの生徒が「あれが承章の専用ISか」と驚き、夏黄櫨をお目にかかったことのあるごく一部の生徒は「あれって元は訓練機なんだよなぁ・・・」と改めて驚いている。
ちなみにユウは夏黄櫨を知らない。ジョウは過保護ではあるが同時に守秘義務などの重要なルールに関しては厳しい。兄弟だからという理由で情報を漏らすことはしないのだ。

「慌てるな馬鹿ども!承章についてはこれから私が説明する」

それから千冬が語った内容は、中々に衝撃的なものだった。

何でも来年からこの学園に新しい制度を導入するらしい。その名も「教務補助生制度」。
飛び抜けて有能な生徒や高いリーダーシップとそれに見合うだけの成績がある生徒を“教務補助生”として選出、教務補助生の名の通り教師の補助をする。学園内での非常事態や緊急の用事で担任がいないときなどに教員の代理を務めるのが主な仕事となる。能力と人格以外に基準は無く、クラス代表以上副担任以下といったくらいの権限が与えられる。
・・・また、これは生徒には説明していないが、所謂“表沙汰に出来ない仕事”の場合も緊急時には協力してもらう事も考慮して選定される。

「・・・つまり、承章はそのテストケースだ。他にも生徒会長を含む数名が選ばれている」
「へぇ~そんな話があったんですねぇ・・・」

呑気を装いつつ内心結構驚いているのは佐藤さん。定番の『それ原作にない』である。とは言っても最近の佐藤さんはもうそれに慣れつつあるのだが。しかし生身で千冬と斬り合えるレベルの人間ならば他の生徒に舐められるようなことはないだろう。いや、そもそもこの場自体がジョウとそのISの実力を見せつける場という事かもしれない。
そんなことを考えていると、織斑先生が笑いながらこっちを向く。その笑顔はどこかイタズラが成功した時のしたり顔に近いような・・・

「―――何を呑気な事を言っている。お前も補助生に選ばれているのだぞ?」

・・・ん?

「・・・・・・・・・申し訳ありません、ちょっと聞こえなかったのですが」
「お前も今日から教務補助生の仲間入りだと言った。無論拒否権など無いぞ?」
「・・・・・・聞ぃぃてないですよぉぉぉぉぉぉ!?」

まるで自分の撃った雷がゴムだからというだけの理由で相手に効かなかった時の自称神様みたいな顔になっている佐藤さん。だが考えてみればおかしな人選ではない。何せ佐藤さんは成績優秀でリーダーシップも取れる真面目な生徒(と少なくとも教師陣は思っている)だから選ばれても別段不審なことはないのだ。だがしかし、IS騎乗に関しては他の連中とどっこいなはずである。

「あの、私専用ISとか持ってませんし・・・」
「心配するな、専用機持ち以外ではお前が1年生で一番ISを乗りこなしている」
「え゛?」

何それ私聞いてない。アリーナで(原作勢と被らない時間に)自主練習とかはしてたけど、それはあくまで空飛ぶのが楽しいからひゅんひゅん飛んでただけであって乗りこなそうと思ってやっているわけでは・・・まさか、アンノウンの一件で目立ち過ぎた!?などと思った佐藤さんだったが、千冬の続く言葉に唖然とした。

「隠すことはない。お前は暇さえあれば自主練習でISを飛ばしているだろう。自分では気づいていないかもしれんが、初心者であれだけの長時間飛行をするのは容易に出来る事ではない。何故なら空を飛ぶというイメージを固めるのが難しいのはもちろん、集中力が持続しないからだ。しかもそれだけではない。自分が練習できない時間は決まって専用機持ちの練習を見学して技術を盗んでいただろう?注意深く観察しながら通信傍受までして、メモ帳にペンをずっと走らせながらだ。それなりに多くの生徒を見てきたが、お前ほど努力に貪欲な奴はそうそういなかったぞ?」
「は、い・・・?」
「お前のそれは、誇ってもいい。私が保障しよう」
(うわぁぁぁぁぁ長時間飛行はともかく見学の方は盛大な勘違いです先せーーーーい!ほぼ出歯亀してただけですから買いかぶらないでくださーい!!)

暇さえあれば情報収集ついでにアリーナへ足を運んでいたのがまさかそういう風に取られているとは・・・!!と自分のうかつさを呪う佐藤さんだが、実際には確かに専用機持ち達のISテクニックを参考にすることも割とあるので間違ってはいなかったりする。
周囲がざわ・・・ざわ・・・ついているのが分かる。まぁクラスのみんなは多かれ少なかれ佐藤さんを只者ではないと思っているため驚いている者は少ないのだが・・・

「ま た 佐 藤 さ ん か」
「ホンマ佐藤さんは努力家なお方やでぇ・・・」
「経験が活きたな。〇クターを奢ってやろう」
「いや何様よあんた!」
「おのれ佐藤さん・・・!千冬様の御寵愛(?)を一身に受けるなどぉぉぉ!!」

・・・非常に振り返りたくありませぬ。ちょっとちーちゃんマジで止めてよそんな良く分からん物に推薦されたら私の自由が減っちゃうじゃないですか!ついでに反比例して面倒事に巻き込まれる確率はUPなんて冗談じゃない。モブにはモブの行動範囲というものだあるんだよ!・・・誰だ「まだモブとか言ってるよこの人www」って笑ったやつ!!出て来いよ!武器なんか捨ててかかって来いよ!

・・・ふう、落ち着けKOOLになるんだ佐藤稔。先生は生徒を危険な所に連れて行こうとするわけがない。ならば精々小学校の学級委員を任された程度に考えれば・・・あれ、それはクラス代表の仕事だから私別に働くことなくね?あれ?じゃあ最初から大した負担にはならないんじゃね?

「鎮まらんか!お前たちが余計な私語をする度に貴重な授業時間が減っていくのが分からんか!・・・よし、では今から織斑と凰、対、山田先生と残間兄で2on2の模擬戦を始める!所定の位置につけ!」

一人あれこれ思案している佐藤さんをよそに、ようやく模擬戦が開始されることとなった。
・・・山田先生は放置されたりなんたりでいじけていたが。

「私、副担任なのに・・・みんな私の事なんで本当はどうでもいいんじゃないんですか?一人くらい私がISに乗ってることに驚いてくれたっていいじゃないですかぁ・・・」
「まーまー先生、これから模擬戦ですから、ね?いいところ見せてあげましょうよ」
「そうやって励ましてくれるのはジョウ君だけですよ・・・」
「いやぁ、年下連中を纏める苦労は経験した人にしか解りませんよね」

17歳に励まされる教師というのも如何なものか。いやしかし山田先生は多分20~23歳くらいの年だと思われるからそう年は離れていないのか。むしろ社会人でもないくせに分かった風な事を言っているジョウに疑問を持たない辺り、教師として限界を感じているのかもしれない。
そしてそんな様子を見た一夏は流石に哀れに思い、これからはもっと先生を敬おうと心に誓うのであった。
 
 

 
後書き
最近気づいたけど、年表で見ると千冬は教師歴1年のぺーぺーなんだよね・・・学園に行く前から臨時講師みたいな感じで教えてたのかな?教官に求められるものと教師に求められるものは違うし、案外見えない努力をしてるのかもね、と思ったり。

KOOLになる・・・単純な英単語の綴りさえ間違うほど冷静になっていない様。 
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