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万華鏡

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第三十八話 夏の巫女その六

「飲みにくいわよね」
「そう思ってなの、お酒も冷やしてるから」
 このことも心配りでそうしているというのだ。
「今は頑張ろうね」
「ええ、じゃあね」
「今から」
 こう話してだった、今は雑用を頑張る五人だった、あれこれ動き回っている間にその雑用も終わりそしてだった。
 五人は汗だくになった巫女の服を脱いで景子の家の風呂に入った、風呂は木の風呂でそこには古風なものがあった。
 だがシャワーはある、そのシャワーで汗を流してだった。
 琴乃はタオルに石鹸を付けて身体を荒いながらだ、湯舟の中にいる景子に問うた。
「ねえ、こうしたお風呂ってね」
「木のお風呂?」
「うん、高いって聞いたけれど」
「あっ、それは檜だったらよ」
 その場合はだとだ、髪を上にあげて束ねて湯舟の中にいる景子が答えた。見れば五人共髪の毛は長いので今髪の毛を洗っている里香以外はそうしている。、
「高くなるのよ」
「檜風呂ね」
「あれはまた別だから」
「檜は高いのね」
「もう別格、高いのよ」
「じゃあこの木は」
「杉よ」
 この木だというのだ。
「杉の木よ」
「あっ、そうなの」
「そう、杉の木だから」
 だからだというのだ。
「あまり高くなかったのよ」
「杉の木程はなの」
「そう、高くないから」
 このことを保障する景子だった。
「安心してね」
「ううん、檜って高いのね」
「いい木だから。うちの本殿にも使われてるけれど」
「あの本殿って檜だったの」
「八条神社もよ」
 あの神社もだというのだ、景子とも縁のある。
「だから火は怖いのよ」
「火は木ならどの木もでしょ」
「特に檜はなの」
「檜がそうなの」
「そう、檜は火の木っていう位でね」
 言葉はそのままだ、そうなるというのだ。
「火の手が回りやすいのよ」
「そんなになの」
「だから檜だと余計に怖いのよ、火事は」
 景子は湯舟の中でこのことは真剣な面持ちで話した。
「だから火は注意してるの、普通の家以上にね」
「そういえばだけれど」
 景子と同じく湯舟の中にいる里香が言って来た、見れば結構広い浴室だ。
「宗教が違うけれど金閣寺もよ」
「あっ、あそこね」
「金閣寺も火事で焼けたわよね」
「だからあそこ今は二代目なのよ」
「三島由紀夫の小説にもなってたわね」
「あれ実際にあったことを基にして書いてるのよね」
 景子はこの小説を読んでいない、それで里香に問うたのだ。
「そうよね」
「そうよ、小説だから脚色はあるけれど」
「実際にあの人が焼いたのね」
「主人公のモデルになった人がね」
 三島由紀夫の脚色はあった、だが実際にあった話であることは事実だ。
「火をつけたのよ」
「終戦直後の頃になのね」
「ええ、残念なことにね」
 金閣寺はその頃に焼けたというのだ。 
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