私立アインクラッド学園
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第二部 文化祭
第11話 幽霊屋敷
前書き
最初は番外編10.5話の予定だったので、文章もちょっと遊び心散らしてたのですが……。
あれこれ考えてる内に、段々物語が壮大になってしまいまして(笑)
結局本編になってしまいました☆ハァー
「たらーららーららーららん らんらんららんらんらーららん」
「……どうしたアスナ、なんか怖いぞ」
「失礼ね、キリト君! これはね、まりあが考えてくれた、わたしの歌のサビ部分なのよ!」
アスナは頬を膨らませながら言う。
はてさてアスナはいつから「まりあ」とか呼ぶようになったのか。女の子って、なんていうか色々早い。
「そ、そうなのか……歌詞はまだないのか?」
「うーん……わたしらしい歌詞を考えようとしてくれてるみたいなんだけど、難しいみたいなの」
アスナは困ったような表情になった。
「これでいいんじゃないか? 『はいそれ校則いっはん~、サボりは許さっな~いわ~』」
「……斬られたいの? キリト君」
「ひっ!? そ、その時は寮の部屋に逃げ込むよ……」
「地の果てまで追いかけてあげるわよ」
「怖っ!?」
アスナは真顔で「嘘に決まってるでしょ」とボソボソ呟いた。
「あ、あのねキリト君……話、変わるんだけどね」
アスナは俺の制服の裾を弱々しく掴んだ。今の間に彼女の中でなにがあったのだろう、と少し不安になる。
「……依頼、一緒に来てほしいんだけど」
──そ、そんなことか。
「そんなこととはなによ! ひとりじゃその、怖い依頼なのよ……」
──怖い?
"あの"閃光アスナが、恐怖心?
「き、強敵が相手とか、なんか難しい感じのなのか?」
「うん……わたしにとってはね」
アスナにとって強敵とか……俺が一緒に行ってなんとかなるのだろうか。
「……ど、どういう依頼なんだ?」
「…………………おばけ」
「え?」
「おばけ調査」
「おばけ、て……プッ」
「わ、笑わないでよー」
意外にも、可愛らしい強敵だった。
「だって、あの閃光様がおばけ苦手とか……」
「……キリト君のバカ。そんなに笑わなくたっていいじゃない」
アスナはプイッとそっぽを向いた。
「ごめんごめん。で、そのおばけ調査って? もうちょっと詳しく頼むよ」
「う、うん」
アスナ緊張しているのか、少し間を置いてから話し始めた。
「森の奥にある洋館……あ、某ゲームは関係ないからね。某リーグに出場したり、某マスターを目指したりしないからね」
「わかってるよ! 早く先言ってくれるかな!?」
なんか一気に疲れた気分。
「……だったらいいんだけど。その周辺で、1人の少女を見た……って人がいるのよ」
「ふむ……それに何の問題があるんだ?」
「なんと、その女の子のね……向こう側が、す、透けて見える、って……」
──!?
「それで、学園に依頼が来たの。その調査を頼む、ってね。わたしはただのアストラル系モンスターだと思うんだけど!」
「で、ひとりじゃ怖いから俺についてきてほしいと」
アスナは少し不本意だという表情を浮かべ、無言でこくりと頷いた。
「仕方ないなあ……よし、今から行こう」
「い、いい今!? 今からじゃもう暗いわよ、何時だと思ってるの!」
「夕方5時。さあ行こう」
「い、嫌よ! 行くなら、もうちょっと明るい時間に……」
「幽霊調査するのに、暗くなきゃ意味ないだろ。ほら行くぞ。俺、今じゃないとついて行かないからな」
「今行って、わたしがおばけに憑かれて逝かされちゃったらどうするのよ!」
「その時はその時だな。あと、アスナがそう簡単に死ぬわけない」
「ちょっと!?」
*
「へえ、ここが幽霊屋敷かあ……」
「もう! そんな言い方しないでよー、キリト君」
「悪い悪い」
閃光様は怯えに怯えきっておられるご様子で、さっきから俺の背中に隠れている。
俺は屋敷の扉を勢いよく開けた。
「たのもー」
「ちょっとキリト君! ジム戦に挑む某アニメの主人公みたいな発言しないでよ!」
「悪い悪い」
同じ言葉を繰り返す。
一番手前にある部屋の扉に手を掛け、開ける。
アスナが「あっ……」と声を上げる。なにを見たわけでもないようだが、俺の腕を強く掴んだ。
「ん……? なんだ、この部屋……」
部屋はとても広いようで、大きな迷路のようになっていた。狭い道の両側に、扉式のタンスが向かい合って並んでいる。
「変な部屋だね……。怖いよキリト君、今日は帰ろうよ」
「ちょっと行ってみよう」
「あ、キリト君!」
俺は床を強く蹴ると、道に足を踏み込む。なんだかタンスに睨まれているようで不快だったので、走って進むことにした。
その時、タンスの扉が──
「うわ──っ!?」
**
和人は明日奈を置いて行ってしまった。
「うう、キリト君のバカあ……置いてかないでよー」
和人を追いかけたいけれど、恐怖で足が動かない。
その時。
「うわ──っ!?」
和人の声だ。
「キリト君!」
和人になにかあったのかもしれない。それは明日奈とって、なによりの恐怖。幽霊のことなど忘れ、明日奈は和人の声がした方向へ向かった。
暫く走っていると、細いシルエットが見えた。
見間違えるはずもない、和人だ。
「──キリト君! どうしたの!?」
「逃げようアスナ!」
「ええ!?」
和人は目にも留まらぬ速さで走り寄って──いや、なにかから逃げてくると、明日奈の手を掴み、再び疾走する。
──と、和人が急ブレーキを掛けた。明日奈は大きく滑り、床に尻餅をついた。
「ど、どうしていきなり止まるのよ」
「……アスナ……あれ」
「え?」
和人が指差す方向を見ると、白く、小さな影が見えた。
人の──幼い少女の形をした影だった。
後書き
アスナ「ちなみにキリト君、さっき君の悲鳴が聞こえたんだけど、なにがあったの?」
キリト「道を歩いてたらさ……」
アスナ「う、うん」
キリト「ひとりでに、次々開き出したんだよ……タンスの扉が」
アスナ「えっと、どういうこと?」
キリト「だから……俺が道を進んでいくだろ?ちょうど通過した後に、両側のタンスの扉がパカパカと開き出してさ……めちゃくちゃ走ったから問題なかったけど、もし一瞬でも止まってたらどうなってたことやら……」
アスナ「うう……やっぱり夜に行くべきじゃなかったのよー!(泣)」
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