ロザリオとバンパイア〜Another story〜
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第21話 トラブル発生 天邪鬼
妖? side
今自分の目の前の美味しそうな女がいるというのに。
なぜか…そこまで届かない。
ってか…!激痛が走る…!!!
「く… 首がっ!!…なっなんだ?? 体が動かねぇ!!だッ誰だぁぁ!」
首根っこを万力のような力で握られ身動きが取れなくなった男は、姿の見えない後ろの相手に向かい叫んだ。
side out
ジャック side
右手に入れる力を少しずつ上げていく。
徐々~~に力を入れてる……?
拷問のようにだ。
『街に若干の…妖気を感じた時から 嫌な予感がしてたんだよな……』
今まさに襲おうとしていた妖?を見て、そうつぶやく。
『まあ 人間が妖しをいじめてる(滅多に無いけど…) だったら もっと厄介だったからまだいいか?』
確か 人間界において 人間に危害を加えるのは御法度だったよな?
どんな理由があっても…あの学園では……
とりあえず、ジャックは握り締める力を更~~に上げていったのだった。
side out
首根っこをつかんでいる…
もう結構な力だ。
力を少しずつ入れる事で大人しくなるかな?と思ったがやっぱり暴れていた。
『おいおい… こんな可愛らしいお嬢さんに手を出すなんてそれでも男かよ? ああ 男なら仕方ないか… ……でも同じ手を出すにしてもナンパとかにしときな。許可無く手を触れるのはご法度だ。』
ジャックは、ぐぐぐ…っと右腕に力を入れつつ振りかぶり!!
“ポイッ”
首を掴みあげながら無造作に放り投げた。
“ガシャ!ガッシャアアアアン!!”
「ぐああああっ」
男は路地裏に置いてあった大量の材木に頭から突っ込んでいった。
まるで槍投げのようだ…… 怖
『はぁ…。マナーも知らん奴が多いみたいだな?やっぱし… いや、妖ってそんなもんなのか…?』
ジャックは、やれやれと言わんばかりにため息を出しつぶやいた…
今後の共存、上手くいくのか?っと若干不安が走ってもいる。
御子神が行っている事の難しさを改めて知った。
そして、その後ジャックは女性のほうを見た。
視線が合った女性は一瞬 “ビクッ” っと体を震わせた。
そんな所を見たジャックは、
『あ… ああ、大丈夫大丈夫。何もしないから それよりお嬢さん怪我は無かったかい?』
そう言って 笑いかけた。
(さっきの会話を聞くとこの子はかなり妖しに対してトラウマがあるだろうから 近づかないほうが良いな……。)
自分が近づけば 更にショックを起こし やばい状態になるかも知れないと判断したジャックは。
震えている彼女に近づかず落ち着かせようとしたのだった。
「えっ…?は、はいっ!あ ありがとう…」
まだ ショックから回復した訳ではないが 話せるようになった為 、一先ず 助けてくれた人にお礼を言っていた。
でも… まだ終わってなかったようだ。
『……はぁ やれやれ 又ため息が出ちゃったよ。お嬢さん?動けるなら早めにここから離れたほうが良いアイツが起きて来そうだ。』
ジャックはそう言って 先ほど男を投げ飛ばしたほうに向きなおした。
まあ、気配って言うか、殺気というか…そんなのがバリバリ感じてくる。
だが、その気配、妖気から実力の程度もたかが知れてる、と判断していた。
??? side
今日は 人生で2度目の最悪の日だ……。
襲われた女性は襲われる瞬間までそう思っていた。
だが、訳が分からぬうちに 襲ってきた男はもう1人の男に吹き飛ばされてのびていた。
そして 目の前の男は 私を確認すると、笑顔で「大丈夫?」って言ってくれてるし…
何かいろんなことが同時に起きて更に混乱するけど……
助けてくれたこの人?(人か分からないけど)は悪い人じゃない気がする…と言うか助けてくれたし。
お礼は言わないとね。
お礼を言った後… 男の人が 向こうを向いて頭をかいてさっきの人が起きてくるって言った。
多分…動けるようになったと思う。 この人が心配してくれてるし。
それにここにいたら 絶対邪魔になる。
……急いで離れないと!
side out
パニックにはなっていたが、頭の回転はいつも以上だったようだ。
「え ええ 大丈夫です。動けます…」
彼女はジャックに向かってそう答えた。
『そうか 良かった。ならここから直ぐ離れたほうがいい。ああいう男は間違いなくぶっ飛ばされから、ムキになって突っかかってくるの見えてるから ここにいたら 巻き込まれちゃうよ?』
そう言って この場からの退避を促す。
妖と人間では強度的には人間の方が遥かに虚弱だ。
巻き込まれるだけで、重症にもなりかねないのだ。
「は はい! 分かりました! あの……気をつけて」
彼女もそれは重々承知のようだった。
そう言って 懸命に脚を動かし、この裏路地から逃げ出した。
その後…
放り投げた方から殺気が色濃く出てきて……。
「てっめー!!何しやがる!!人の楽しみ+食事を邪魔しやがって!!死ぬ覚悟はあるんだろうなコラァ!!」
復活した男が怒りを露にしながら 向かってきた。
『おい……』
冷たく鋭い眼で軽くその男を睨みつけた。
「……っ!!」
男は、その威圧感に押されたのか、一瞬男はたじろいでいた。
だが、直ぐにメンチ切ると、
「大体お前も 妖だろうが!人間は俺等の敵だろ?何でその人間の味方をすんだよ!この裏切りモンが!!」
そう吼えまくる。
(いやいや、まず仲間になってないし、今日初めてあっただろうがよ……。)
男の言い分に頭を掻き、若干失笑しながらジャックは答えた。
『……人と妖しは共存できるんだ。それぞれがルールを守ってな。その共存の中で 絆が生まれたら素晴らしい事だろ?お前が言うように完全に敵って言い切ったら どっちかが滅ぶまで争うってのか?ふざけるなってことだ。それに俺は人間を敵だとなんか思っちゃいねえ。』
(元人間だしな……)
男に向かって怒鳴った。
だが、男は…まあ、焼け石に水か、言うだけでとまりゃ…人間同士で争い…戦争だって起きないだろうし…
「…ッは!共存? クソ食らえだよ! 人間は俺のオモチャで食料だ!何いってんだよ馬鹿が!そのオモチャを奪おうってんなら……」
言い終えると……
“メキメキメキッ…………”
骨格が…
っというより、体の全て。
輪郭から変わっていく。
そして…
男は、人間の姿から本来の妖の姿。即ち本性を現した。
「てめえから殺ってやんよー!!」
その姿は大きさにして2,3mは有る赤色の鬼だった。
『はぁ……いきなりこんなとこで正体なんざ見せんなよな。騒ぎになったらどうするんだよ…』
図体ばかりがでかくなった男を見上げながらそう呟く。
(路地裏ってのが この際良かったな…)
『んで? …正体は何だと思ったら天邪鬼か?』
その姿を見てすぐにその正体を理解した。
「ぎゃははは、そうだ!覚悟しろよ?この俺は本性を見せたときの腕力は 数倍に跳ね上がる!さっきのようにはいかねえぞ! 覚悟しやがれ!ぶっ殺してやらぁ!!」
男は、体格差から一気に強気になった様だ。
さっき、自分が摑み、持ち上げられた事などすっかり忘れたようだ。
そして…天邪鬼は拳を振り上げ……。
「っはっはは!!!潰れちまえぇぇぇぇ!!!」
一気に拳を振り下ろす!!
それは、目の前の男をつぶすはずだ。
頭の中でイメージさえ、できていたのだが…
“ガシィッッ!! ピタッ………”
イメージどおりいかなかった。
男の拳が全く動かなくなったのだ。
拳どころか、腕もピクリとも動かない。
「はあっ? な 何……??何だ!? ま まったく 動かねぇ!な 何しやがったお前ェ!」
…ジャックは、片手で受け止めたままため息をつく。
『…?何って受け止めて掴んでるだけだけど?』
ジャックは、拳を掴んだまま 『それがどうした?』っと言わんばかりに答えた。
まぁ、勿論男は、それだけで、納得など…できるわけがない。
「………ばっ 馬鹿言えッ !こッ この辺の妖しで俺の本気をんな片手で受け止める奴なんざいるわけが……」
過信からか……
『…いるじゃないか。今、まさに目の前に……。』
ジャックは青ざめていくその天邪鬼の表情を見て察した。
(なるほどこの辺の妖しのガキ大将ってとこだったんだな?コイツ… この辺りにはこんな感じの奴がいっぱい要るって訳か…こんなのが続くかも知れないのか?)
それを考えただけでも頭が痛い。
世間知らず、無鉄砲に町の不良の様につっかかってくるのかと思えば。
『……こういう手合いは口で忠告しても無駄だよな? ≪体≫でしっかりと分からせんとな……。』
“ググググ………。”
そう言って ジャックは天邪鬼の腕を思いっきり捻り持ち上げた。
その巨体がふわりと浮く。
そして、完全に上に持ち上げられていた。
「あっ!が!!いだだだだだ!」
腕がねじ切られるかのような力で 持ち上げられた天邪鬼は ただただ痛みに叫んだ。
「わっ わかった! 俺が悪かったー やめてくれーー!!」
さかさまになり…頭に血が上る……。
『ん……?さっきの大言は…強気な発言は一体如何したんだよ。まったく… だがな…』
“グググググッ”
ジャックは再び槍投げの要領で腕に力を入れ……。
振りかぶる!
『俺は、お前の行動を見て、ただで赦す気はサラサラ無い。飛んで来いよ。』
“ポイッ!”
また無造作に投げる。
今度は。廃材置き場じゃなく、鉄骨……廃ビルであろう建物に向かって。
“ドッガラッ ガッシャアアアアアアン!!”
「うぎゃあああああああああああああぁぁぁ!!!!!」
天邪鬼は。今度は鉄筋コンクリートに頭から突っ込み完全にノックダウンした。
泡吹いて、白目向いてる……。
当然だろう、まさに槍の様に頭から突き刺さったんだから……。
『……喧嘩売ってくるんならまず相手の力量を正確に測れるようにするんだな。長生きの秘訣だ。』
まあ、聞こえてないだろうが。
ジャックはとりあえず、動かなくなった、男に今後の忠告を施していた。
(これで、まあ… 迂闊な事をしないでくれたらいいんだがな…)
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