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万華鏡

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第三十八話 夏の巫女その七

「一休さんに出ていたのとはまた違うの」
「ああ、そういえば一休さんの将軍様ってあれだよな」
 ここで言ったのは美優だった。
「あの人全然働いてないよな」
「そういえばそうよね」
「だよな、仕事もしないで子供といつも遊んでるよな」
「それもムキになってね」
 一休さんとだ、それこそ意地になって遊んでいたのだ。作品の世界の中で。
「凄かったわよね、考えれみれば」
「本当に将軍様の仕事をしないで子供とずっと意地になって遊んでてね」
「あれ大人げないよな」
「どっちが子供かわからない位に」
 何しろいつも仕掛けて惨敗していた、一休さんの世界の中での足利義満とはそうした御仁だった。しかもである。
「お公家さんの格好だったしな」
「完全にね」
 しかもこのこともあった。
「あれでお武家さんだったのかしら」
「しかも将軍様でだからな」
「変な人だったわね」
「実際あんな人じゃなかったと思うけれどな」
「流石にあれは物語の中だから」
 里香は湯舟の中で話す二人に同じ湯舟の中から話した。
「実際は違うから」
「違うのね」
「そう、現実の方も調べてみたけれど」
 そして小説と比較してわかったというのだ。
「三島由紀夫独特のものがあるわよ」
「そうだったのね」
「三島由紀夫も独自の作風があるのよ」 
 作家ならば誰もあるものだ、三島もそれを持っているというのだ。
「というかあの人ってね」
「その独自のものが強いのね」
「かなりね」
 そうだというのだ。
「太宰治と同じでね」
「ああ、太宰は私も読んでるけれど」
 彩夏が言ってきた。
「確かに独自の作風よね」
「ええ、そうでしょ」
「独特の太宰節っていうか」
「そういうのがあるわよね」
「それは三島もなのね」
「そうなの。太宰とはかなり違う作風にしても」
 それがあるというのだ。
「あるのよ、特にね」
「特に?」
「美の意識が強いのよ、三島由紀夫はね」
 里香は湯舟の中で話していく。
「本当に緻密に計算さてたね」
「美の意識があるのね」
「そこに醜いものも入れたり」
 美があれば醜もある、この両者は表裏一体のものなのだ。
「それが金閣寺にもあるのよ」
「そうなのね」
「私金閣寺も持ってるから」
 里香は四人にこうも話した。
「よかったら読んでみてね」
「ああ、読むで思い出したけれどさ」
 美優は里香のこの言葉からこのことを思い出して言った。
「皆読書感想文どうなった?」
「ああ、あれね」
「夏休みの宿題の一つの」
「そう、あれ終わった?皆」
 美優は四人を見回しながら問うた。
「夏休みの宿題自体がさ」
「ええ、終わったわ」
「私もね」
「私も」
 すぐに里香と景子、彩夏はこう美優に答えた。だが、だった。
 琴乃だけはバツの悪い顔になってこう美優に答えたのだった。
「私、実はその読書感想文だけが」
「まだなのかよ」
「そうなの、まだなのよ」
 身体を洗いながら答える。 
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