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ハイスクールD×D―魔法使いのキセキ―

作者:Nation
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旧校舎のディアボロス
  第13話

 
前書き
この前以上にギリギリになってしまった。
クライマックスまで行きます
今回はイッセー視点、朔夜視点、三人称の順番で書いています。

是非見ていってください。 

 
 俺―兵藤一誠―は今、教会地下に続く階段を下りている。
「朔夜たちは大丈夫だろうか・・・」
 上にある教会の聖堂では、相棒の朔夜と同じ眷属の木場が神父と戦っている。
 いや、朔夜たちだけじゃない。教会の裏では部長と朱乃さんが囮として戦っている。
「・・・大丈夫です。二人ともあんな神父に遅れを取るとは思えません」
 一緒にいる小猫ちゃんがそういってくる。
 そうだ。あのはぐれ悪魔を圧倒してたんだ。みんなが遅れをとるはずがねぇ!
 皆がここまで力を貸してくれたんだ。
 俺が今すべきことはアーシアを助け出す!
 そのためにも今は祭儀場とやらを目指すだけだ!
 階段を下ると薄暗い廊下が続いていた。
「・・・ここの奥です。アーシアさんの匂いがします」
 小猫ちゃんと共に進んでいく。
 すると一番奥に大きな扉があった。
「ここか」
「はい。それから複数の人の気配もします。気を付けてください」
 小猫ちゃんがそう警告して来た。
 ここにはアーシアだけじゃなくきっとレイナーレもいる。
「よし!行こう!」
 俺は覚悟を決めて扉を開けた。


「あら?ずいぶんと早かったじゃない」
 そこには多くの神父。。
 その奥には祭壇があり、その上にいるレイナーレ。
 そしてその祭壇にある十字架に磔にされているアーシアが居た。
「アーシアァァァ!!」
「・・・イッセーさん?」
 俺の呼びかけにアーシアはこっちを顔を向ける。
「助けに来たぞ!アーシア!」
「イッセーさん・・・」
 俺の言葉にアーシアは涙を流す。
「儀式を邪魔されるわけにはいかないわ。守りなさい」
 その言葉と共に神父が俺たちに向かってくる。
「悪魔め!滅してくれる!」
「邪魔はさせんぞ!」
「神器!!!プロモーション『戦車』!!」
 俺の神器は力を二倍にする力があるらしい。
 普段の俺が二倍になったところで大した役に立たないが、プロモーションした『戦車』の力なら役に立つ!!
「どけぇ!お前たちに構ってる暇はないんだよ!!」
 向かってくる神父を殴る。
 すげぇ!確かに全力で殴ったが人がすっ飛んで行ったぞ。
 別の神父が俺に向かって銃を撃つが光の弾丸は俺を貫くことが出来ず消えていく。
 これが『戦車』の特性の圧倒的な攻撃力と防御力か。
「・・・えい」
 本場の『戦車』である小猫ちゃんはその力を遺憾なく発揮し神父を飛ばしていく。
 だが飛ばせど飛ばせど神父は向かってきて徐々にしか近づくことが出来ない。
 こうしてる間にも儀式が進んで行く。急がないと!!
「小猫ちゃん!祭壇まで一気に突っ込もう!!」
「・・・わかりました」
 そういうと俺たちは祭壇に向かって一気に駆け出す。
 その途中に居た神父に俺はラリアット、小猫ちゃんはタックルをかまして突き進む。
 そしてどうにか祭壇を上る階段まで近づくことが出来た。
 しかし

「惜しかったわね。今儀式が終わるわ」

 レイナーレの言葉と同時にアーシアから光があふれる。
「あぁぁぁぁあああああ!!!!」
 アーシアが苦悶の叫びをあげる。
「アーシア!!」
 俺は急いで階段を上がる。
 神父が登ってこない所を見るに小猫ちゃんが相手をしてくれているようだ。
 アーシアから放たれる光は徐々に胸に集まっていく。
 そして集まった光はアーシアからレイナーレのもとに行く。
 その光にの中に見えるのはアーシアの神器である指輪だ。
 最上段についた時には、レイナーレのもとにその光があった。
「これよ。この力よ!この力があれば私は至高の堕天使になれる!私は愛を頂ける!!」
 レイナーレはその光を抱くように胸に入れた。
 途端に眩い光が放たれ祭儀場を包む。
 光が収まるとそこには、緑のオーラを放つ堕天使が居た。
「アハハハハ!私は至高の力を手に入れた!これで私を馬鹿にしたやつらを見返せることが出来る!!」
 横で堕天使が高笑いをしていたがどうでもいい。
 俺はアーシアのもとに駆け寄り、彼女を捕らえていた鎖を外す。
「・・・・・・イッセーさん・・・」
「アーシア、助けに来た。帰ろう」
「・・・・・・はい・・・」
 アーシアの声はとても弱弱しい。すぐにでも消えてしまいそうなほどに。
 まだ大丈夫なはずだろう?急いで治療をすれば。
「無駄よ」
 その考えはレイナーレの声で中断した。
「神器を抜かれたものは死ぬしかないわ。死ぬのよ。その子」
 レイナーレはアーシアの神器である指輪を見せつけるようにしながら言う。
「! だったら返せよ!その神器!!」
「返すわけないじゃない。この力を手に入れるためにいろいろ欺いたのだから。
 だから、証拠になるあなたたちも殺すわ。よかったじゃない。二人仲良く死ねて」
「・・・夕麻ちゃんの姿が憎いぜ」
「ふふふ、それなりに面白かったわよ。あなたとの付き合い」
「・・・初めての彼女だった」
「初々しくてからかい甲斐があったわ」
「・・・大切にしようと思ったんだ」
「困ったそぶりを見せると即座にフォローしてくれてたものね。でもあれわざとだったのよ」
「・・・必死にデートプランを考えたよ」
「ええ、王道的なデートだったわ。おかげですごくつまらなかった」
「・・・夕麻ちゃん」
「その名前ね。あなたを夕暮れに殺そうと思ったからその名前にしたのよ。素敵でしょ。イッセーくん」
 俺の怒りは限界を超え、怒声を張り上げる。
「レイナーレェェェ!!!!!」
「下級悪魔の分際で私の名前を呼ぶんじゃないわよ!!!」
 レイナーレが俺たちに槍を振り上げた。だがその槍は振り下ろされることはなかった。
 レイナーレに向かって氷が降り注ぐ。
 レイナーレはそれを後ろに跳ぶことで躱した。
 この氷はまさか!
「イッセー!!ここじゃあ不利だ!!」
「僕たちが道を開く!だから君は彼女を連れて上へ!」
「・・・早く逃げてください」
 祭壇から入口までの神父はおらずその両脇に行っていた。
 そしてその直線状に行かせまいと神父を抑える木場と小猫ちゃん。
 朔夜は銃口をこちらに向けてレイナーレを牽制していた。
 よかった。二人は無事だった。
「急げイッセー!!」
 朔夜の言葉に俺はアーシアをお姫様抱っこをして駆け出す。
 二人が作った道を進む。時折二人を抜けた神父が俺に向かってきたが朔夜の攻撃のおかげで問題なく進めた。
「先に行け。俺たちは一通り抑えた後に向かう」
 朔夜がすれ違いざまにそう言ってきた。
 その言葉に俺は頷くと扉を出る。
「グレイブ!」
 朔夜の呪文が聞こえた。後ろを振り返ると扉が岩で防がれていた。
 きっと、神父が来れないようにしてくれたんだ。
 それを確認するとすぐさま俺は廊下を走り抜けた。


 ◇◆◇


 階段を上がり聖堂につくとアーシアを長椅子に寝かせる。
「アーシア!もうすぐ自由になれるんだ!俺たちといつでも遊べるようになるんだ!」
 アーシアの手を握る。
 その手からぬくもりは無くなっていってる。顔だって真っ青だ。
「・・・私、少しの間でしたが・・・幸せでした・・・」
 アーシアは苦しみながらも微笑む。
「・・・もし、生まれ変わっても、また、友達になって、くれますか?」
「何言ってんだ、アーシア!俺たちはずっと友達だ!今だって!これからだって!!」
 アーシアの手を両手で強く握り、必死に言葉を続ける。
「朔夜たちだってそうさ!今度みんなで出かけようぜ!カラオケとかゲーセンとか!もっと楽しいことがたくさんあるんだ!」
 笑って話しかけていた。
 だけど涙が止まらなかった。
 きっと彼女の状況がわかってしまったからだ。
 死んでしまう。
 アーシアはもう死んでしまう。
 だからそれを否定するように笑いかけた。必死に。
「・・・きっと、この国で生まれて、イッセーさんたちと同じ学校へ行けたら・・・」
「行こうぜ!大丈夫!アーシアならみんなとうまくやれる!友達だってもっと増えるさ!俺のダチだって紹介する!だから!」
 その先は言えなかった。言ってしまったら認めてしまいそうで嫌だった。
「・・・私のために、泣いてくれて・・・」
 アーシアの手が俺の頬を撫でる。
「アーシア!!」

 ―――――ありがとう

 その言葉と共にアーシアの手は落ちた。
 もう目も閉じてしまっている。
 優しく微笑んだまま、逝ってしまった。
 もし、彼女にもっと早く友達ができていればこんなことにならなかった?
 もし、俺がもっと早くにアーシアに会っていたらこんなことにはならなかった?
 そんなもし、が頭を駆け巡る。
「どうして。どうしてだよ!なあ、神様!どうして、この子が死なないと行けないんだ!
 なんでこんなにやさしい子が死なないといけないんだ!
 分け隔てなく癒やしてくれるこの子が死なないといけないんだ!」
 俺は叫んだ。もう遅いとわかっていても叫ばずにはいられなかった。
「この子は何もしていない!ただ友達が欲しかっただけだ!なのになんでだよ!神様!!」
 天に向かって叫んでも何も帰ってこない。
「俺が悪魔だから、悪魔だった俺が友達になったのがいけないんですか!」
 悔しい。俺には力がない。
 アーシアを助けるだけの力がなかった。
 夕方、アーシアを攫われたのも、今、アーシアを助けれなかったのも俺に力がなかったから。
 だが、そんな後悔をしてもアーシアはもう微笑んでくれない。

「悪魔が教会で懺悔かしら?」

 後ろから声が聞こえた。振り返ると俺を嘲笑っている堕天使が居た。
「たちの悪い冗談ね。笑えもしないわ」
 そうぼやくと堕天使は腕を見せる。
「この傷、下で魔法使いのガキにやられたのよ」
 その腕には切り傷があった。言葉からすると朔夜が付けた傷のようだ。
 なら、朔夜は?木場や小猫ちゃんはどうなった?
「見なさい。素敵でしょう?どんな傷でも治せる力。神の加護を失った私たち堕天使には素晴らしい神器よ!」
 それは、アーシアの神器だ。優しいアーシアの力だ。
 お前が使っていいような力じゃないんだ!!
「それを返せぇぇぇ!!」
「『Dragon Booster!!』」
 左腕の籠手が光を放ち、宝玉には紋章が現れた。
 同時に力が湧きあがった。その力にゆだねて全力で殴りかかった。
 だが堕天使に躱されてしまう。
「無駄よ。『戦車』になったようだけど、当たらなければその力を発揮できない」
「うぉぉぉおお!!!」
「『Boost!!』」
 更に殴りかかるが躱される。
「それに、あなたごときが『戦車』になって。そして神器の力で倍にしたところでたかが知れてるわ」
 堕天使は二本の光の槍を両手にだし、投げつける。
 そしてそれは俺の両太ももに刺さった。
 体中に激痛が走る。その槍を抜こうとつかむが手のひらが焦げるように熱くなる。
「アハハ、悪魔が光の槍をつかむなんて愚の骨頂。焼かれるだけよ」
 意識が飛びそうになった。
「イッセー!」
 そこに相棒の呼びかけが聞こえた。


 ◇◆◇


 俺―望月朔夜―はイッセーを逃がした後、堕天使を相手にしている。
「あら、誰かと思えば、イッセーくんのお友達じゃない」
「天野、いや、堕天使レイナーレ。お前が俺の相方を殺してくれたそうだな」
「人間ごときがその名を呼ぶな。まぁ、そうね。殺してあげたわ。正直無意味だったけど」
 つまらないように言う。
「あの悪魔に宿ってた神器が危険だって聞いて、彼女の振りまでして殺したけど、ただ力を二倍にするだけのものだなんて。ほんと無駄骨よ」
「黙れ」
 俺はそういうと銃口を向け火球を放つ。
「へぇ」
 レイナーレは火球を槍を投げることで相殺する。
「あなたも神器もち?いや、今のは魔法ね。気づかなかったわ。あなたが魔法使いだなんて」
「俺も気が付かなかった。お前が堕天使だとはな」
 会話をしながら攻撃を続けるが全て対応されてしまった。
「ッチ」
 俺は舌打ちをして、威力のある魔法を放つ準備をするが
「させると思ってるの?」
 レイナーレは槍を投げてくる。
 俺は中断してその槍を防ぐ。
「あの悪魔に逃げられるのは厄介だから先に始末させてもらうわ」
 そういうと翼を広げ入口に向かう。そして槍を放ち、俺が塞いでいた岩を壊す。
「行かせるか!エアスラスト!!」
 俺はレイナーレに向けて魔法を放つ。
 中途半端な状態だったせいで、片腕を少し刻む程度で防がれてそのまま抜けていった。
 追いかけよとするが今度は神父が道を塞ぎ行くことが出来ない。
 更に廊下の天井を砕いたのか、通路が岩で塞がれた。
「朔夜君、君は堕天使を追いかけてくれ。ここは僕たちが」
「・・・急いでください」
 二人が入り口付近の神父をどかしてくれた。
「わかった」
 俺はそう頷くと急いで廊下を進む。
 あの堕天使が天井を崩してくれたせいで、岩が邪魔だ。
 それに一気に岩を吹き飛ばそうものならまた天井から岩が降ってくる。
 慎重に岩を退かせ階段を上ると、
「イッセー!」
 両足が光の槍に貫かれているイッセーが居た。


 ◇◆◇


「あなた、もう来たのね。下で待っていれば寿命も少しは伸びたのに」
 レイナーレは朔夜に向けていったが、本人は聞いていない。
 イッセーのもとに駆け寄った朔夜が次に見たのは、長椅子に寝かされているアーシアだ。
「イッセー・・・アーシアは・・・」
「ああ、死んじまった・・・」
 朔夜の問いにイッセーは涙ながらにこたえる。
 その返事を聞いた朔夜はレイナーレを殺意を込めて睨む。
「・・・お前、腕の怪我はどうした?」
「あの怪我ならこの『聖母の微笑み(トワイライト・ヒーリング)』で治したわ。本当に素晴らしい力よ。
 堕天使を治療できる堕天使として私の地位は約束されたようなモノ。これで偉大なるアザゼルさまやシェムハザさまのお力になれる!」
「知るか」
 レイナーレの言葉を朔夜は一蹴する。
「ああ、そんなの知らねぇ。そんなのアーシアには関係なったはずだ!」
「『Boost!!』」
「堕天使とか、悪魔とか・・・そんなの関係無く静かに暮らせたはずだ」
「できないわよ。神器を宿した時点でそんなこと不可能。人間って異質なものを爪弾きにするじゃない。それに力が強力ならそれを利用するものもいるわ」
「・・・俺たちが友達として守った!」
「『Boost!!』」
「守れてないじゃない!守ることが出来なかったからあの子は死んだのよ!そっちのガキも同じ。二度も友達を殺された力のない存在よ!」
「ああ、知ってる」
「だから、憎いんだ。お前の事も、俺の事も!!」
「『Boost!!』」
 イッセーはその言葉と同時に太ももに刺さった槍を砕く。
「!! 嘘よ。ただの下級悪魔が私の槍を砕くだなんて!」
 レイナーレはその光景に後ろに下がる。
「神様だろうが、魔王様だろうが誰でもいい」
「俺は悪魔だから、魔王様に頼むんだろうな」
 朔夜は懐から一発の弾丸を取り出し、イッセーは足に力を込めて立ち上がる。
「他に何もいらない」
「何も必要ないから」

 ――――あの堕天使に一発だけ入れさせてください!!

「『Explosion!!』」
 イッセーの籠手にある宝玉が一層光を放ちイッセーを包む。
 朔夜も、胸にある水晶から光を放ち右手の銃に移る。
「嘘よ!!この力、中級、いえ、上級の力が!!」
 二人のその力に圧倒されたレイナーレはすぐさま翼を広げ割れている窓へと逃げる。しかし
「逃がすわけないだろ・・・!!」
 バンッ!!
 銃声が鳴り響く。
 その音と共にレイナーレの片翼は消し飛んだ。
 突如片翼を無くしたレイナーレはバランスを崩し墜ちていく。その先には
「吹っ飛べ!クソ天使!!」
 左腕を引き、こぶしを握っているイッセーが居た。
「うぉぉぉぉおぉおおお!!!!!」
 全てを込めた一撃がレイナーレの顔を捕らえる。
「あああああああぁぁぁぁぁ!!!」
 断末魔と共にレイナーレは教会の壁を破り外まで飛んで行った。
「「ざまーみろ」」
 二人は一撃入れることが出来、笑みを浮かべたがすぐに悲しい表情になった。
 二人の視線の先には、長椅子に横たわるアーシアの姿があった。
 
 

 
後書き
イッセーから朔夜に視点が切り替わった時に時間が少し戻っているのでややこしくなったかもしれません。

次回は一章(一巻)エピローグになり、その後に前話の後書きに言っていた設定と秘話を話す回を投稿します。 
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