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フィガロの結婚

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50部分:第四幕その十四


第四幕その十四

「今は為されるべきことが」
「わかっておる」
 伯爵は溜息を止めて彼女に応えた。
「奥方」
 夫人に向かい合う。そうして片膝をつきそのうえで頭を垂れたのだった。
「申し訳ないことをした。どうか許してくれ」
「はい」
 夫人は夫の言葉を微笑んで受け入れた。
「それでは」
「申し訳ない。それだけで許してくれるのか」
「出来心とやまっ気で過ごしたこの一日のことです」
 夫人はこう周りにも話した。
「それを満足と喜びのうちに終わらせることができるのは」
「それは?」
「愛だけです」
 こうスザンナに述べた。そのうえで夫の手を取って言ってきた。
「あなたもお立ちになって下さい」
「いいのか?」
「あなたは許されています」
 夫に対しても同じ愛を向けていた。
「ですから」
「それでは皆さん」
 マルチェリーナも周りに声をかける。
「どうかここは」
「ここは?」
「まずは花火を」
 バルバリーナが言ってきた。
「それを派手にあげて」
「そして楽しい音楽を」
 次に言ったのはスザンナだった。
「それで皆楽しく浮かれ騒いで」
「じゃあお父さん」
「うん」
 バルトロは我が子の言葉に微笑んで頷いた。
「行くとするか」
「そうですな。それでは私も」
 バジーリオはきざっぽさを装って述べてきた。
「一度相応しい女性を探す為に」
「バルバリーナの近々の結婚祝いの為に」
 アントーニオも出て来た。
「わしも行くか」
「御馳走は出るので?」
 クルツィオの関心はここにあった。
「女房と楽しく二人で」
「ねえバルバリーナ」
 ケルビーノは自分からバルバリーナの手を持っていた。
「僕達も次は」
「さて、それでは二人で行こうか」
「ええ、フィガロ」
 スザンナは自分から夫の腕に自分の腕を絡めてきた。
「行きましょう。いいわね」
「うん、それじゃあね」
「では行くか」
 伯爵もあらためて妻の手を取る。
「私達もな」
「はい。本当の幸せの為に」
「そうだな。やはり二人いないと駄目だな」
 こう言い合い皆で祝いの場に向かうのだった。皆幸せの為にその場に向かう。こうして賑やかな一日は終わり幸せに満ちているこれからに皆で足を軽やかに進めだした。


フィガロの結婚   完


               2009・3・30
 
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