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ゲルググSEED DESTINY

作者:BK201
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第三十三話 新たな道筋

帰艦してからアスランは憔悴していた。この手でキラを討った。それは酷く疲れを感じさせていた。報告書を提出して以来、彼は食事とMSの整備以外では自室でずっと塞ぎこんでいた。

「やっぱり心配か?」

そのアスランの部屋の扉の前で悩むような素振りで佇むシンを見つけたハイネが声を掛ける。シンは慌てたように取り乱して敬礼する。

「いいよ、そんなに気負うな。楽にしておきな」

「あ、はい」

敬礼を止め、普段通りの様子を見せるシン。

「ま、気持ちはわからんでもないがね……」

ハイネは何処か疲れた様子で溜息を吐く。

「そう、ですね……親友でしたっけ、あのフリーダムのパイロットって?でも、あの人は―――アスランは正しい事をしたと俺は思います」

「確かにそうだな―――だけどよ、正しい事だからって何でも出来るか、シンは?」

「え?」

言われて初めて気が付く。確かに、正しいからと言って何でもやるとは限らない。
例えば、不良に絡まれている人を助けようとする行為は正しいが、実際にそれを行える人物はどれ程いるだろうか?それと同様に、正しいからって友人をこの手にかけることが出来るのか?もし、レイやルナマリア、アスラン達がそんな立場になったとき、自分は本当に討てるというのか?

「おっと、あんま深く考えすぎんなよ。お前さん等の悪い癖だぜ」

そう言って、肩を叩いてハイネは笑いかける。その言葉にシンも落ち着きを取り戻して苦笑で返す。

「考えすぎるなって、ハイネの方から言ってきた事だろ?」

「ああ、悪い悪い」

そうだ、きっと考えすぎて悪い方へと向いていっているのだ。アスランだって自分で決めた事だと言っていた。話せば少しは楽になるかもしれない。

「少し、話してみようと思います。その、ありがとうございました!」

「気にすんな。俺は何もしてないさ」

そう言って手を振りながらハイネはその場から去っていく。シンは改めて服装を整えて緊張を解し、扉をノックした。

「アスラン、入ってもいいですか?」

少しして扉が開く。寝ていたらしく着ている服は軍服ではなくシャツだった。

「シンか…何か用か?」

「用って訳じゃないんですけど、その…皆も心配してるし、少しぐらい顔を見せてもいいんじゃないですか?」

そう言った直後、アスランは少し驚いたような顔をして、弱弱しくも笑みを浮かべた。

「らしくないじゃないか、シン。お前も俺の事が心配だったのか?」

「なッ!いや、心配だって言うのは皆の事で―――でも、俺も……少しだけ、その、心配してましたよ!ええ、だってアンタはミネルバのエースなんですよ。そのエースが何塞ぎこんでるんですか」

先程よりもより一層驚いた顔をするアスラン。シンが自分の心配をしていたということや、エースだって言った事に驚いているのだ。

「―――ああ、悪かった。そうだな、何時までも塞ぎ込んでる訳には行かないよな。シン、ちょっと付き合え」

「え、何処に?」

「シミュレーションだ。鈍った腕を鍛えなおさないとな。だからお前くらいが丁度いい」

「なッ!?ブランクありで俺に勝てるって言うのかよ!!」

(キラを討つ事が本当に正しい道だったのかはわからない。それでもこうやって俺達は平和の為に前に進んでいくべきなんだ)

アスランはそう思い、服を着替えてからシンと一緒にシミュレーターに向かっていった。







「コイツがレクイエムの要ね……」

「ええ、中継ステーションと呼ばれ、これによって狙いを自由に定める事ができるとか」

ガーティ・ルーに乗り込んでいたネオは艦長のイアン・リーと共に製作途中の中継ステーションを眺めていた。

「しかし、これだけ大きいとなると攻撃を仕掛けるのも、守るのも難しくないかい?宇宙じゃ俺達は不利なんだぜ?」

元々ザフトの本陣は宇宙だ。その為にそれに対して攻撃を仕掛けれるレクイエムは連合軍にとって大いに役立つだろう。しかし、逆に言えばそれだけ宇宙にはザフト軍が屯しているということだ。確かに迂回させればこれほどの大きさであっても発見は困難だろう。しかし、一度目の不意打ちはともかく、二度目以降はこの巨大な施設を守る為に多大な戦力を割かねばならない。
更に言えば、中継ステーションの数は存外に多い。それら総てに戦力を分ければ、当然手薄になる所が一つや二つは出てくるだろう。

「何処でも狙えるって言うのは利点だが、存在が露見した時点で相手に動ける戦力があるなら不味いんじゃないかね?」

「どうやら、そういうわけでもないみたいですよ?これらの中継ステーションは狙いを正確にわからせないようにする為の目的もあるようです」

「如何いうことだ?」

「つまり、予め中継ステーションを様々な場所に用意しておく事によって複数の狙いを付け、相手に何処を狙わせるか悟らせないようにする事が重要らしいですね」

中継ステーションを大量に用意する事によって複数のルートによる攻撃が可能となり、様々な角度から好きな拠点を攻撃する事が出来る。レクイエムの最大の特徴はまさにそれだ。レクイエムを止める為には拠点である月面基地か、第一ステーションを押さえなければならない。

「なるほど―――なら露見した後は第一ステーションさえ守っておけば十分というわけか……」

よく考えていると、そう思って関心していると緊急通信が入る。通信内容を確認した後、その情報を読みネオはどう動くかをイアンに尋ねる。

「敵部隊の偵察……ナスカ級一隻にローラシア級が二隻か……このままだと施設はばれるか?」

「おそらくですが、そうでしょうね。中継ステーションは大きいですし、存在が露見すればすぐにでも大部隊が襲ってくると思いますよ」

「わかった。MS隊を出す―――一機も逃すなよ」







偵察の為に交代で三機ずつ出ていたMS隊は通信で報告を続ける。

『―――異常なし。それにしても面倒くさいな、偵察任務なんて―――こんな辺鄙なところに敵なんか来るわけないだろ?』

ゲイツRに乗った一人のザフト兵士がそう呟いていると、隊長機と思われるゲルググF型のパイロットから通信が入る。

「未確認の情報だが連合のMSを確認したらしい。これがジャンク屋だったりしたなら杞憂だが、もし何らかの連合の施設だとしたら不味いだろ?俺達はその為にいるんだからな」

『ヘイヘイ、わかってますよ。隊長は相変わらず固いっすね~』

もう一人のガナーザクウォーリアーに乗ったパイロットがそうやって場を茶化すが彼等は気にした様子は無い。

『しかし通信の感度が悪いな。もしかしたらこれは何かあるって事なんだろうかね?』

ゲイツRに乗っていたパイロットがそう呟いた瞬間、熱源反応を捉える。

「これはッ!?各機、注意しろ!どうやら当たりだ。敵が来るぞ!」

正面から突如として現れるMS隊。その数は十機以上―――こちらを逃がす気は無いと見える。

「艦に報告しろ!すぐに出せるMSを出すようにな!」

機体の種類はウィンダムと未確認の大型MA。大型MAに対してガナーザクウォーリアーが砲撃を放つが、陽電子リフレクターが展開され、あっさりと防がれる。

『馬鹿なッ!?』

ウィンダムがその隙を突いて、複数機でミサイルを放ちながら牽制し、ビームライフルで貫いた。

『クソッ!よくも!!』

ゲイツRがビームライフルで一機のウィンダムを撃ち抜くが敵の数が多く、囲い込まれてまともに回避する事も出来ずに討たれていった。

「クッ、母艦に連絡を―――!?」

そう呟き、後ろに下がろうとしたとき、背後で大きな爆発が起こった事が確認される。その数は三つ―――連続してそんな爆発が起こった理由を推測する。それが示されるのは―――

「俺達の母艦が沈んだって言うのか!?」

一体どうやって?そんな事を考える暇も無く、最後のゲルググF型の一機もユークリッドの砲撃に貫かれた。







「意外にあっさり落とせたね~」

ネオは自身の愛機となったドラグーン装備のライゴウガンダムを駆り、三隻の沈んだザフト艦を眺めていた。ごく単純な戦闘だった。ガーティ・ルーのミラージュコロイドを利用して接近、そして先行部隊としてNダガーN部隊を出撃させる。艦の射程距離に入った時点で不意を突いた射撃を行い、MSが出てくる前に艦橋をNダガーNが破壊する。僅かに残ったMS部隊はライゴウガンダムのエグザスに似たドラグーンによって倒されていった。

「さて、中継ステーションは動かせるのかい?」

『はい、一応は。エネルギー偏向装甲の取り付けが完了してないだけですし』

イアンが返した返答を聞き、ネオはすぐさま命令を出す。

「よし、ならさっさと移動するぞ。ザフトだって馬鹿じゃないからな。連絡の来なくなった部隊を探しにこっちに向かってくるはずだ」

『了解しました』

提案はあっさりと受け入れられ(といっても当たり前のことなので当然だが)、レクイエムの中継ステーションは移動を開始する。

「二人とも、お疲れさん。今回はお前さん等の本来の乗機とは違うが大丈夫だったか?」

『コーディネーターを殲滅する為ならどんな機体であっても問題は無い』

『当たり前だろ?俺達を誰だと思ってるんだ』

失った二人の部下、ステラとスティングの代わりに新たに配属された二人のパイロット―――エミリオ・ブロデリック中尉とダナ・スニップ中尉が反応を返す。専用機と共に配属された二人だったが、今回は調整中だったことと隠密性を重視してNダガーNでの出撃となっていた。

「よし、中継ステーションの移動完了後、俺達もここから離れるぞ。それまでは残存戦力が残っていないかを確認しておいてくれ」

『了解した』

『はいはい了解しましたよっと』

ファントムペインは勝利を得る為に牙を砥ぎ、決戦兵器を整える。連合がザフトを壊滅させる為に動き出すその時まで。







「僕の美しき機体にそんな無粋なものを取り付けようとするなんて、いくら製作者と言えども断じて認めないぞ!?」

「ふざけてる暇は無いんだぞ!頭部が無いと戦闘力は下がるに決まってるだろう!?代わりの頭部を付ける事の何が悪いって言うんだ!」

「何を言う!傷ついた機体で雄雄しく戦う僕―――これぞ騎士の美学であり、美しい僕に相応しいではないか」

「もういい!切れた、切れたぞ俺は!!お前の金色に塗装する美学も修理しない美学もわからん!お前のギャンにはザクの頭でも乗っけてやる!!」

「マーレさん、あれは―――」

「無視しろ、シン。ただの馬鹿共のやり取りだ」

アスランとのシュミレーションによる訓練の後、シンはマーレやクラウと共にラー・カイラムに乗艦していた。理由としてはクラウは元々ラー・カイラム所属であり、マーレはクラウの部下だからだ。そしてシンはステラに会う為にここにきていた。
そんな中クラウはルドルフと妙なやり取りをしているがマーレはバッサリとそれを切り捨てて勝手に進む。連合の捕虜と会う許可は既にクラウから貰っているので問題は無い。そう言ってシンを連れて格納庫でのやり取りは見なかった事にする。

「取りあえずクラウから聞いた事を先に言っておくが、彼女はあくまでも連合の人間だ。エクステンデットの被害者と言っても拘束せざる得ない。とはいえ手錠のみではあるがな」

名目は捕虜に対する尋問であると言う事を忘れるなということらしい。シンとしては納得いかないが、そういう名目がないと面会出来ないらしく仕方が無いことだと一応は理解していた。

「ステラッ!」

「―――シン?」

感動の再会―――という訳ではないのだろうが、二人だけの世界に入っているのは確実だろう。マーレとしてもそれに入るような無粋な真似をするのもどうかと思い、部屋から退出しておく。勿論、入り口に待機はしているが。

「ステラ、大丈夫―――俺が守って見せるから……」

「シン―――ありがとう」

抱きついてお互いを離さないとばかりに抱きしめる二人。シンもステラもお互いの好意が恋愛感情なのか否かはわかっていない。もしかしたらそういったものとは違う感情なのかもしれない。
しかし、それでもお互いを大切な存在だと思っている事だけは確かだった。







「脳波のプログラム?感応性の情報データ……しかも空間認識の把握能力も高まってる……だから即興であれ程の連携を見せたというのか?」

ルドルフとの言い争いもようやく終わり(結局、せめて取り付ける頭部はゴールデンカラーにするというルドルフ有利の折衷案で落ち着いた)、自室で以前のフリーダムとの戦闘データを解析していた。
インパルスのビームブーメランのタイミングも、エクスカリバーを放ち、後ろに下がった瞬間を狙ったヒート・ランスも、それを回避した先にセイバーが待ち構えていた事も総てが高度な連携によるものだ。まるで盤面から駒を動かしたかのような効率的な戦い方だった。

「そういえば、デストロイの時もそうだったな」

インパルスが投げたエクスカリバー。一見すればセイバーが合わせただけに見えるが、実際はそうではない。インパルスが計算して投げた方向、セイバーが前もって移動した位置、そしてデストロイの予測軌道―――彼らはまるでそれを読んで動いたかのような動きだ。

「やはり、これはNTなのか?」

かつて見たNT研究所のデータにかなり類似している。勿論、個人で調べる程度のデータでしかない為、確定できるわけではない。だが―――

「利用しない手はないだろうね」

個人的にはNTだから導き手となれなどと言う心算は無い。とはいえ使える手を使わない事などしない。新型機のデータを取り出す。

「ああ、最高に面白いじゃないか……これだから戦争って言うのは興味深い」

戦争ほど革新が起こりやすいものはない。兵器の進化は科学技術の進化となり、人類の進化へと導かれた。だからこそ、クラウ・ハーケンは戦争を否定しない。

「新たなる可能性を見せてもらうよ―――」
 
 

 
後書き
とりあえずスティングが戦死して、キラ退場(仮)となったので連合側に新しいキャラが登場。そろそろオーブの動向とかも書きたいけど話の内容が思い浮かばない。オーブって戦場にでもならないと話を持って様が無いな。また戦場に引っ張り出すか?
そしてクラウはますます主人公から遠ざかってます。まあ、そんな事は今更過ぎるんですが(笑)
いい加減タグに主人公≠クラウ、主人公=マーレorゲルググとでもするべきですかね? 
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