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万華鏡

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第三十八話 夏の巫女その三

 一旦神社を出てコンビニで替えの下着を買っておいた、それで夏祭りが終わった時に備えてであった。
 夏祭りの裏方の仕事をはじめた、するとすぐにだった。
 景子の兄が神社の入口からこう言ってきた。
「ちょっと悪いけれどな」
「ええ、どうしたの?」
「ああ、たこ焼き家さんにな」
 その店に行ってだというのだ、出店にだ。
「ガスボンベを付ける手伝いな」
「それに行けっていうのね」
「今そっち手が足りないらしくてな」
 それでだというのだ。
「行ってくれるか?」
「わかったわ、じゃあね」
 景子も兄の言葉に頷く、そしてだった。
 実際にそのたこ焼き屋のところに行って手伝った、それからだった。
 神社の中を右に左に動きせわしなく動き回る、雑用がこれでもかとある。
 その雑用の中でだ、景子は四人に言った。
「そうそう、危ないのはね」
「痴漢?」
「それとも変質者?」
「そうした人達にも気をつけないといけないけれど」
 ゴミ袋を手に持って一つの場所に集めながらだ、景子は話す。
「蚊に気をつけてね」
「ああ、蚊ね」
「それなのね」
「そう、蚊が多いから」
 すぐ傍の灯りを見ながら言う景子だった。
「虫除けのスプレー付けてるわよね」
「ああ、もうな」
 美優が笑って景子に応える、彼女も他のメンバーもゴミ袋を持ってそのうえで景子と一緒に働いている。
「予想してたからな」
「夏祭りって蚊が多いのよ」
「そうだよな」
「夏で夜で灯りがあってね」
 虫が多い条件が揃っている、これだけで。
「しかもね」
「人も多いからな」
「人が多いと汗が出て呼吸もあるから」
 これがだった。
「蚊が寄るから」
「蚊って二酸化炭素に寄るんだよな」
「そうなの、それでうちも神社のお池に亀を飼ってるのよ」
「ボウフラ食べてもらうんだな」
「餌もあげてるけれどね」
 ボウフラも食べてもらっているというのだ。
「ちゃんとそうしてもらってるのよ」
「蚊対策か」
「蚊帳もその為にあるから」
 家にまだ蚊帳があるのもそれが理由だというのだ。
「ちゃんとしてるのよ」
「成程なあ、蚊だよな」
「これも怖いから、間違っても今神社の林の中に入ったら」
 周りに木々が茂っている、その中に入ればだというのだ。
「もうあっという間に蚊にあちこち刺されて大変なことになるから」
「沖縄も蚊が多いけれどな」
 美優は沖縄から話した、この県は暑いので蚊も多いのだ。
「ここもなんだな」
「神社だとどうしてもね」
「蚊が多いんだな」
「お池があって木もあってね」
 神社での必須のものだ、そうしたものがあってだというのだ。
「特に竹があるとね」
「ああ、切った後に水が溜まってか」
「そこにボウフラが湧いてね」
 それによってだというのだ。
「蚊が多くなるのよ」
「神社も大変なんだな」
「木がお池が近くにあって涼しいけれどね」
 だが蚊が多いのが、というのだ。
「特にお祭りだとね」
「楽しい場所なのにかよ」
「それはあるから注意してね」
 それで蚊除けのスプレーを服や手にかけるのだった。景子はそうしてから他の四人にも手渡したのだった。 
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