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転生者が歩む新たな人生

作者:冬夏春秋
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第32話 桜通りの吸血鬼-その2-

 
前書き
タイトル変更するかも知れません 

 
 さて、桜通りでエヴァに襲われ吸血されたネギだが、2日ほど入院し、学校に戻って来た。
 輸血により体内の血を増やし、最高位の治療魔法を形振り構わず大盤振る舞いし、症状を強制的に安定させたことにより、2日間という極短期で学校に戻せたようだ。
 ネギが休んだ理由は「疲れからくる過労で倒れた」と言うことにされたので、「子供だからしょうがない」と「体調管理は社会人として最低限の基本だ」などと先生方には言われているが、如何せん、新学期初日からというタイミングが悪かった。誰も「先生」としては庇いようがない。
 学園長からの報告のあった職員会議のいつもの白けた雰囲気はとてもやるせなかった



 ネギが戻って来るまでに起こったことを色々話そう。

 まずエヴァだが、吸血行為の後学園長室にネギを転移させ、学園長が一通りネギの治療の指示を出した後、呼び出しを受けたらしい。

 エヴァは「やりすぎじゃ!」と学園長に言われたらしいが、ネギとの戦いにおいて事前に学園長と結んでおいた契約書を見せ、愚痴以上はなにも追求させなかったし、「登校地獄の呪い」が吸血により正常化したと報告している。ついでに言うと「魔力が戻らん」とか、麻帆良大結界について気付いていない振りもして来たらしい。

 ちなみに契約書の内容は抜粋するとこんな感じだ。

契約書

近衛 近衛門(以下甲という) と エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル(以下乙という) とは、甲 が依頼する 乙 と ネギ・スプリングフィールド(以下丙という) とにおいて以下のように契約する。

一つ、乙は戦闘及び吸血行為において、丙が死亡或いは丙の肉体において治療不可能な怪我を負わせることを禁ずる。

一つ、乙は如何なる理由があろうとも魔法に関わらない一般人をこの戦闘に巻き込むことを禁ずる。

一つ、甲は乙のこの戦闘のための魔力の回復のため、3-Aの魔法関係者に対する乙の吸血行為を容認する。なお、この吸血行為はあくまでも魔力の回復のためであり、この吸血行為によって使徒や従者を作ることを禁ず。

一つ、甲は乙がこの契約に反しない限り、乙に対し最大限の助力を確約し、乙の「登校地獄の呪い」が解呪・変更された場合、それに対するあらゆる外的要因を排除することを確約する。

 以上、学園長とエヴァがこの契約を破った場合、哀れ「オコジョ刑」が降りかかることになっている。



 当然のことながら、ネギとエヴァが戦ったことについて、魔法先生らから突き上げがあるだろうが、その辺は学園長が難儀なだけであって、オレやエヴァには関係ない。

 実際、エヴァを危険視する魔法先生は学園長室に怒鳴り込んだらしい。
  
 ま、特に気にしなかったが。



 ネギが入院したとホームルームで報告した放課後、神楽坂から追求を受けた。

 詳しい事情を聞きたかったようだが、「魔法関係者になるつもりがあるのか?」と聞いたら、「ない」と言うことだったので、「なら関わるな」と拒否して、一切事情を説明しなかった。

 どうもネギが入院したのは、あの時自分が追っかけなかったからだと思い込んでるようだ。見当違いも甚だしいが、責任感が強いのか、そのせいで少し情緒不安定だ。

 ぷんすかギャーギャー怒っていたが、覚悟もない人間に話すわけにもいかず、全て無視してその場を離れた。





  ☆  ★  ☆  





 次の日、ネカネさんからのエアメールが神楽坂と木乃香の部屋に届いた。
 オレ宛のもあったので、木乃香が届けてくれた。

 まぁ、ネギはつい最近まで2人の部屋に居候していたからしょうがないが、何故オレ宛のエアメールまで同じ部屋に送ったんだろうか?(これは暁がネカネやメルディアナの魔法学校に住んでいる場所を連絡しなかったため)
 しかも差出人の所に堂々と「魔法」って書いてあるし。
 秘匿意識ゼロだな………。



 内容を見ると、時候の挨拶と元気でやっているか云々と普通な感じだったが、ただ一つ、ネギが昔逃がした下着ドロをするオコジョ「アルベール・カモミール」が脱獄したので、万が一こっちに来たら捕らえて強制送還して欲しいとのことだった。

 そういや、そんなキャラいたなー。

 まあ、現実問題として、エヴァのような元賞金首ではなく、現在進行形で脱獄犯なんだ、見つけたら学園長に差し出してやろう。学園長がどう対応するのか楽しみだ。
 一応、「そんなことは知らんかった」ととぼけられないようネカネさんからの手紙を学園長に見せとこう。





 学園長に手紙を見せたら「あー」とか「うー」とかうめいて、珍しく胡散臭いポーカーフェイスが崩れた。

 これはあれか?

 ネギの従者確保のために学園長がカモの脱獄に力添えしたのか?

 よくよく考えてみれば、カモが運良く脱獄できたとしても、まず情報規制されてるネギのいる場所を知ることすら難しいだろうし、魔法世界の牢獄から抜け出してゲートでしか行き来できない地球の、しかも日本に来る手段なんて、カモ個人にあるのか?

 そう考えると脱獄はともかく、麻帆良まで来ること自体、作為があるな。

 まぁ、ネギの従者作りの手段の確保だな。間違いないだろう。

 ネギは従者ができて万々歳。
 カモは「英雄」の息子の使い魔という立場と従者契約代金が入って万々歳。
 学園長はネギに従者ができ、ネギの戦力が強化されて万々歳。きっと「ネギはワシが育てた」とか将来言いたいんだろうな。

 まぁ、あれだ。

 巻き込まれる従者以外はみんな幸せで結構なことだ。

 まぁ、いち魔術師として、騙すような契約は邪魔するがな。
 その覚悟があって魔法に関わろうとするなら基本放置だな。





  ☆  ★  ☆  





 ネギが退院し学校に出勤して来た。

 いつも通り、学生と同じ時間の出勤だが。

 違うことが一つだけ。

 肩にオコジョを乗せてきました!





 ふざけんな。





 学校にペットを連れて来るなんて小学生でもせんぞ。

 ちなみに以前リニスが学校で活躍した時は、もちろん学校に連れて来るなんてことはしてませんよ。

 たまたま念話が届く位置にリニスがいただけだ。


 閑話休題。


 当たり前だが、ネギは職員室ですぐに捕まり説教だ。

 ごく少数になったネギ擁護派の魔法先生でも、さすがにこれはフォローできないようだ。



 一通り説教された後、カモを連れてネギは学園長室へ。

 既にもう涙目だ。

 だが、オレにはわかってしまう。

 あの目は、「魔法使いがなんで使い魔を連れていてはいけないんだ」とそう言っている目だ。

 まったく自分の立場がわかっていない。

 自分が「魔法使い」ではなく、「先生」を求められていることを。





 学園長室でネギが説教を受けている間ももちろん時間は流れ、3-Aのホームルームを新田先生の代わりに担当する。

 ネギが退院して学校に来ていることを告げたら大騒ぎだったが、「小学生でもしないと思うが、ネギ教育実習生は学校にペットを連れて来た」と話したら、しーんと静かになり、一部のあきれ果てた生徒を除き、その後直ぐに皆大笑いだ。

 3-Aの生徒にあからさまに笑われるとか、言っちゃ悪いがかなり屈辱的だよなー。しょうがないけど。

 その後は連絡事項とか話して教室から出た。



「遠坂せんせー。ちょっと待って」

 教室から出たら、神楽坂に声をかけられた。  

 立ち話も何なので、空いてた教室に入り、話しを聞く。
 魔法関連の話しが絡みそうなら認識阻害の結界が必要になるので準備をしておく。

 聞いた話しは、今朝ネギの部屋に朝食を持って行った時、ネギに渡したネカネさんからのエアメールがゴミ箱に捨てられていた。不審に思ってそれを読んだら、カモのことが書かれており、ネギが連れて来たのがそうじゃないかと心配しているようだ。

 ま、下着ドロが同じ寮内にいると思えば心配になるか。

 ただ、人の手紙を勝手に見るのはあまり感心しないなぁ。

 その辺のマナー? も注意しつつ、カモの件は学園長に伝えてあるから、それなりの手段を取ってくれるだろうと話しておいた。

「学園長ねぇ………」

 がっくし、という感じだ。

 二月(ふたつき)前にネギを押しつけられたこともあったらなぁ。そりゃぁ、信頼感も薄れるか。

「まあ、変な対応を取るならこっちでもできるだけ対応するから」

「………。期待しないでおくわ」

 がっくり肩を落として別れる神楽坂を見送る。



 さすがに神楽坂が哀れなので、学園長室に事の顛末を聞くに行く。

 既にネギは退出しており、今は授業でもしているんだろうか?

 学園長に事情を聞くと予想通りカモがいる。調子に乗って挨拶をしてくるが、もちろん無視だ。

 さすがに職員室であれだけの騒ぎになったので、学園長が学園長室にカモを置いて行かせたらしい。

 で、長ったらしい言い訳に近い話をまとめると「ネギとカモは既に使い魔契約を結んでいる」「学園長の責任下でその契約を認め、使い魔として主人を助けることによって罪を償うこととする」ということだ。

 わけわかんねー。

 学園長がそんな法を超越してカモに対する処罰を変えれるのか?

 疑問に思って聞いてみたら、「関東魔法協会の理事」として動き、認可したらしい。

 その上で、オレにそう聞かれるのを予想していたらしく、関東魔法協会の理事としての認可書類まで既に作成済みであり、コピーを渡された。

 ドヤ顔がウザイ。

 というか、ネギの従者契約という目先に囚われて自分がどんな地雷を踏んだというか、踏み抜いたというか、わかっていない。

 使い魔の失態は主人であるネギの失態であり、それを認可した関東魔法協会理事近衛近衛門の失態でもあり、最悪の場合、関東魔法協会の失態に繋がるのがわからないんだろうか?

 ワカラナインダロウナー。

 とりあえず、「神楽坂が気にしてましたから」と言って、暗に告げることを言っておき、学園長室を出る。

 去り際にネギとエヴァとの戦闘について釘を刺される。
 なんと、ネギはエヴァの吸血行為がトラウマとなり精神的に追い込まれてしまったので、治療行為として記憶を改竄したらしい。

 茶々丸に捕まってピンチになったが、なんとかエヴァを追い払った。

 そういう風らしい。

 茶番だ、と笑えたが、治療方向としてはおかしくないのか?

 なので、その辺は誤魔化すのに協力することにする。と言ってもネギとは接点を持たないようにしているので、そのまま避け続けるだけなんだが。

 特に何もなく授業が終わる。

 千雨から念話で聞いたんだが、やはり3-Aでは、学校にペットを連れて来たおかしな先生(大分オブラートに包まれた表現だな)としてネギは大笑いされたらしい。

 放課後、大学棟を訪問し、3-Aの明石の父親である魔法先生の明石教授と話しをする。

 話しはもちろんカモのことだ。

 当たり前だが、明石(生徒)も女子寮に住んでいるので、ネギの使い魔としてカモも女子寮の管理人室に住むことになる。

 話しを聞いてもらい、ネカネさんからの手紙と関東魔法協会理事の認可書類のコピーを見てもらう。

 わなわなと震え怒りが抑えきれないかのようだ。

 当たり前か。

 「娘を一般人として過ごさせたい、だから魔法については関わらせないで欲しい」と3-Aの副担任に決まった時に明石教授からは聞いている。

 無理だ。

 と思ったのは内緒だが、実際の所、魔法世界の滅びた最古の国の血を引く姫や関西呪術協会の長の娘、烏族や魔族のハーフ、魔族、未来人、忍ばない忍び、幽霊、魔法使いでもあるシスター見習い、マッドサイエンティスト、魔法と科学のハイブリッドのガイノイド、挙げ句の果てに元600万$の賞金首の真祖の吸血鬼、という実にクラスの3分の1強が魔法や裏の関係者というのが3-Aだ。

 しかも、教育実習生として秘匿意識の薄い魔法使い見習いが副担任見習いで、女子寮の管理人室に住んでいるのが、現状だ。

 そう言えば、副担任も中部魔術協会の魔術師だったな。

 まぁ、そんなわけで、明石教授は学園長の振る舞いにピリピリしている。大学部の教授なので、中等部の話し合いに加われないのも、原因の一つだろう。

 なので、実はメールなり直に会ったりして明石教授には今までも話して良いことは色々話している。
 副担任が生徒の親に話せる範囲で話すのはおかしくないし、先達として色々と先生についてもアドバイスももらったりしている。

 で、今回の件だが、事の発端のネカネさんの手紙の当該部分と関東魔法協会理事の認可書類のコピーを写メに撮り、一部のネギ擁護派以外の魔法先生に事態の推移も加えて送った。

 なお、差出人(=責任者)は明石教授がなった。

 理由は、なにかあった時に責任者として直談判するためらしい。

 はてさてどうなることやら。
  
 

 
後書き
カモ登場。

この作品で原作の怪しいことは「だいたい学園長のせい」となってます。 
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